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川村真司

クリエイティブ・ディレクター

上田文人

ゲームデザイナー

今回カンバセーションズに登場するインタビュアーは、昨年クリエイティブ・ラボ「PARTY」を立ち上げたクリエイティブ・ディレクター、川村真司さん。SOUR『日々の音色』や、androp『Bell』など、これまでの概念を覆す斬新なミュージックビデオをはじめとする数々の作品で、世界中から注目を集めている川村さんが今回インタビューするのは、『ICO』『ワンダと巨像』などの作品を手がけ、現在はゲームファン待望の新作『人喰いの大鷲トリコ』を制作中のクリエイティブ・ディレクター、上田文人さん。インタラクティブ・デザインの元祖とも言えるゲーム界のトップランナーである上田さんに、川村さんが鋭く迫ります。

2. ゲームの世界観はどうやって作っていくのですか?

上田文人 

もともと世界観を作ろうと思ってやっているわけではなくて、整合性をしっかり取るというのが先にあるんです。

Q.僕は普段映像を作る時に、なるべく手触り感のあるような有機的な表現にしたいと思っています。もともと僕はプログラミングもしていたのですが、プログラムだと整数的な表現は得意だけど、逆に微妙な揺らぎや質感を表現するのが難しいと思っていて、CGでできそうなものでもあえて実写で撮ることが多いんですね。ゲームの場合は、基本的に全部プログラミングだと思いますが、上田さんの作品は、奥行き感とか光の感じとかがスゴく有機的で自然だし、それも上田ワールドの重要な要素になっているんじゃないかなと思うんです。

上田:そこは何度も試行錯誤して作っているところですね。例えば、『ICO』の時は、光や影をきちんと表現したタイトルがそれほどなかったこともあって、商品として差別化するために力を入れていこうというのがまずあったんですね。霧の表現や遠くのものが霞んで見える処理などは、色んな制約があるなかで試行錯誤の末に行き着いたものでした。

『ICO』© 2001-2011 Sony Computer Entertainment Inc

Q.ゲームを作る上での制約というのは、主にスペック的な部分ですか?

上田:もちろんそういう部分や、予算、人材の制約もあります。でも、一番は整合性ですね。ゲームを進めていく上で、プレイヤーを迷わせないようにしたりとか、逆に少し迷う部分を作ったりとか、ゲームの世界の中でのリアリティを保ちつつ、ユーザーにとって手応えのある表現にしていくために、色んな調停をしていくのが一番大変な作業。パズルに近いところがあって、そのピースがパシっとハマる瞬間があるんです。もともとその世界が存在しているかのように思えて、なおかつプレイヤーの目的などにも合致するようなピースが見つかった時は気持ちが良いですね。

Q.たしかに上田さんのゲームをやっていると、ゲームが作られる前からその世界があったんじゃないかという気にさせられます。もともとその世界があったから、必然的にこういうゲームになったという感じを受けます。必ずしも明確な道筋があるわけではないけど、その辺をウロウロしているだけでも楽しくて綺麗だし、一方でプレイヤーが行けない場所にも世界の広がりが感じられるように設計されていて、スゴく上手だなと。

上田:僕自身ゲームをプレイしていて何が面白いかというと、あまりコントロールされていない部分だったりするんです。例えば、ゲームというのはスタートからどんどん難易度が上がっていくのが当然のように思われていますが、そうやって先が見えてしまうよりももっとデコボコしている方が個人的には楽しかったりする。だから、あまりガチガチにチューニングをしているわけではないんです。

『ワンダと巨像』 © 2001-2011 Sony Computer Entertainment Inc

Q.なるほど。だから予定調和ではない独自のリアリティを感じるんですね。

上田:そうかもしれません。よく世界観が良いと言ってもらえるんですが、もともと世界観を作ろうと思ってやっているわけではなくて、整合性をしっかり取るというのが先にあるんです。プレイヤーが興ざめしてしまうような部分をなるべく排除していった結果、世界観ができていくという感じです。例えば、現実世界と同じようなものをゲームで作ろうとすると、それは表現難度が高いと思うんですね。そのなかで何を端折るとリアリティが失われるのか、また、リアリティが上がるのかを考えながら作っていくんです。<続く>

インフォメーション

川村真司さんが企画・制作を手掛けたNHKの番組「TECHNE:映像の教室」の上映会とトークが、9月22日にTokyo Art Book Fair内のプログラムとして開催予定。また、同番組の第3シリーズも現在制作中。
上田文人さんは、現在PS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を鋭意制作中。

もっと知りたい人は…

  • 川村真司 

    川村真司

    クリエイティブ・ディレクター

    1979年東京生まれ、サンフランシスコ育ち。博報堂、BBH Japan、180 Amsterdam、BBH New York、Wieden & Kennedy New Yorkを経て、現在東京とニューヨークを拠点とするクリエイティブ・ラボPARTYを設立し、クリエイティブディレクターとして在籍。ToyotaやGoogleといったブランドのグローバルキャンペーンを手がけつつ、プロダクト・デザインからミュージックビデオのディレクションまで活動は多岐に渡る。主な受賞歴に、カンヌ国際広告祭、文化庁メディア芸術祭、アヌシー国際アニメーションフェスティバル、NY ADC、One Showなどがある。

  • 上田文人 

    上田文人

    ゲームデザイナー

    1970年兵庫県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、コンピュータグラフィックのスキルを独学で学び、1997年にソニー・コンピュータエンタテインメントに入社。PS2専用ソフト『ICO』 『ワンダと巨像』のディレクター、ゲームデザイナー、アートディレクターとして活躍。絵画的な表現とエンタテインメント性を両立させた独特の世界観で国内外で高い評価を受けている。現在はクリエイティブ・ディレクターとしてPS3用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』を制作中。