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川村真司

クリエイティブ・ディレクター

上田文人

ゲームデザイナー

今回カンバセーションズに登場するインタビュアーは、昨年クリエイティブ・ラボ「PARTY」を立ち上げたクリエイティブ・ディレクター、川村真司さん。SOUR『日々の音色』や、androp『Bell』など、これまでの概念を覆す斬新なミュージックビデオをはじめとする数々の作品で、世界中から注目を集めている川村さんが今回インタビューするのは、『ICO』『ワンダと巨像』などの作品を手がけ、現在はゲームファン待望の新作『人喰いの大鷲トリコ』を制作中のクリエイティブ・ディレクター、上田文人さん。インタラクティブ・デザインの元祖とも言えるゲーム界のトップランナーである上田さんに、川村さんが鋭く迫ります。

4. インタラクションについてはどう考えていますか?

上田文人 

操作が複雑だから楽しめる場合もあるだろうし、そのアクションが現実世界だとどうなのかというのはよく考えます。

Q.僕はインタラクティブ・デザインをやっているからこそ、あえて上田さんにお聞きしたいのですが、ゲームを作る上でインタラクションについてはどう考えていますか? 例えば、ゲームのコントローラーというのはかなりインタラクションを規定するものだと思いますが、そういうものからデザインしてみたいと思ったりすることはないですか?

上田:そういうのはあまりないですね。みんなが持っているものでプレイできるゲームが作れればいいと思っています。もともとビデオゲームって、ボタンひとつでジャンプできたりミサイルが打てたり、色んなことができる楽しさがあったと思うんです。いまはもっと身体性に即したコントローラーも出てきていますが、どっちに進むべきなのかという答えはまだ出ていません。ただ個人的には、やっぱり物理的なアクションがないとつまらないなというのはありますね。スマートフォンが出てきた時なんかも「物理ボタン欲しいな」という違和感がありました(笑)。

Q.僕の仕事でも、コンテンツのインターフェースや、ユーザーをどうナビゲートするかという問題が必ず出てくるんですけど、ゲームを作る上でその辺りはどうアプローチされていますか?

上田:操作系はなるべくシンプルにしたいと思っています。ただ、その辺はやはりゲームの面白さとのせめぎあいになってきますよね。操作が複雑だから楽しめる場合もあるだろうし、そのアクションが現実世界だとどうなのかというのはよく考えます。たとえば、「しがみつく」というアクションは現実世界でも困難な動きだから、少々操作が複雑でもいいんじゃないかとか。ただ、ゲームをやり慣れていない人のことを考えると、結構悩むポイントではありますね。また、ナビゲートという部分については、僕はあまり得意ではないんです。『ICO』の時なんかは「そんなのどうでもいいよ」と思っていたし(笑)、多少説明不足でも表現されている世界に魅力があれば、やってみたいと思ってくれるんじゃないかと。手探りで色々調べていくのもゲームの面白さだったりしますからね。

自分の作ったテキストをそのまましゃべってもらうのには照れがあるんです(笑)。

Q.僕はいろんな理由でなるべく言葉に依存しない表現をいつも心がけているんですけど、上田さんの字幕を使ったダイアログの見せ方などからも、言葉にある程度距離を持たせている印象を受けます。

上田:それにはふたつ理由があって、ひとつはこれも制約からですね。リアリティを追求したいというのがまず先にあるので、たとえば『ICO』の場合は、キャラクター同士言葉が通じないからこそ、手をひっぱる必然性ができたりする。もうひとつは照れですね。自分の作ったテキストをそのまましゃべってもらうのには照れがあるんです(笑)。これは日本人特有の感覚かもしれないですが、洋画を字幕で見て育ってきたので、ちょっと恥ずかしいと思う会話でも、字幕によって緩和されるような気がしていて。

『人喰いの大鷲トリコ』© Sony Computer Entertainment Inc.

Q.なるほど。言葉ひとつとっても、やっぱりちゃんといくつかの理由を兼ね備えた上でこういう表現になっているんですね。

上田:理由がひとつだけだと、なかなか決められないんです。ひらめいたアイデアをどんどん入れていくというよりは、色々もがきながらハマるアイデアを考えて表現していくという感じなんですね。もっと簡単な方法もあると思うし、そんな狭いストライクゾーンを狙わなくてもいいのかもしれないけど、それだとつまらないなって思ってしまうんです。<続く>

インフォメーション

川村真司さんが企画・制作を手掛けたNHKの番組「TECHNE:映像の教室」の上映会とトークが、9月22日にTokyo Art Book Fair内のプログラムとして開催予定。また、同番組の第3シリーズも現在制作中。
上田文人さんは、現在PS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を鋭意制作中。

もっと知りたい人は…

  • 川村真司 

    川村真司

    クリエイティブ・ディレクター

    1979年東京生まれ、サンフランシスコ育ち。博報堂、BBH Japan、180 Amsterdam、BBH New York、Wieden & Kennedy New Yorkを経て、現在東京とニューヨークを拠点とするクリエイティブ・ラボPARTYを設立し、クリエイティブディレクターとして在籍。ToyotaやGoogleといったブランドのグローバルキャンペーンを手がけつつ、プロダクト・デザインからミュージックビデオのディレクションまで活動は多岐に渡る。主な受賞歴に、カンヌ国際広告祭、文化庁メディア芸術祭、アヌシー国際アニメーションフェスティバル、NY ADC、One Showなどがある。

  • 上田文人 

    上田文人

    ゲームデザイナー

    1970年兵庫県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、コンピュータグラフィックのスキルを独学で学び、1997年にソニー・コンピュータエンタテインメントに入社。PS2専用ソフト『ICO』 『ワンダと巨像』のディレクター、ゲームデザイナー、アートディレクターとして活躍。絵画的な表現とエンタテインメント性を両立させた独特の世界観で国内外で高い評価を受けている。現在はクリエイティブ・ディレクターとしてPS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を制作中。