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川村真司

クリエイティブ・ディレクター

上田文人

ゲームデザイナー

今回カンバセーションズに登場するインタビュアーは、昨年クリエイティブ・ラボ「PARTY」を立ち上げたクリエイティブ・ディレクター、川村真司さん。SOUR『日々の音色』や、androp『Bell』など、これまでの概念を覆す斬新なミュージックビデオをはじめとする数々の作品で、世界中から注目を集めている川村さんが今回インタビューするのは、『ICO』『ワンダと巨像』などの作品を手がけ、現在はゲームファン待望の新作『人喰いの大鷲トリコ』を制作中のクリエイティブ・ディレクター、上田文人さん。インタラクティブ・デザインの元祖とも言えるゲーム界のトップランナーである上田さんに、川村さんが鋭く迫ります。

5. ゲームの制作環境についてはどうですか?

上田文人 

音楽や映画、映像というのは、作り方がライブで一発勝負なイメージがあるんですが、自分としてはデスクトップな環境で気楽にやり直せる状態で作りたいというのがあるんです。

Q.ゲームというのは、映画制作以外では数少ない、莫大な時間や人手、予算をかけて作っていくエンターテインメントですよね。そんなレアな制作環境に対する憧れはあるんですが、僕は基本的に飽きっぽいタイプなので、なかなか自分では難しいかなと思うところもあります。上田さんの作品も時間をかけて作られていますよね。

上田:かけたくてかけているわけではないんですけどね。僕もスゴくせっかちなんですよ。ゲーム1本で見ると長いスパンで作っていますが、ひとつのゲームの中には、細かい動きやインタラクションなどさまざまな要素があるので、そのひとつひとつを早く作って早く見たいという思いでやっています。やはりゲームというのは、クオリティを求めていくと、まだまだ必然的に時間がかかる制作環境なんですよね。

Q.映像の場合は、いまは誰でも簡単に作れるような環境になっているので、思いついたものをどんどん形にできるんですね。それには良い部分と悪い部分が両方あって、手近になったが故に完成度が低い作品が増えていたりもする。そういう環境のなかで、上田さんが作っているようなコンテンツを見ると、ピクセルひとつひとつに魂がこもっているように感じるし、大変そうだけどうらやましくもあるんです。

上田:そう言って頂けるのは光栄ですが、僕自身妥協せざるを得ない時もあるし、「これを出したらきっと完成度低いって思われるんじゃないか」とビクビクしながらリリースすることがほとんどですよ。また、逆の見方をすると、ゲーム業界のデザイナーというのは、ひとつのアイデアだけでしばらくやっていけるところがあるんです。例えば、僕は『ICO』と『ワンダと巨像』合わせて7年間かけて作りましたが、その間に2つのアイデアしか出していないとも言える。それで本当にいいんだろうかと思う部分もあります。それこそビデオクリップなんかは短いスパンで次々にアイデアを出していて、それは素晴らしいことだと思います。

『ワンダと巨像』 © 2001-2011 Sony Computer Entertainment Inc.

Q.スタッフとのコミュニケーションにしても、僕がミュージックビデオを作るのとはまた規模が違うと思いますが、そのなかでどのように意思疎通をしているのですか?

上田:アニメーションや3Dモデルの部分など言葉で説明しづらいところは、一度CGで作って見せたりしています。『ワンダと巨像』でプレイヤーが巨像から落下していく時のニュアンスとかも、自分でアニメーションを作って説明していました。なかなかイメージ通りにするのは難しいですけど、一応熱意だけは伝わるみたいです(笑)。

『人喰いの大鷲トリコ』©Sony Computer Entertainment Inc.

Q.同じですね! 僕も事前にテスト撮影を繰り返して、その技法がどこまでいけるかというのはよく検証していて、そうしたプロトタイピングのプロセスは大切にしています。ちなみに上田さんは、ゲーム以外に表現してみたいメディアというのはあるんですか?

上田:あまりそういうのはないんです。僕は「一筆入魂」みたいなことが苦手なタイプなので、とにかくトライアンドエラーをしながら、選択していくというやり方なんですね。音楽や映画、映像というのは、作り方がライブで一発勝負なイメージがあるんですが、自分としてはデスクトップな環境で気楽にやり直せる状態で作りたいというのがあるんです。

Q.これも同感です。一発撮りをする場合でも、その前のテスト撮影を何十テイクも撮りますから(笑)。じゃあ、もしそういうライブの部分が払拭されれば、やってみたいという思いもあるんですか?

上田:そうですね。何か良い仕事があればですけど。

Q.ホントですか? ぜひ何か一緒にやってみたいです! 今度ムチャぶりします!(笑)<インタビュー終わり>

インフォメーション

川村真司さんが企画・制作を手掛けたNHKの番組「TECHNE:映像の教室」の上映会とトークが、9月22日にTokyo Art Book Fair内のプログラムとして開催予定。また、同番組の第3シリーズも現在制作中。
上田文人さんは、現在PS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を鋭意制作中。

もっと知りたい人は…

  • 川村真司 

    川村真司

    クリエイティブ・ディレクター

    1979年東京生まれ、サンフランシスコ育ち。博報堂、BBH Japan、180 Amsterdam、BBH New York、Wieden & Kennedy New Yorkを経て、現在東京とニューヨークを拠点とするクリエイティブ・ラボPARTYを設立し、クリエイティブディレクターとして在籍。ToyotaやGoogleといったブランドのグローバルキャンペーンを手がけつつ、プロダクト・デザインからミュージックビデオのディレクションまで活動は多岐に渡る。主な受賞歴に、カンヌ国際広告祭、文化庁メディア芸術祭、アヌシー国際アニメーションフェスティバル、NY ADC、One Showなどがある。

  • 上田文人 

    上田文人

    ゲームデザイナー

    1970年兵庫県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、コンピュータグラフィックのスキルを独学で学び、1997年にソニー・コンピュータエンタテインメントに入社。PS2専用ソフト『ICO』 『ワンダと巨像』のディレクター、ゲームデザイナー、アートディレクターとして活躍。絵画的な表現とエンタテインメント性を両立させた独特の世界観で国内外で高い評価を受けている。現在はクリエイティブ・ディレクターとしてPS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を制作中。