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鹿野 護

映像作家
アートディレクター

小川洋子

小説家

今回インタビュアーになる鹿野 護さんは、ヴィジュアルデザインスタジオWOWに所属し、さまざまな映像やインターフェースデザインを手がける傍ら、サイト「未来派図画工作」や展覧会などにおいて自らの作品を発表しているトップクリエイター。そんな彼がインタビューするのは、91年に『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞し、その後も『博士の愛した数式』や『薬指の標本』など数々のヒット作を世に送り出し、つい先日12年ぶりとなる書き下ろし長編小説『ことり』を発表した小川洋子さん。「映像」「言葉」「物語」「科学」「死」などさまざまなキーワードが飛び出す非常に刺激的な対話になりました。

インタビューを終えて

鹿野 護 

物語を次々と作り出していく小説家という仕事に対して、あらためて畏敬の念を抱きました。物語を支配せず、ただ居合わせているだけという謙虚さこそが、小説の豊かな世界を作り出しているのだろうと思わずにはいられません。

「インタビューさせていただいてから、『私は何を見届けられるのか?』『私は何に見届けられるのか?』という気持ちに包まれることがあります。それは長い時間を意識せざるを得ない、曖昧ではありながらも切実な心象です。あらゆる科学や芸術、哲学、文学。それぞれの分野はかけ離れていて、過程も全く異なるものだったとしても、究極的には、私とは何か? 生きるとは何であるか、という問いにつながっていくと思うことがあります。小川さんがおっしゃられている『見届ける』という言葉は、そうした問いを日常生活で携帯するためのキーワードではないかと感じました。
もう二度と会うことができない。そんな切ない状況が、常に私たちを取り囲んでいる。足にまとわりついてくる子供達とはしゃげるのはいつまでだろう、というのは気づきやすいのだけれど、何気ない日常の光景すら、一期一会の連続であることには、なかなか気づきにくい。もし気づける感性を持っていたら、あまりの喪失感に絶望するだろうか、それともすべてのものが鮮やかに見えてくるだろうか。そんな思いを浮かべながら、自分の平凡な感性を奮い立たせるように、毎日の出来事に耳をすまして、目を凝らしてみています。
どんな人にも自分と同じように物語がある。そう考えると『あの人は幸せだっただろうか?』と考えることは、とても無粋なことなのかもしれません。富や名声といった分かりやすい表面の奥、日常の中のさりげない繰り返しの中に物語は隠れていて、そのささやかな時間の流れの中にこそ、幸福というものが編み込まれているように思うからです。それは小説の中の物語でも、人生の中の物語でも同じだと思います。
小川さんにお話を伺うことで、そうした物語を次々と作り出していく小説家という仕事に対して、あらためて畏敬の念を抱きました。そしてその物語を支配せず、ただ物語に居合わせているだけとおっしゃられる謙虚さこそが、小説の中の豊かな世界を作り出しているのだろうと思わずにはいられません。」

インフォメーション

書き下ろし長編小説としては12年ぶりとなる小川洋子さんの新刊『ことり』は朝日新聞出版より発売中。

もっと知りたい人は…

  • 鹿野 護 

    鹿野 護

    映像作家
    アートディレクター

    WOWアートディレクター。プログラミングを用いた映像表現に取り組み、コマーシャル映像からソフトウェア開発まで様々な分野のビジュアルデザインを手がける。これまでV&A博物館(英)やメゾン・エ・オブジェ(仏)への出展など、インスタレーション作品を制作。近年では地域に主軸をおいたプロジェクトにも積極的に参加している。ウェブサイト「未来派図画工作」主宰。著書「Quartz Composer Book」。

  • 小川洋子 

    小川洋子

    小説家

    1962年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で本屋大賞と読売文学賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。作品に『完璧な病室』『アンネ・フランクの記憶』『沈黙博物館』『貴婦人Aの蘇生』『犬のしっぽを撫でながら』『物語の役割』『科学の扉をノックする』『原稿零枚日記』『人質の朗読会』『最果てアーケード』など多数。