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川田十夢

AR三兄弟 長男

大林宣彦

映画作家

AR(拡張現実)という技術を武器に、テレビ、雑誌、音楽、ファッションなどあらゆる素材やメディアをマッシュアップし、未来の可能性を次々と見せてくれる話題のユニット、AR三兄弟。そんな彼らは、未来の映画についても色々と考えを巡らせているようです。そこで、今回AR三兄弟の長男こと川田十夢さんがインタビュー相手に指名したのは、「時をかける少女」「転校生」などの代表作で知られる日本映画界の巨匠・大林宣彦監督。現在全国で公開中の最新作「この空の花―長岡花火物語」を劇場で見たことが、川田さんに大きな衝撃を与えたといいます。日本映画の常識を覆してきた大林監督に、果たして川田さんが聞きたいこととは?

2. 映画では、嘘をついてもいいのですか?

大林宣彦 

根も葉もしっかりした大嘘をやって、そこから真を導いてやろうというのが僕の確固たる考え方であり、生き方なんです。

Q.監督の作品には、「転校生」や「時をかける少女」「ふたり」など、原作小説を映画化しているものが多いですよね。原作の設定を大きく変えているものもあるのに、映画の中にはしっかりと「まこと」がある。そんな魔法みたいなことをされていますよね。

大林:もともと何かを見ることよりも作ることへの興味が強い性質なので、例えば推理小説なども、まずはじめに犯人を確認してから読み始めるんです。小説を書いた作家の考えを追体験するのが楽しいんですよ。だから、小説を映画化する時も、この小説家がもし、もとから映画作家だったらどんなものを作るんだろうと思いながら原作を読んでいくんです。その小説家の頭の中にあった混沌とした世界、それこそ小説にする時に切り捨ててしまった部分も含めて形にしていくことが、映画人としての僕の仕事だろうと。僕は小説も漫画も書きたいし、なんでもやりたい人間なのですが、だからこそ映画を撮るからには映画的であるということにこだわり尽くしてみようと思うんです。

©PSC

Q.監督の作品は、映画という虚構の世界の中で、ついていい嘘、ついてはいけない嘘を明確に線引きしているように感じます。

大林:僕は、小説家の佐藤春夫が言っていた「根も葉もある嘘八百」という言葉が好きなんです。僕たちがやっていることは虚構、つまり「嘘八百」なんですが、そこに根も葉もなければ、ただの詐欺師なんですよね。表現者というのは、チャーミングな常識人であるべきだと僕は思っています。そのためには、根も葉もしっかりした大嘘をやって、そこから真を導いてやろうというのが僕の確固たる考え方であり、生き方なんです。普段から、自分という人間に、根や葉があり得るのか、映画を作る資格があるのかとストイックに問いかけるように努めています。それはつまり良い人であるということなんですが、良い人になるということは、自分が悪い人だと承知することの単なるリアクションに過ぎないんです。そもそも何かを表現するということもアクションではなく、社会に対するリアクションですよね。自分が良い人になるというのは、そうした社会を映す鏡になるということで、そうなれた時だけキャメラを回そうと思っているんですよ。

「この空の花―長岡花火物語」©PSC

Q.現実も映画もすべてがつながっているということですね。

大林:そうですね。例えば、まだファーストキスもしていないような若い女優でも、僕の脚本次第では、映画の中でそれを経験するわけです。それはある意味とんでもない犯罪を犯しているとも言えますよね。じゃあそこで僕ができることは何か。例えば、20キロあるスタジオの照明が、撮影中にその子に落ちてくる可能性というのは完全にゼロではない。では、もしそれが現実になった時に、自分が飛び出していって彼女を守れるのかと考えるわけです。「スタート」と声をかけてから「カット」と言うまでは、その子は僕が創造した人物になっているわけだから、自分が死んででもその子を生かしてやることが僕の責任だろうと。それが果たしてできるのかと自分に問うんです。そう考えているうちに、やがてその子に惚れ込んでいって、「お前のためなら死んでやれる」と思えた時に初めて、自分がこのカットを撮る資格を得られたと感じるんです。そういう感情は必ず相手にも伝わるので、それに応えた演技をしてくれる。映画という虚構の中でより純なる恋が結びつくことで、観客もその女優に惚れて、映画が豊かになるんです。<続く>

インフォメーション

大林宣彦監督最新作「この空の花―長岡花火物語」の上映情報はこちらから。

もっと知りたい人は…

  • 川田十夢 

    川田十夢

    AR三兄弟 長男

    1976年熊本県生まれ。2001年メーカー系列会社に就職、面接時に書いておいた「未来の履歴書」の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案、AdobeRecords ダブル受賞など、夢みたいなことを一通り実現させた後、2010年に独立。公私ともに長男として活躍。最新作は、真心ブラザーズMV『消えない絵』(監督+出演)、BUMP OF CHICKENと共同開発したBOC-AR、コカ・コーラとの自販機 AR、情熱大陸の出演・開発など。

  • 大林宣彦 

    大林宣彦

    映画作家

    1938年広島県生まれ。自主製作映画『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』が、画廊・ホール・大学を中心に上映されジャーナリズムで高い評価を得る。『喰べた人』(63)はベルギー国際実験映画祭で審査員特別賞を受賞。この頃からテレビコマーシャルの草創期に本格的に関わり始め、その数は2000本を超える。1977年『HOUSE/ハウス』で商業映画にも進出。同年、ブルーリボン新人賞受賞。故郷で撮影された『転校生』(82)『時をかける少女』(83)『さびしんぼう』(85)は“尾道三部作”と称され親しまれ、その後も数々の映画作品で受賞多数。2004年春の紫綬褒章受章、2009年秋の旭日小綬章受章。