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川田十夢

AR三兄弟 長男

大林宣彦

映画作家

AR(拡張現実)という技術を武器に、テレビ、雑誌、音楽、ファッションなどあらゆる素材やメディアをマッシュアップし、未来の可能性を次々と見せてくれる話題のユニット、AR三兄弟。そんな彼らは、未来の映画についても色々と考えを巡らせているようです。そこで、今回AR三兄弟の長男こと川田十夢さんがインタビュー相手に指名したのは、「時をかける少女」「転校生」などの代表作で知られる日本映画界の巨匠・大林宣彦監督。現在全国で公開中の最新作「この空の花―長岡花火物語」を劇場で見たことが、川田さんに大きな衝撃を与えたといいます。日本映画の常識を覆してきた大林監督に、果たして川田さんが聞きたいこととは?

4. ツイッターに興味はありますか?

大林宣彦 

もし昔からツイッターがあったら、角川映画や大林映画は違う展開をしていたんじゃないかと思います。

Q.監督はご自身のDVDの中で、自分の作品について非常にうまく解説されていますが、いまは映画のことを解説してくれる存在というのが少なくなっているような気がします。

大林:映画というのは「作ること」「見ること」に加えて、「語ること」というのがあるんです。僕らの時代には映画の語り部がいっぱいいて、みんな自分が見た映画は必ず語るんですよ。例えば、淀川長治さんが、僕の目の前で僕が作った映画についてある人に説明をしていたことがあったのですが、内容が全然違うんです(笑)。でも、淀川さんの演出が立っているから、こういう風に撮った方が面白かったのかな?と思えてくるんですよ。そうやって色んな語り部の話が集まることで、その作品がチャーミングな映画として記憶されていくんですね。時にそれは本来の作品とは違う伝わり方もするんだけど、それは好意的な誤解であり、クリエイティブな行為だと思うんです。福永武彦が「恋愛は好意的な誤解である」と言っていますが、その好意的な誤解が重なるコミュニケーションこそが、現実を豊かなものにしていくと思うんです。

「この空の花―長岡花火物語」©PSC

Q.いまはツイッターなどでみんなが簡単に意見を言ったり、自分の考えを語れる環境になっていますが、それについてはどう感じていますか?

大林:今回の映画にしても、もしツイッターがなかったら、わけのわからないものを見たということだけで終わっていたんじゃないかな。そもそも僕は、物事そんなにわけがわかるものではないと思っています。わけがわからなければ感動しないというのは、間違った商業主義の洗脳。けれども、わからないというのは、みんなで一緒にわからないって言っているから良いわけで、ただひとりでわからないと言っていても孤独でしょ。ツイッターがあると、わけのわからないものを見たという熱気がまず広がっていくんですね。じゃあ、自分も考えてみようと深まってゆく。ツイッターこそ好意的な誤解の輪を生んでくれるものだと思っています。今回の作品もいつもと同じ個人映画で、当初大きな映画館が見向きもしてくれないなか、スバル座の館主が「この映画はお客さんがひとりも来なくても上映したい」と言ってくれたんですね。それを中森明夫さんや椹木野衣さんらが見てくれたことから火が付いて、ツイッターのおかげもあって気づけば最終日には満員でしょう。やっていることは変わらないけど、もし昔からツイッターがあったら、角川映画や大林映画は違う展開をしていたんじゃないかと思います。ツイッターのコミュニケーションは偏見に傾きにくいですからね。

©PSC

Q.監督の映画は、みんなが同じスクリーンを前にしながら、それぞれ違うものを見ていると言えるほど人によって感想がさまざまで、それがツイッターなどを通して広がっていくんだと思います。「語りしろ」「物語しろ」のようなものがスゴくあって、誰もが感情移入できる入口があるのがスゴイなと。

大林:そう願って作っています。これはジャンルが特定した1本の劇映画ではできないことだと思うんですね。川田さんもおっしゃっているように、特定のジャンルに閉じこもらずどんどん拡張していくことが表現の一番大事なことですからね。今回の映画を見た人たちがツイッターで色々感想を書いてくれていたのですが、4歳の子どもと一緒に見に来たお父さんが、映画が終わった途端に「お父さん、ぼく今生きているの?」と子どもに聞かれたというんですね。それでお父さんは「お前は生きているよ。お前が生きているのと同じように、映画の中の(すでに死んでいる)自転車の子も生きているんだよ」と答えたそうなんです。「だから、一緒に戦争のない時代を作りなさい」と。僕の映画をこの親子が一番しっかり受け止めてくれたじゃないかと(笑)。4歳の子どもだから余計なことは考えずに、僕でも思いつかなかったような感想を純粋に持ってくれたんですね。生きている人間が覚えている限り、死んだ人間も生きているんだぞという、哲学的とも言えることを子どもは本能で感じてくれて、とても感動したんです。<続く>

インフォメーション

大林宣彦監督最新作「この空の花―長岡花火物語」の上映情報はこちらから。

もっと知りたい人は…

  • 川田十夢 

    川田十夢

    AR三兄弟 長男

    1976年熊本県生まれ。2001年メーカー系列会社に就職、面接時に書いておいた「未来の履歴書」の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案、AdobeRecords ダブル受賞など、夢みたいなことを一通り実現させた後、2010年に独立。公私ともに長男として活躍。最新作は、真心ブラザーズMV『消えない絵』(監督+出演)、BUMP OF CHICKENと共同開発したBOC-AR、コカ・コーラとの自販機 AR、情熱大陸の出演・開発など。

  • 大林宣彦 

    大林宣彦

    映画作家

    1938年広島県生まれ。自主製作映画『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』が、画廊・ホール・大学を中心に上映されジャーナリズムで高い評価を得る。『喰べた人』(63)はベルギー国際実験映画祭で審査員特別賞を受賞。この頃からテレビコマーシャルの草創期に本格的に関わり始め、その数は2000本を超える。1977年『HOUSE/ハウス』で商業映画にも進出。同年、ブルーリボン新人賞受賞。故郷で撮影された『転校生』(82)『時をかける少女』(83)『さびしんぼう』(85)は“尾道三部作”と称され親しまれ、その後も数々の映画作品で受賞多数。2004年春の紫綬褒章受章、2009年秋の旭日小綬章受章。