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鹿野 護

映像作家
アートディレクター

柴 幸男

劇作家
演出家

カンバセーションズには今回で2度目の登場となるアートディレクター、映像作家の鹿野護さん。前回の小説家・小川洋子さんに続き、今回鹿野さんがインタビュー相手として選んだのは、劇団「ままごと」の主宰として活動する劇作家、演出家の柴幸男さん。ループやサンプリングなど音楽的手法を演劇の世界に持ち込んだ独自の表現で注目を集め、2010年には『わが星』で第54回岸田國士戯曲賞を受賞するなど、目覚しい活動を続ける柴さんに、鹿野さんがいま聞きたいこととは果たして?
※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。13年12月24日発売の『QUOTATION』VOL.17の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

4. 無意識はコントロールできますか?

柴 幸男 

役者さんの能力は、いかに無意識を開放させて面白くさせられるかというところにあると思っているので、その能力を使わせないというのは損なんじゃないかと。

Q.最近、意識というものは人間の中の凄く小さな要素だなと思うことがあります。例えば、心臓やまばたきなどは意識して動かしているわけではないし、巨大な「私」という仕組みが無意識の中で形成をされているんだなと。そう考えると、意識の中にある知性というものはさらに小さくて、でもそれによって人は楽しくなったり幸せになったりするのが凄い。最近はそうした無意識と意識の関係が面白いなと思っているんですが、演劇には、人のコンディションや無意識の部分から生まれる偶然性が大きく影響しそうですよね。

柴:そうですね。以前はそうしたブレを作品に入れたくなかったんですが、結局無意識を開放させた方が面白いんですよね。役者さんの能力というのは、いかに無意識を開放させて面白くさせられるかというところにあると思っているので、その能力を使わせないというのは損なんじゃないかと。人が意識的にできることなんて少なくて、例えば、無意識でした振る舞いを意識的に再現するというのは不可能に近いと思うんです。無意識が意識的になることで情報量が減って劣化するんです。不自然な演技というのは、あるひとつの仕草などに意識的になってしまうことで、無意識に人がする振る舞いがカットされてしまうことで生まれます。だから、いかに無意識を開放できるか、その状態を発動できるところまで意識的にセットできるかが大切なんです。

Q.プログラミングの世界には、中央集権型と自律型の指示の与え方があるんですね。要はコップを持たせるために中央から糸を操るのか、コップを持ちなさいという指示だけをするかの違いなのですが、後者の方が高度なんです。無意識を発動させるというのはそちらに近いのかもしれないですね。

柴:そうですね。役者の演出は、まさにプログラムによって指示を与える感覚に近いと思います。不思議なことに、過度に命令を出して全員を操ろうとすると解像度が落ち、複雑さが減っていくんです。逆に抽象的なオーダーだけ与えて、自律させた方が複雑なことが起こる可能性が上がる。とはいえ、任せすぎると破綻をしてしまいます。ある演出家の方も言っていたのですが、その野生の部分と管理の部分のバランスを取るのが面白いところだと。いかに野生性を開放させた状態で管理をしながら、毎回同じところに連れていけるかということなんです。

ままごと「わが星」(2011年)  Photo: 青木司 ままごと「スイングバイ」(2010)  Photo: 青木司

Q.「野生」と「管理」のバランスの取り方は演出家によって違うのですか?

柴:そうですね。指示した以上のことはしてくれるなという演出家もいます。でも、俳優も人間なので、完全に考えるなというのは無理なんですよね。良い俳優さんというのは、こういう場面で人はこういう反応をするだろうということをイメージしながらプログラミングを自己形成して、演技の中で自然に出すことができる人だと思います。それができない人は台詞というプログラムしか処理ができない。例えば、ふたりが会話をしているシーンで、向こうから誰かが「おはよう!」と入ってきたら、普通はその存在を気にしますよね。でも、それができずに目の前の相手だけを見て会話を続ける人にはこちらでプログラムを書き足すわけです。演劇の台本にはすべてのプログラムは書き切れないから、俳優さんがどれだけのプログラムを持っているかが重要で、良い俳優さんは多様なプログラムの中から最も面白くできるものを選択して演技に取り込んでいけるんです。

Q.作家のプログラムと俳優のプログラムがミックスして劇が展開していくのはとても面白いですね。

もっと知りたい人は…

  • 鹿野 護 

    鹿野 護

    映像作家
    アートディレクター

    WOWアートディレクター。プログラミングを用いた映像表現に取り組み、コマーシャル映像からソフトウェア開発まで様々な分野のビジュアルデザインを手がける。これまでV&A博物館(英)やメゾン・エ・オブジェ(仏)への出展など、インスタレーション作品を制作。近年では地域に主軸をおいたプロジェクトにも積極的に参加している。ウェブサイト「未来派図画工作」主宰。著書「Quartz Composer Book」。

  • 柴 幸男 

    柴 幸男

    劇作家
    演出家

    1982年生まれ愛知県出身。「青年団」演出部所属。「急な坂スタジオ」レジデント・アーティスト。日本大学芸術学部在学中に『ドドミノ』で第2回仙台劇のまち戯曲賞を受賞。2010年『わが星』にて第54回岸田國士戯曲賞を受賞。何気ない日常の機微を丁寧にすくいとる戯曲と、ループやサンプリングなど演劇外の発想を持ち込んだ演出が特徴。全編歩き続ける芝居(『あゆみ』)、ラップによるミュージカル(『わが星』)、一人芝居をループさせて大家族を演じる(『反復かつ連続』)など、新たな視点から普遍的な世界を描く。あいちトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭への参加、岐阜県可児市での市民劇の演出、福島県いわき総合高校での演出など、全国各地にて精力的に活動している。