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熊野森人

クリエイティブディレクター

石井ゆかり

ライター

企業のブランディングや広告製作などを手がけるエレダイ2で代表を務める熊野森人さんが今回インタビューするのは、ご自身のWebサイト「筋トレ」やツイッター、ミリオンセラーとなった書籍「12星座シリーズ」、数々の雑誌やWebメディアでの占いコーナーなどをはじめとした文筆活動で知られるライターの石井ゆかりさん。かねてから石井さんのファンだったという熊野さんが、独自の視点と語り口で多くの熱狂的なファンを抱える石井さんに、星占いのことからコミュニケーションの話まで、さまざまな質問を投げかけました。
※このインタビューは、2016年10月20日に収録されました。

3. コミュニケーションで得られるものはありますか?

石井ゆかり 

「得る」「失う」という感覚よりも、もう少し、いわば「ストリーム」みたいなものとしてコミュニケーションをとらえているところがあります。

Q.占いというのは、他者とのコミュニケーションの上に成り立つものですよね。そして、他者とのコミュニケーションというのは、新しい視点を得られることもあれば、自分の魂がすり減ってしまうようなこともあったり、得られるものと失われるものというのがそれぞれあるような気がします。そういう観点で考えた時に、石井さんにとって占いというのはどんなコミュニケーションですか?

石井:どうなんでしょうね…。昔は、対面の占いも少ししていたので、「疲れませんか?」「相手から何かをもらってしまうことはないですか?」とよく聞かれました。でも、私としては、そういう質問にはあまりピンと来ないんです。私は、まあ、外に出て人と話す機会は少ないのですが、日頃のコミュニケーションにしても、「得る」「失う」という感覚はないかもしれません。「得る」「失う」というのは、自分という個体が容器のようにまずあって、そこに何かが入ったり出たりするイメージですよね。私はそういうイン・アウトの感覚よりも、もう少し、いわば「ストリーム」みたいなものとしてコミュニケーションをとらえているところがあります。ちゃんとした大人というのは、自分の身体というものがあって、そこから適切な距離感をおいて、外側に「ペルソナ」みたいなものをちゃんとつくって、それをインタフェースとして他者と接していると思うのですが、自分にはそういう「ペルソナ」的な、最初の城壁のような社会的インターフェースが、どうもないんですよね。それで、人と接するとむき出しになりすぎてしまう。なので、対人用のインタフェースをつくる代わりに、なるべく物理的に「人と会わない」ことをバッファにしているようなんです。大人としては全然ダメですね、めちゃくちゃですね(笑)。

石井ゆかり「星ダイアリー2017」(2016/幻冬舎)

Q.(笑)。壁がないということは、浮遊霊のように人の中にも入っていける感じなんですか?

石井:そんなことはできないです。すごいチキンなので。ガラスの心臓なので(笑)。それはでも、みんなそうなんですよね、きっと。内側にある「自分」はとても傷つきやすくて、みんなそこに変になにかを入れたくないから、インターフェースをつくって守っていると思うんです。こちらに壁がないからといって、相手も壁を取り払ってくれるわけではないです、むしろ、気持ち悪いから壁をガツンと強化したりして(笑)。多くの人たちは、恋人や親友などと一緒にいる時はその壁を開いたり調節している気がしますが、私にはそれができないんです。だから、友達がほとんどいないし、つくれない。20代の頃は、なんでみんなみたいに普通のことができないんだろうとグルグル考えていたのですが、それは自分が人と良い距離感が取れないからだとある時に気づきました。だから、たとえばもし、仮に、熊野さんをはじめみなさんに綺麗な卵の殻のようなインターフェースがあるとしたら、私の方はホビロンみたいな凄くグロテスクなものになっているはずです(笑)。ホビロンというのは、ベトナムなどで食べられている、孵化直前のアヒルの卵をゆでたものなんです。殻ごとゆでて、卵の殻をむいて食べるんですが、中には卵じゃなくて、もう鳥寸前のモノが入っていて、食べるのはちょっと、勇気が要るんです(笑)。それくらいむき出しなイメージです。出しちゃいけないものが、出てしまっているわけです(笑)。

石井ゆかり『後ろ歩きにすすむ旅』(2016年/イースト・プレス) 石井ゆかり『選んだ理由。』(2016年/ミシマ社)

Q.ホビロンですか(笑)。例えば、こうして対面でお話をするのと、文章を書くというコミュニケーションでは、だいぶ勝手は違うのですか?

石井:そうかもしれないですね。文章を書く時は他者の圧がないからゆっくり考えられます。あ、別にいま圧がツライといっているわけではないですよ(笑)。でも、人と対面して喋っているよりは、コントロールできます。後で修正もできるし(笑)。むき出しだと何が辛いかというと、なんというか、距離感が辛いんです。たとえば、こういう取材を機会に友だちになったり、場合によっては恋愛関係に発展したりという話をよく聞きますが、私は友達になんてなったことないぞと、毎回寂しくなるわけですよ(笑)。

Q.あの、もし良かったら、友達になりましょう(笑)。でも、他者との境界がない感覚というのは、言い換えると、石井さんは関係の「はざま」にいらっしゃるということなのかなと感じました。境界線のちょうど真上というか、左足A領域、右足B領域みたいな。石井さんは、そうした「はざま」に常に立っているからこそ、白黒がないフラットな世界が見えているのかなと。<続く>

インフォメーション

まるごと一冊石井ゆかりさんを特集した「Figaro」の占いMOOK本が12月9日に発売。書き下ろしの占い特集と、半期ごとに出していた「袋とじ」が収録予定。
熊野さんが、「快適な食時間をデザインして、毎日しあわせを感じられるようにすること。」をテーマにした新会社「ゆっくりおいしいねむたいな」を設立。

もっと知りたい人は…

  • 熊野森人 

    熊野森人

    クリエイティブディレクター

    1978年生まれ。大阪府出身。IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)特別研究課程修了。株式会社eredie2代表取締役、クリエイティブディレクター。株式会社ゆっくりおいしいねむたいな代表取締役、京都精華大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師、東京芸術学舍講師。企業の商品やサービスの売り方を考えて広告をつくったり、企業そのものをブランディングしたり、行政の企画を練ったり、自社で世の中をちょっとザワザワさせるものをつくることが1つめの仕事。学生に「考える方法」と「行動する方法」を教えることが2つめの仕事。家で食器を洗ったり、トイレやお風呂を掃除したりすることが3つめの仕事です。

  • 石井ゆかり 

    石井ゆかり

    ライター

    1974年生まれ。星占いの記事やエッセイなどを執筆、独特の文体で人気を集める。2010年刊行『12 星座シリーズ』(WAVE 出版)は120万部を超えるベストセラーに。2014年には続編『3年の星占い』を刊行、33万部のヒットとなる(2015年2月現在)。著書は、他に『禅語』『親鸞』『青い鳥の本』シリーズ(パイ・インターナショナル)、『愛する人に。』『愛する力』『「美人」の条件』(幻冬舎コミックス)、『子どもの自分に会う魔法』(白泉社)、「ひかりの暦」(小学館)等多数。