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兼松佳宏

「greenz.jp」編集長

中原慎一郎

ランドスケーププロダクツ代表

今回インタビュアーとして登場するのは、「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア」を紹介するウェブマガジン「greenz.jp」編集長の兼松佳宏さん。先日出版された書籍「ソーシャルデザイン」でも大きな注目を集めた兼松さんがインタビュー相手として選んでくれたのは、インテリアショップ「Playmountain」や、喫茶店「Tas Yard」などを運営し、住宅や店舗、オフィスなどのデザインも手がける「ランドスケーププロダクツ」の代表、中原慎一郎さん。近年は故郷・鹿児島でも精力的に活動し、異色の鹿児島ガイド本「ぼくの鹿児島案内」などの出版も手がけている中原さんに、兼松さんが聞いてみたいこととは?

4. 価値とお金の関係をどう考えていますか?

中原慎一郎 

アメリカで展示会をした時に、こっちから上代を言ったら怒られたんです。要は自分で責任を持つということで、自分たちの経済力で乗り越えられるギリギリのところで、リスクを背負って実践してみるというのは大事ですよね。

Q. 「もともとあったものを再編集する」という話が出ましたが、そういう意味でも鹿児島のガイドブックは素晴らしかったですね。

中原: :この本は、ぼくらの趣旨を理解してくれる人たちの中からスポンサーを募ったんですね。少人数で作っている本なので、そんなに大きな出費はないのですが、印刷費や諸経費をどのくらいずつ払えばペイできるのかということを理解してもらった上で、この本を大切だと思ってくれる人たちにスポンサードしてもらうという献金的な考え方ですね。だから「自分も仲間になりたい」と思ってもらえるかどうかが大切なので、関わってくれる人たちがみんな主体者になれるようにしたかったんです。もちろん利益が出るということも大切で、たとえば、この本は卸価格を低く設定しているんですね。そうすると利益が1割の本に比べて利益が残るから、みんな一生懸命売ったり仕入れたりしてくれる。また、スポンサーになってくれた人たちには、赤字が黒字に転じてからはその利益を還元していくという仕組みを目指しています。出版して終わりじゃなくて、折り返し地点からまた面白いことが始まるみたいな感覚ですね。

(左)岡本 仁「ぼくの鹿児島案内」、(右)岡本 仁「続・ぼくの鹿児島案内」(ともにランドスケーププロダクツ)

Q.それこそ資本主義の次のステージかもしれませんね。最近だと、クラウドファンディングのように、あるプロジェクトを応援したい人から先にお金を集めてものを作るというやり方もありますし、多くの人には価値を感じられなくても、価値がわかる100人がお金を支払うことで、特定の生産者を支えることもできるかもしれない。一方で、いまは富裕層だけが良いものを買うことができ、お金が潤沢にない人たちはそういうものに触れる機会すらあまりないという現実もあります。言うなら「目利き」の格差が広がっているというか。僕自身「今は買えずとも、いつか手に入れたい!」という思いで、いろんなお店に出かけたりしますが、中原さんは、若い人たちでもちゃんと手のかかったものに接したり、気に入ったものを買えるようになるためにはどうすればいいと思いますか?

中原:少しでも多くの人が伝える能力を持つということが重要だと思います。例えば、美味しいものを美味しく伝えられる人もいれば、ただ「美味しかった」としか言えない人もいますよね。何度でも同じ説明ができて、それを食べたくさせるような能力というのはあって、それを面と向かって人間的な雰囲気も含めて伝えられる人もいれば、普段はおとなしくも文章で表現できる人もいる。そういうことが上手に伝えられる人とモノが良いタイミングで出会うことが幸せだと思うし、僕自身もそうありたいなと思っています。

Q.価値を発見するためのストーリー作りが大切なんですね。価値を見つけることができるようになると、自分自身の価値も高まっていくのかもしれません。いま感じているのは、価値観が相対化すればするほど、極端な話、定価というものが揺らいでいくのではないか? ということです。例えば、スゴい技を持ったサーファーが作ったお米だったら、サーファーの人たちからしたら「どうせならあの人からお米を買おう」と思うかもしれないし、逆にサーフィンをやっていない人からしたら「?」だったりする。価格とは違うところに価値が生まれているのも面白い現象だなと思います。

中原:たしかにそうですね。そういえば以前にアメリカで展示会をした時に、こっちから上代を言ったら怒られたんですね。「お前はオレが家賃をいくら払っているのか知っているのか?」と。「この通りとあの通りでは家賃が違っていて、背負っているリスクも違うんだから、上代は自分たちで決める」と言うんです。こっちが買い取るんだから、後は好きにさせろというわけですよね。そうしてくれる方がこっちとしても気が楽だし、もちろん限度というのはあるんでしょうけど、要は自分で責任を持つということですよね。自分たちの経済力で乗り越えられるギリギリのところで、リスクを背負って実践してみるというのは大事なことですよね。<続く>

インフォメーション

中原さん率いるランドスケーププロダクツがアート/プロダクトディレクションを担当した香りのブランド「M tree」が発売中。

もっと知りたい人は…

  • 兼松佳宏 

    兼松佳宏

    「greenz.jp」編集長

    1979年秋田生まれの勉強家兼コンテンツディレクター。「greenz.jp」編集長。趣味は勉強すること、対話すること、プロトタイプすること。ひっくるめて「これからの◯◯」を創造すること。新卒のウェブデザイナーとして制作プロダクションに所属しながら、プロボノでのNPOのウェブサイト構築支援に関わる。アートディレクターとしてCSRコンサルティング企業に転職後、2006年フリーランスのクリエイティブディレクターとして独立。ウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わる。2008年、株式会社ビオピオ設立し、取締役に就任(2011年に退任)。2010年12月よりgreenz.jp編集長。NPO法人グリーンズ理事。著書に『ソーシャルデザイン 社会をつくるグッドアイデア集』(グリーンズ編)、『クリエイティブ・コミュニティ・デザイン 関わり、つくり、巻き込もう』(共著)など。

  • 中原慎一郎 

    中原慎一郎

    ランドスケーププロダクツ代表

    1971年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。オリジナル家具等を扱う「Playmountain」、カフェ「Tas Yard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、子供のためのレーベル「CHIGO」を展開。また住宅/店舗のデザイン業務、イベントプロデュース/ディレクションを手がける。2012年より「Shibuya Hikarie ShinQs」内のイベントスペース「Craft Bureau」のディレクターに就任。