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伊藤直樹

クリエイティブ・ディレクター
PARTY

為末 大

爲末大学

今回カンバセーションズにインタビュアーとして参加してくれるのは、デジタルメディアを中心にさまざまなプロジェクトを手がけ、日本を代表するクリエイティブ・ディレクターのひとりとして、国内外から注目を集めている伊藤直樹さん。「身体性」をクリエーションの重要なテーマとして掲げてきた伊藤さんが、今回インタビュー相手に選んだのは、400mハードルで3度のオリンピック出場経験を持ち、今年6月に惜しまれつつも現役を引退した為末大さん。引退後もさまざまな場での講演やイベント、ツイッターでの発言などで話題を集めている為末さんに、伊藤さんが聞きたいこととは?

2. 大衆とはどう向き合っているのですか?

為末 大 

ある意味、大衆に麻痺していくとも言えるのかもしれないけど、慣れていくことで怖さや苛立ちが薄くなっていった感覚が実感としてありました。

Q.為末さんには、とにかくまずは試してみて、そこでの反応を見ながら対話を重ねていくという姿勢が常にあるように感じます。 我々も表現をしていると、ネットなどで色々な反応があります。表現というのは自分の何かを晒すことでもあって、そこで得たレスポンスを次に活かしていくわけですが、ネット全盛の時代において、自分の表現をパブリックにしていくということには、どう向き合っていますか?

為末:例えばツイッターにしても、先ほどの高校時代の話と同じで、とりあえず自分の意見やアイデアを書いてみて、そこに矛盾があるのか、どれくらい世間とのズレがあるのかということを見ているところがあるんですよね。ツイッターに自分の考えを書くのは、そこに反応があるからで、その反応に対して自分が触発されることをどこかで期待しているのだと思います。半匿名的なネット特有の反応に最初はカチンと来たこともありましたが、それにも徐々に慣れて、いまはたかがツイッター、されどツイッターと思ってやっているところがありますね。

Q.オリンピックなどで大衆やテレビの前に自分を晒してきたことで、そういうものに対して人一倍耐性がついているというのもあるのですか?

為末:鍛えられる能力ではあるんだなということはわかりましたね。ある意味、大衆に麻痺していくとも言えるのかもしれないけど、慣れていくことで怖さや苛立ちが薄くなっていった感覚が実感としてありました。慣れるというのはツイッターなどにしても同じで、ツイッターで自分の考えを表現することが習慣になってくると、別の場所で発言する時でも、思っていることを遠慮せずに話せるようになっていったところがありましたね。

Q.インターネットの世界では、「あっち側」「こっち側」という表現をよく使うんですね。為末さんはサンディエゴで生活していた時期がありましたが、その頃の為末さんのツイッターを読んでいて、サンディエゴという「あっち側」から日本を見つめて、日本人にメッセージを送ってくれている感じがしました。日本の反対側で、天候も環境も全く違う環境で自分と対峙していくなかで、客観的に見えてきたことなどはありましたか?。

為末:外から日本を見るという経験は初めてだったのですが、その中でジワジワと見え方が変わっていく感覚がありました。僕はいつも「一度冷めてみる」ということを結構大事にしているんですね。陸上をやっている時、最初は「たかが陸上競技だろ」と言われるのが嫌いだったのですが、実際にその視点に立ってみると全然見え方が変わるんです。自分の人生において、「たかが」と「されど」とのバランスというのは常に重要なんです。そういう意味で、一度引いて日本を見れたことは良いクールダウンになったし、それによってアメリカのシンプルさや日本の複雑さなど色々見えてきたものがありましたね。

Q.日本に戻ってきた現在は、サンディエゴにいた時とはモードが変わっているのですか?

為末:サンディエゴにいた時は考える時間がたっぷりあったのですが、日本ではあまり暇がないんです(笑)。だから、頭の中で練りに練ったものを出すというよりは、半分くらいの状態で出して人の反応を見るという感じになっているのかもしれません。そういう意味では、サンディエゴにいた時とは少し変わってきているのかなと思います。<続く>

インフォメーション

為末さんによる引退後2冊目となる書籍『走りながら考える』が11月26日にダイヤモンド社より出版される。伊藤直樹さんが所属するPARTYによる3Dスキャナーと3Dプリンターを使い、10年代の家族の肖像をフィギュアという形で残す展覧会「OMOTE 3D SHASHIN KAN」が、11月24日から2013年1月14日まで表参道GYREで開催される。

もっと知りたい人は…

  • 伊藤直樹 

    伊藤直樹

    クリエイティブ・ディレクター
    PARTY

    静岡県生まれ。ADK、GT、ワイデン+ケネディトウキョウ代表を経て、2011年クリエイティブラボ「PARTY」を設立。チーフクリエイティブオフィサーを務める。京都造形芸術大学教授。これまでにナイキ、グーグル、ソニーなど企業のクリエイティブディレクションを手がける。「経験の記憶」をよりどころにした「身体性」や「体験」を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。経産省「クールジャパン」(2011)クリエイティブディレクター。「クールジャパン官民有識者会議」メンバー(2011,2012)。

  • 為末 大 

    為末 大

    爲末大学

    「侍ハードラー」の異名で知られ、未だに破られていない男子400mハードルの日本記録保持者(2001年エドモントン世界選手権 47秒89)。2001年エドモントン世界選手権で、男子400mハードル日本人初となる銅メダルを獲得。さらに、2005年ヘルシンキ世界選手権で初めて日本人が世界大会トラック種目で2度メダルを獲得するという快挙を達成。2012年6月の日本選手権を最後に25年間の現役生活に終止符を打つ。引退後は、為末大学の開校、執筆、コメンテーターなど多岐にわたり活動を展開。