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川田十夢

AR三兄弟 長男

本広克行

映画監督

今回でカンバセーションズには2回目の登場となるAR三兄弟川田十夢さん。前回の大林宣彦監督に続き、今回彼がインタビュー相手として挙げてくれたのは、映画、ドラマ、ミュージックビデオをはじめ幅広い分野で活躍する本広克行監督。先日、惜しまれながらも完結した『踊る大捜査線』シリーズで社会現象とも言えるブームを巻き起こし、さらに現在放映中のTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』では総監督を務めるなど、映画監督の枠にとどまらない活動をする本広さんに、川田さんがいま聞きたいこととは?

4. 作家性にはこだわらないのですか?

本広克行 

監督としてのブランドを作るなら、もっとコアな映画を作らないといけないと思うんです。作品そのものではなくて、残していったものや仕組みが自分の作家性のようになればいいなと。

Q.『踊る大捜査線』シリーズを終わらせる際には、どんなことを考えましたか?

本広:ちょうど最終章を作っている時に、山田洋次監督と食事をする機会があったんです。山田さんには昔から可愛がってもらっているのですが、その席で「青島刑事は最後に殺した方がいいのか?」みたいな話になった時に、山田さんは「どんなことがあっても殺しちゃダメだ」っておっしゃったんです。「僕も寅さんを殺してしまって凄く悔いている」と。TV版「男はつらいよ」で寅さんは死んでしまうのですが、その時にファンから凄く手紙が来て、申し訳ないことをしたと思ったそうなんです。お客さんが楽しみに見に来る作品で絶望なんて見せちゃいけないよと。作っている側としては、カッコつけたくなるんですけど、それをやったらダメだよって。

Q.凄く良い話ですね! 僕も寅さんは大好きなんですけど、山田監督の思いは本広さんにも受け継がれているところがありそうですね。もはや寅さんはストーンズみたいな存在ですけど、一方で山田監督はロードムービーのようなものや、時代劇を撮ってみたり、フィルムに残すべきものをしっかり残していますよね。

本広:『男はつらいよ』シリーズを撮りながら、2、3年に一度はチャレンジングな作品も撮ってきていて、それがどれも本当に傑作なんですよね。これだけ歴史で証明してきている人がここにいるからこそ、自分もいまのやり方で良いんだと思えるんです。ヒット作を作りながら、実験的なものも作るというのはやっぱり必要なことだなと。映画監督の中には、キャリアを重ねていくにつれて私利私欲にまみれていくような人もいるんですが(笑)、山田さんの映画作りは純粋だと思うし、あの精神力やバイタリティは本当に凄いと思います。

Q.本広さんはご自身の作家性ということについてはどう考えていますか?

本広:僕は作家性で立ち向かっていってもたぶんダメなんですよ。監督としてのブランドを作るなら、もっとコアな映画を作らないといけないと思うんですね。それよりも自分としては、「あの監督から巣立った人たちにはこんなにたくさんおもしろい人がいた」と言われるような存在になりたい。先日、『踊る大捜査線』の大謝恩会があったんですが、この作品に携わったスタッフというのは、いま日本映画界を支えている人たちばかりだということに気づいたんです。このままもっとみんなを育てていかないとと思ましたし、作品そのものではなくて、残していったものや仕組みが自分の作家性のようになればいいなと。ずっと映画を作ってらっしゃる人は本当に凄いと思うし、大林宣彦監督の話なんかを聞くと、いつもシビれて涙が止まらなくなるんです。でも、僕には言葉を上手く紡ぐ能力はないから、だったら動こうと。本でもドラマでもCMでも何でもいいから、それらを映画と絡めていくことでおもしろいことができるんじゃないかなと。<続く>

インフォメーション

本広克行さんがディレクターを務める「さぬき映画祭2013」が2月3日から17日まで開催予定。また、本広さんが総監督を務めるTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』は、フジテレビ”ノイタミナ”にて毎週木曜24:45~放送他各局にて放送。
AR三兄弟が製作総指揮を務めた『拡張現実シアター 近未来は今』が、1月16~18日の3日間東京ビックサイトで開催される「第1回 クルマのITソリューション展」にて上映予定。

もっと知りたい人は…

  • 川田十夢 

    川田十夢

    AR三兄弟 長男

    1976年熊本県生まれ。2001年メーカー系列会社に就職、面接時に書いておいた「未来の履歴書」の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案、AdobeRecords ダブル受賞など、夢みたいなことを一通り実現させた後、2010年に独立。公私ともに長男として活躍。最新作は、真心ブラザーズMV『消えない絵』(監督+出演)、BUMP OF CHICKENと共同開発したBOC-AR、コカ・コーラとの自販機 AR、情熱大陸の出演・開発など。

  • 本広克行 

    本広克行

    映画監督

    1965年生まれ。香川県丸亀市出身。ROBOT所属。1996年「7月7日、晴れ」で劇場映画監督デビュー。 2003年に公開された「踊る大捜査線 THE MOVIE2」では、日本映画(実写)興行収入記録歴代1位の座を獲得。また、 「サマータイムマシン・ブルース」(05)、「曲がれ!スプーン」(09)と、 劇団ヨーロッパ企画の舞台を映画化。2012年は、監督を務める 「踊る大捜査線」シリーズ最新作「踊る大捜査線 THE FINAL新たなる希望」が公開された。