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川田十夢

AR三兄弟 長男

河森正治

ビジョンクリエイター

今回でカンバセーションズ最多の4回目の登場となるインタビュアーの川田十夢さん。先日、放映されたテレビ番組「情熱大陸」も大きな反響を呼び、ますます注目を集めている川田さんが今回インタビューする相手は、「マクロス」シリーズや「地球少女アルジュナ」「創聖のアクエリオン」「AKB0048」をはじめ数々のアニメーション作品を世に送り出してきたビジョンクリエイター、河森正治さん。第26回東京国際映画祭の関連企画として、去る10月18日にMTV81主催で開催された「J-Culture in the Frame」におけるトークイベントとして実現した両者の対話の模様をお届けします。

※今回のトークイベントの模様は、MTVの番組「MTV81」にて、11月21日と28日の2回に分けて放映される予定です。

5. ARにはどんな力がありますか?

河森正治 

人間の脳内ビジョンみたいなものの機能が後退していく代わりに、色々なメディアができたんじゃないかと。そのなかでARというものは、もう一度原始の脳内ビジョンを呼び起こすような力があるのかなと。

Q.メディアがどんどんカタチを失っていくなかで、再生プレイヤーがなくなり、劇場も要らなくなってくると、映画にもこれまでと違う見せ方が生まれるじゃないかなと思うんです。劇場が色々なところに点在しているような感覚になり、その日の天候や時間などによって変化していくような物語もあるだろうと。そこで僕が考えているのは、いま履いているこのスニーカーとかでもいいんですが、モノ自体に何かを物語らせるというアプローチで、それらの断片が折り重なって設定ができていくような作品なんです。

河森:凄く面白そうですね。その話を聞いただけでひとつストーリーが浮かびました(笑)。人間というのは、五感と脳の解析装置によって現実をとらえていますが、例えば目線というのはみんな同じわけではないんですよね。たとえ視覚によってそれをモノとして認識していても、ただの粒子の集まりが可視光線の反射によって視覚に入力されているだけで、例えば虫なんかはまったく違う世界を見ている。僕は貧乏旅行が好きで世界の色んな場所に行くのですが、そこには日本とはあまりにも違う文法があって衝撃を受けるわけです。世界の奥地には自分たちとは全然違うリアリティを生きている人がいるんですね。心理学には「コンセンサス・リアリティ」という言葉があるのですが、単に合意が取れているだけで、現実なんていうものは各々によって違うんだというところが凄く面白い。その現実のプログラムを書き換える感覚というのが、ARにはあるんじゃないかなと。

Q.ちょっと変な話になりますが、メディアというのは古代からあって、土偶というのは皮膚感覚のメディアだと思うんです。あれは現実世界の誰かを見て、それに似せて作ったわけではなくて、何かの時に感じた皮膚感覚のようなものを刻んだものなんじゃないかと。

河森:面白いですね。最近は資料などをネットで簡単に画像検索できて便利なんですが、そのものの重さがどれくらいなのかということはわからない。それに気づかないくらい画像情報に頼りすぎているわけですが、手応えや手触り、痛みというのは凄く大事ですよね。自分も好きで先住民族などを調べたりするのですが、彼らは現代人よりも感覚が一段鋭かったおかげで、違うリアリティを見ていた気がするんです。視覚を使ってモノを見ていたというよりも、自分が体感したものを脳内プロジェクターによって半実体化し、ひとつ違うリアリティを体験していたんじゃないかと勝手に妄想しています(笑)。もしかしたら彼らには土偶が土偶じゃないものとして見えていたのかもしれない。土偶がARマーカーのように機能して、何かが脳の中で起動されていたんじゃないかという気がします。

Q.技術的な話で言うと、これまでに視覚的な解像度を高めていくテクノロジーや、良い音を再生する装置などが開発されてきましたが、最近は触り心地を電子信号で再現したり、匂いをRGBのようなもので表現しようとする動きが進んでいるんですね。視覚、聴覚と来て、その次に嗅覚や触覚などにテクノロジーが向かっているのは興味深いなと。

河森:自分が勝手に思っているのは、人間の脳内ビジョンみたいなものの機能が後退していく代わりに、色々なメディアができたんじゃないかということです。もしくはそういうメディアができたことで脳内ビジョンが衰退したのかもしれませんが。そのなかでARというものは、それを通して現実と触れ合うことで、もう一度原始の脳内ビジョンを呼び起こすような力があるのかなと。

Q.突き詰めていくと、未来は土偶化するということなのかもしれないですね(笑)。<インタビュー終わり>

インフォメーション

河森正治監督の新企画・多次元プロジェクト「The Fool」が始動! 第1回公演は12月8日にニューピアホールにて開催される。詳細はこちらから。
AR三兄弟による年末恒例のイベント「AR忘年会」が12月12日に開催決定!
なお、今回のトークイベントの模様は、MTVの番組「MTV81」にて、11月21日と28日の2回に分けて放映される予定です。

もっと知りたい人は…

  • 川田十夢 

    川田十夢

    AR三兄弟 長男

    1976年熊本県生まれ。2001年メーカー系列会社に就職、面接時に書いておいた「未来の履歴書」の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案、AdobeRecords ダブル受賞など、夢みたいなことを一通り実現させた後、2010年に独立。公私ともに長男として活躍。最新作は、真心ブラザーズMV『消えない絵』(監督+出演)、BUMP OF CHICKENと共同開発したBOC-AR、コカ・コーラとの自販機 AR、情熱大陸の出演・開発など。

  • 河森正治 

    河森正治

    ビジョンクリエイター

    1960年富山県生まれ。アニメーション監督、メカデザイナー。大学在学中からメカデザイナーとして頭角を現し、20代前半でTVアニメシリーズ「超時空要塞マクロス」に登場する「バルキリー」をデザイン。実機のようなリアルな戦闘機がロボットに完全変形するメカニズムを世に送り出し、可変ロボットデザインの第一人者となる。その後も原作、監督、脚本、絵コンテからメカデザインなど幅広く手掛けながら、様々な分野で話題作をつくり続けている。最新作は、TVシリーズ『AKB0048』、新プロジェクト『ノブナガ・ザ・フール』。