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鹿野 護

映像作家
アートディレクター

柴 幸男

劇作家
演出家

カンバセーションズには今回で2度目の登場となるアートディレクター、映像作家の鹿野護さん。前回の小説家・小川洋子さんに続き、今回鹿野さんがインタビュー相手として選んだのは、劇団「ままごと」の主宰として活動する劇作家、演出家の柴幸男さん。ループやサンプリングなど音楽的手法を演劇の世界に持ち込んだ独自の表現で注目を集め、2010年には『わが星』で第54回岸田國士戯曲賞を受賞するなど、目覚しい活動を続ける柴さんに、鹿野さんがいま聞きたいこととは果たして?
※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。13年12月24日発売の『QUOTATION』VOL.17の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

3. なぜ自分の道理が必要なのですか?

柴 幸男 

 
 

正解のためのヒントや答えを外からインプットすることで問題を解決しようとする考え方だと辛くなっていくと思うんです。

 

Q.前回お会いした時に、演劇は死と凄く関係しているということを仰っていましたね。時間を考えるということは、死を意識するということでもあるということですか?

柴:そう思います。自分の作品に限らず、演劇というのは誰かを死なせたり、何かをなくならせてばかりだなと思ったことがあるんです。でも、いまの世の中的に、「100年後にはみんな死んでいますよね」とか「宇宙はいつかなくなりますよね」という話をしてもどうなのかという気がしています。これまでは星が生まれて死ぬまでとか、100年や200年という一人の人間では生ききれない時間を演劇が作ることで、自分が見届けることができない壮大な時間を体感したような錯覚が得られて、それを面白く感じてくれていたところがあったと思うんです。でも、数人の人間の間の狭い時間の物語で、何百何千の人たちを感動させることも劇の醍醐味なんじゃないかと。劇の時間を膨らませてお客さんを包み込んだり、円環の時間を感じさせるような作品を作るではなく、「いま」という時間がこれから5年後、10年後に向かって一直線に流れていくということを信じられるような物語が書きたいと思っているんです。

 
 

 

Q.それはすごく健全なことですよね。妻が農業をしているので、よく畑の話を聞くのですが、1ミリほどの小さな種が数ヶ月後に大きくなる。当たり前の事ですが、そうした話を聞くとポジティブにならざるを得ない(笑)。自然の中では脈々とそうした営みが繰り返されているのに、普段はそこに全然意識を向けずに、理屈や知識ばかりに捕われていることが、とても遠回りをしているんじゃないかと思うことがあるんです。もっとダイレクトに人生を楽しむ方法があるんじゃないかと(笑)。

柴:小豆島で滞在制作をしていると、島のおじさんやおばさんたちは、生活するということを満喫しているんですよね。それこそ島では時間の流れ方が全然違っていて、僕らが滞在した場所は外食できるお店もほとんどなかったので、自分たちで一日三食作るんですが、食事をするということが一大行事で、それができないと一日が成立しなくなる。都会では何も意識せずに15分くらいで済ませていた食事も、人に作ってもらったものをお金を出して得ていたんだということを実感するんです。生活のための色んなことに時間がかかるし、お金でショートカットすることができないから、東京にいる時に一日でやろうとしていたことが島では半分くらいしかできない。でも、自分の許容量がわかると逆にあせらなくなるし、身の丈を知るというか、近道がないということを知ることができた。島での生活を通して感覚が変わったところがあったんですが、そういうことを考える時間というのは凄く大切だなと思います。

 
 

鹿野 護「どうぶつと木」(OGATA,Incとの共同制作) 鹿野 護「光線のワルツ」 鹿野 護「Interpersonal」

 

Q.そうですよね。すでに誰かが調べて書いた本などを読んで「知る」ことと、ダイレクトに体験して「わかる」ことは全然違っていて、その「わかる」という感覚が凄く重要だなと。外部から情報をインプットすればするほど、知識は蓄積されるけれども、巨大な「分からない」ことに近づいていく感覚があります。そうではない感覚を得るために、人は身体を動かしてスポーツをしたり、映画や演劇を見たりするのかなと。

柴:ある道理を人から聞いたり、本から知るということも必要だとは思いますが、それはわからないことや知らないことに気づくだけなんですよね。自分が持っていない正解のためのヒントや答えを外からインプットすることで問題を解決しようとする考え方だと辛くなっていくと思うんです。それよりも自分なりの道理を持てた方がいいし、そのためには、いかに自分の中に潜り込んで、気づきを引っ張ってこれるかだと最近は思っています。

もっと知りたい人は…

  • 鹿野 護 

    鹿野 護

    映像作家
    アートディレクター

    WOWアートディレクター。プログラミングを用いた映像表現に取り組み、コマーシャル映像からソフトウェア開発まで様々な分野のビジュアルデザインを手がける。これまでV&A博物館(英)やメゾン・エ・オブジェ(仏)への出展など、インスタレーション作品を制作。近年では地域に主軸をおいたプロジェクトにも積極的に参加している。ウェブサイト「未来派図画工作」主宰。著書「Quartz Composer Book」。

  • 柴 幸男 

    柴 幸男

    劇作家
    演出家

    1982年生まれ愛知県出身。「青年団」演出部所属。「急な坂スタジオ」レジデント・アーティスト。日本大学芸術学部在学中に『ドドミノ』で第2回仙台劇のまち戯曲賞を受賞。2010年『わが星』にて第54回岸田國士戯曲賞を受賞。何気ない日常の機微を丁寧にすくいとる戯曲と、ループやサンプリングなど演劇外の発想を持ち込んだ演出が特徴。全編歩き続ける芝居(『あゆみ』)、ラップによるミュージカル(『わが星』)、一人芝居をループさせて大家族を演じる(『反復かつ連続』)など、新たな視点から普遍的な世界を描く。あいちトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭への参加、岐阜県可児市での市民劇の演出、福島県いわき総合高校での演出など、全国各地にて精力的に活動している。