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川田十夢

AR三兄弟 長男

大林宣彦

映画作家

AR(拡張現実)という技術を武器に、テレビ、雑誌、音楽、ファッションなどあらゆる素材やメディアをマッシュアップし、未来の可能性を次々と見せてくれる話題のユニット、AR三兄弟。そんな彼らは、未来の映画についても色々と考えを巡らせているようです。そこで、今回AR三兄弟の長男こと川田十夢さんがインタビュー相手に指名したのは、「時をかける少女」「転校生」などの代表作で知られる日本映画界の巨匠・大林宣彦監督。現在全国で公開中の最新作「この空の花―長岡花火物語」を劇場で見たことが、川田さんに大きな衝撃を与えたといいます。日本映画の常識を覆してきた大林監督に、果たして川田さんが聞きたいこととは?

5. 映画の未来は明るいですか?

大林宣彦 

コミュニケーションの仕方がこれだけ変わってきているということは、映画も当然変わっていくべきです。

Q.3.11の後、ドイツのボードゲームを買ったんです。それはプレイヤーが電力会社の社長になるというゲームで、最初はやっぱりみんな原発を建てることを敬遠するんですが、風力や火力発電は燃費が悪くて電力量も少なく、結局最後にはみんな原発を乱立しちゃうんです。それで、ゲームが終わった後に「あ、こういうことなんだ」と。そのゲームが僕にとっては一番大きなメッセージになりました。結局中に入って体験しないと伝わらないんですよね。このゲームと同じように、今回の映画は不思議と中に入ることができたんです。

大林:これは、中に入ることがなければ、なんてことのない映画ですよ。物語があるわけでも、確たるメッセージを伝えているわけでもないですからね。むしろそうした混沌の中でみんなに考えてもらうことで、ひとつの道筋くらいはなんとなく示せるかもしれないと。映画では、この物語を外から見るのではなく、中に入ってきてもらうような技術的な仕掛けを視線のあり方などで入れています。そうすると、わからないということが我が事になってしまうから、自分で考えて解決しないといけなくなる。そういう参加型の映画にしたかったんです。

Q.僕は、映画の未来を発明するということを一生かけてやってみたいんです。ただ、監督の映画を見て、そんなもの作れないんじゃないかとちょっと打ちのめされてしまいました。

大林:そんなことないですよ。映画にはもっともっと先があるはずなんです。コミュニケーションの仕方がこれだけ変わってきているということは、映画も当然変わっていくべきです。また、映画は科学文明が発明した芸術だから、科学の発達が映画の成長にもつながるはずで、もっとその可能性を活かしていくことができると思うんです。すべてがそうではないですが、科学文明は究極的には文化になるんです。例えばいまなら、映画よりもツイッターの方が大きな文化になってきていますよね。映画は遅れています。黒澤明さんは晩年に「もし400歳まで生きられたら、おれは映画で世界から戦争をなくす」と言っていたんですね。映画にはそれだけの力がある。でも、人生が足りないから続きをやってくれよ、と。それを次の世代に伝えようと思い、大学で教える決心をしました。もともと僕は子どもと話をするのが大好きで、それは進化した人たちと話ができるからなんですね。例えば、いまのあじさい革命なんかはまさに進化だと思うんです。この革命は、これまでの単なる過激な反対運動の革命ではなく、自分たちの正気を確かめるための穏やかな集いに見えるんです。こないだはツイッターなどを通して45,000人が集まったそうですが、これは世の中を変える力になるんじゃないかと思っています。いまはコミュニケーションが個人単位になってきていますよね。組織は悪を生みやすいですが、個人だとあまりそうはなりにくい。それはみんながオタクになるということではなく、逆に個人単位のコミュニケーションが広がっていけば、平和をたぐりよせられる時が来るんじゃないかなと。つまりそれは、このサイトと同じように個人同士の「カンバセーション」なんですよ。同一性を楽しむということは、違う人間同士を敵にしてしまうこともあるけれど、個人がそれぞれの違いを理解し合い、楽しみながら語り合うことで、お互いの正気を手繰り寄せていくというのは、良い方にしか向かわないんです。またそれは、芸術家、クリエイターたちの夢であり、責務でもある。そういう時代が来たというのは人類の進化だと思うし、今日はそんな僕らの世代よりもうんと進化した人たちとお話ができ、ひとつの新しい時代に参加できたことがとてもうれしかったですよ。<インタビュー終わり>

インフォメーション

大林宣彦監督最新作「この空の花―長岡花火物語」の上映情報はこちらから。

もっと知りたい人は…

  • 川田十夢 

    川田十夢

    AR三兄弟 長男

    1976年熊本県生まれ。2001年メーカー系列会社に就職、面接時に書いておいた「未来の履歴書」の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案、AdobeRecords ダブル受賞など、夢みたいなことを一通り実現させた後、2010年に独立。公私ともに長男として活躍。最新作は、真心ブラザーズMV『消えない絵』(監督+出演)、BUMP OF CHICKENと共同開発したBOC-AR、コカ・コーラとの自販機 AR、情熱大陸の出演・開発など。

  • 大林宣彦 

    大林宣彦

    映画作家

    1938年広島県生まれ。自主製作映画『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』が、画廊・ホール・大学を中心に上映されジャーナリズムで高い評価を得る。『喰べた人』(63)はベルギー国際実験映画祭で審査員特別賞を受賞。この頃からテレビコマーシャルの草創期に本格的に関わり始め、その数は2000本を超える。1977年『HOUSE/ハウス』で商業映画にも進出。同年、ブルーリボン新人賞受賞。故郷で撮影された『転校生』(82)『時をかける少女』(83)『さびしんぼう』(85)は“尾道三部作”と称され親しまれ、その後も数々の映画作品で受賞多数。2004年春の紫綬褒章受章、2009年秋の旭日小綬章受章。