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鹿野 護

映像作家
アートディレクター

柴 幸男

劇作家
演出家

カンバセーションズには今回で2度目の登場となるアートディレクター、映像作家の鹿野護さん。前回の小説家・小川洋子さんに続き、今回鹿野さんがインタビュー相手として選んだのは、劇団「ままごと」の主宰として活動する劇作家、演出家の柴幸男さん。ループやサンプリングなど音楽的手法を演劇の世界に持ち込んだ独自の表現で注目を集め、2010年には『わが星』で第54回岸田國士戯曲賞を受賞するなど、目覚しい活動を続ける柴さんに、鹿野さんがいま聞きたいこととは果たして?
※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。13年12月24日発売の『QUOTATION』VOL.17の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

5. 作品はいつ完成するのですか?

柴 幸男 

劇、時間と空間と人間によって成り立っていて、この三位が一体になって発動する仕掛けや企みがなければ完成とは言えないと思っています。

Q.作品というのはどの時点をもって完成するものなのですか?

柴:劇というのは、時間と空間と人間によって成り立っていて、この三位が一体になって発動する仕掛けや企みがなければ完成とは言えないと思っています。また、ひと言に完成と言っても、戯曲としての完成と、演劇としての完成というものがある。僕は、何もない現実の場所や人に劇的な何かを見つけ出せるのが演出家で、存在や言葉に劇を生み出せるのが役者だと考えています。一方で劇作家というのは、紙と文字の中に劇を埋め込める人のことだと思っていて、最近は戯曲の部分をしっかり完成させるということを重要視しているところがあります。

青年団リンク ままごと「わが星」(2009)  Photo: 青木司 ままごと「日本の大人」あいちトリエンナーレ2013  Photo: 羽鳥直志

Q.戯曲を書き終えるというところで作品を完成させたいということですか?

柴:これまでは稽古場で完成させていたところがあったのですが、いまは戯曲に劇がしっかり埋まったと思えた段階で完成にしたいなと思っています。先ほどのプログラムの話じゃないですが、演出に軸を置いて考えていくと、振り付けなどを間違えられた時点で作品が成立しなくなってしまうし、劇場が変わると完成したものがまた未完成に戻るということもある。だから、どんな不特定な要素が投げ込まれたとしても、必ず完成に導いてくれる戯曲を用意することが僕の理想です。言葉の方にもう一度プログラミングを戻したいというのが最近の考え方で、優れた戯曲のプログラムというのは毎回役者を良い状態できるはずだと思っています。例えば、街の公民館で地元のおばさんたちが劇をやりたいと思った時に、その人たちの能力に関係なく、声に出して戯曲を読めば日常とは違う時間や空間が生まれるものが究極の戯曲なんじゃないかと。

Q.誰が作っても美味しい料理ができる優れたレシピのようなものですね。

柴:そうですね。料理人というのはどんな料理でも美味しくできる人で、演劇に例えると、俳優という素材を使って料理する演出家だと思うんですね。一方で、「料理作家」という存在がいるのかはわかりませんが(笑)、どんなに料理ができない人でもこの通りに作ったらいつもと違うものができるというレシピを書ける人が料理作家=戯曲家なんです。どちらも料理であることには変わらないんですが、料理作家からしたらレシピを書いた段階で料理は完成していて、料理人の方は食材を見抜いた上でこう調理しようと決めた時点で完成するということです。俳優や空間を素材とすると、それらは固定することができないものなので、そこに完成を求めると難しくなってくるというのが最近の僕の考え方です。また、自分が演劇で感動するポイントは、「一人の人間の頭で考えたことや気づいたことからこれが生まれたのか」ということなんですね。そういう意味でも、もう一度「紙と言葉」というところに完成を持っていきたいんです。<インタビュー終わり>

もっと知りたい人は…

  • 鹿野 護 

    鹿野 護

    映像作家
    アートディレクター

    WOWアートディレクター。プログラミングを用いた映像表現に取り組み、コマーシャル映像からソフトウェア開発まで様々な分野のビジュアルデザインを手がける。これまでV&A博物館(英)やメゾン・エ・オブジェ(仏)への出展など、インスタレーション作品を制作。近年では地域に主軸をおいたプロジェクトにも積極的に参加している。ウェブサイト「未来派図画工作」主宰。著書「Quartz Composer Book」。

  • 柴 幸男 

    柴 幸男

    劇作家
    演出家

    1982年生まれ愛知県出身。「青年団」演出部所属。「急な坂スタジオ」レジデント・アーティスト。日本大学芸術学部在学中に『ドドミノ』で第2回仙台劇のまち戯曲賞を受賞。2010年『わが星』にて第54回岸田國士戯曲賞を受賞。何気ない日常の機微を丁寧にすくいとる戯曲と、ループやサンプリングなど演劇外の発想を持ち込んだ演出が特徴。全編歩き続ける芝居(『あゆみ』)、ラップによるミュージカル(『わが星』)、一人芝居をループさせて大家族を演じる(『反復かつ連続』)など、新たな視点から普遍的な世界を描く。あいちトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭への参加、岐阜県可児市での市民劇の演出、福島県いわき総合高校での演出など、全国各地にて精力的に活動している。