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川村真司

クリエイティブ・ディレクター

上田文人

ゲームデザイナー

今回カンバセーションズに登場するインタビュアーは、昨年クリエイティブ・ラボ「PARTY」を立ち上げたクリエイティブ・ディレクター、川村真司さん。SOUR『日々の音色』や、androp『Bell』など、これまでの概念を覆す斬新なミュージックビデオをはじめとする数々の作品で、世界中から注目を集めている川村さんが今回インタビューするのは、『ICO』『ワンダと巨像』などの作品を手がけ、現在はゲームファン待望の新作『人喰いの大鷲トリコ』を制作中のクリエイティブ・ディレクター、上田文人さん。インタラクティブ・デザインの元祖とも言えるゲーム界のトップランナーである上田さんに、川村さんが鋭く迫ります。

3. アイデアはどのように生まれるのですか?

上田文人 

自分でもよくわからないんです。でも、おそらくほぼ同時に色んなことを考えているんだと思います。

Q.上田さんのゲームは自由度が高い一方で、例えば『ICO』における手つなぎのインタラクションだったり、核になるアイデアがシンプルなことがスゴいと思うんです。核になるアイデアから、これだけ完成された世界が作られるまでのプロセスがとても気になります。

上田:『ICO』の時は、男の子と女の子のビジュアルから考えていったのか、それとも「手つなぎ」というメカニックから発想したのか、自分でもよくわからないんです(笑)。でも、おそらくほぼ同時にそういうことを考えていたんだと思います。男の子と女の子をうまく使うためには「手をつなぐ」というアクションがほしいし、「手をつなぐ」ということを考えたら男の子と女の子のキャラクターの方がいい。なおかつ女の子の方が大きかったら意外性もあるかなという感じで、どんどん固まっていく感じですね。

『ICO』 © 2001-2011 Sony Computer Entertainment Inc.

Q.ほぼ同時に色んな要素がつながって発展していくんですね。

上田:そうですね。そこからの物語や世界観は、作りながらじゃないと見えてこないんですよ。特にゲームというのは毎回ハードが違ったりしますからね。『ICO』は最初「PS」用に作っていたのが、途中から「PS2」に変わったんですが、それによって表現できることも変わる。また、どんな人たちと組むかによってやれること、やれないことも当然変わってきます。そのなかでベストの表現を考えていくんです。ここで言うベストの表現というのは、それがユーザーにとってどれだけ説得力のある表現なのかということですね。

Q.ゲームほどではないにしろ、僕がやっている表現もブラウザ環境などによってできること、できないことが変わってしまうので、それはよくわかります。どれだけの数の人に届くべき表現なのかを逆算して、取り入れるところ、切り捨てるところをジャッジしていくところがありますね。

上田:そうですね。ゲーム制作というのは、そういう制約をどう解決していくかということの繰り返しです。だから僕は、いかに制約をプラスに変えていけるかということを考えるようにしています。効果的な一手を見つけると、オセロがひっくり返っていくみたいで気持ちが良いんです。

『ワンダと巨像』 © 2001-2011 Sony Computer Entertainment Inc.

Q.ファミコンなど初期のゲームは、まさにそういうことをやっていたように思います。コントローラーのボタンが少なかったり、容量が限られていたからこそ、工夫してそこを突破していく過程でイノベーションが生まれていた。いまはマシンスペックが上がっていて、逆にそういうプラスにできる制約や余白のようなものが見つけにくくなってしまったのかもしれないですね。でも、その中で上田さんの作品は、スペックをフルに活かしつつ、ゲームの中だけで閉じてしまわないような世界の広さを感じさせる演出など、上手く余白が作られている気がします。

上田:ビジュアルなどについては僕も細かく作り込んでいますが、余白や想像が入り込む部分というのが、昔のゲームとは変わってきているのかもしれないですね。<続く>

インフォメーション

川村真司さんが企画・制作を手掛けたNHKの番組「TECHNE:映像の教室」の上映会とトークが、9月22日にTokyo Art Book Fair内のプログラムとして開催予定。また、同番組の第3シリーズも現在制作中。
上田文人さんは、現在PS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を鋭意制作中。

もっと知りたい人は…

  • 川村真司 

    川村真司

    クリエイティブ・ディレクター

    1979年東京生まれ、サンフランシスコ育ち。博報堂、BBH Japan、180 Amsterdam、BBH New York、Wieden & Kennedy New Yorkを経て、現在東京とニューヨークを拠点とするクリエイティブ・ラボPARTYを設立し、クリエイティブディレクターとして在籍。ToyotaやGoogleといったブランドのグローバルキャンペーンを手がけつつ、プロダクト・デザインからミュージックビデオのディレクションまで活動は多岐に渡る。主な受賞歴に、カンヌ国際広告祭、文化庁メディア芸術祭、アヌシー国際アニメーションフェスティバル、NY ADC、One Showなどがある。

  • 上田文人 

    上田文人

    ゲームデザイナー

    1970年兵庫県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、コンピュータグラフィックのスキルを独学で学び、1997年にソニー・コンピュータエンタテインメントに入社。PS2専用ソフト『ICO』 『ワンダと巨像』のディレクター、ゲームデザイナー、アートディレクターとして活躍。絵画的な表現とエンタテインメント性を両立させた独特の世界観で国内外で高い評価を受けている。現在はクリエイティブ・ディレクターとしてPS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を制作中。