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問いから学ぶ

山口情報芸術センター[YCAM] エデュケーター・菅沼 聖さんが、
小学生・YCAM KIDSに聞く、
「子どもの時期にしかできないこと」

インタビュアーを担当する菅沼 聖さんは、YCAMに2009年から勤務し、主に教育普及プログラムを担当している主任エデュケーター。ワークショップなどを通して、山口市の子どもたちとの関わりも強い菅沼さんがインタビュー相手に指名したのは、YCAMに通う地元小学校の3人の子どもたち。電子工作を得意とし、YCAMのスタッフのサポートなども受け、大人顔負けの作品をつくるカワムラくん、数々のコマ撮りムービー作品をYouTubeに投稿しているキゴシくん、YCAMで開催されたメディア公園「コロガルパビリオン」に通い、運営の手伝いなどもしていたというリキ君の3人と一緒に、さまざまなテーマについて考えてみました。

菅沼 聖
YCAMにはどんな思い出がありますか?

今日はみんなに色々な話を聞きたくて、集まってもらいました。まずは、それぞれの自己紹介から始めましょう。僕はYCAMで働いている菅沼 聖です。愛知県出身の32歳で、7年前からここに来ています。

リキ:チョウチンアンコウがトレードマークのリキ。10歳で、5年生やけん。自分が通っている小学校はドッジボールが強くて、ほぼ毎年全国大会行きよるんよ。まだ1位になったことはなくて、最高は8位とかかな。面白かったのは、山梨県にツナマヨネーズっていう名前の代表チームがあったこと!

カワムラ:カワムラです。前にYCAMのワークショップを見て来たら、ラボスタッフの安藤さんが色んなことを教えてくれて、それから度々ここに来るようになりました。特技は電子工作です。前に図書室で読んだ「キョーレツ科学者・フラニー」という本が面白くて、本当にそんなことができるのかと思い、自分でもつくり始めました。

キゴシ:キゴシと申します。小学校5年生、10歳です。動画が好きで、「キゴシムービー」とカタカナかローマ字で検索するとYouTubeチャンネルが出てきます。よろしくお願いします!

学年でいうと、キゴシ君とリキ君が5年生で、カワムラ君が6年生だよね。みんなと僕はここで知り合ったわけだけど、それぞれのYCAMとの思い出について教えてくれるかな。

カワムラ:5月にここでサステナブルデザイン国際会議というのがあった時に、自分がつくったものを発表して、色んな人と知り合えたこと。あと、色んなものをつくるための情報や、ファブラボという自由にものをつくれる工房のことなどを知れたりすることです。

2014年にYCAMで「地域に潜るアジア」という展覧会をやった時に、カワムラくんは「gonzocam(ゴンゾカム)」という動物をインスタントカメラで自動撮影する作品をずっと見ていて、YCAMのスタッフのサポートで自分でもつくってみたんだよね。リキはやっぱり「コロガルパビリオン」かな? ほぼ毎日遊びに来てくれていたよね。

リキ:ドッジボールがあったから、最後の方はあまり時間なかったけどね。

「コロガルパビリオン」の掃除とかを色々手伝ってくれたから凄く助かった。やけど虫が現れた時も対応してくれたよね。

リキ:そういうのが現れたら徹底的に調べる派なんよ。どうやって対策するかっていうことを考えてないとあぶない。YCAMにはそれからも色んな行事で来てるけど、いつか動物園をやってほしい。ライオンとまでは言わないけど、小動物は連れてきてほしい。うちでも亀とか犬とか結構色々飼ってて、いまはウズラの卵を育てようとして…

その話はまた後にしようか(笑)。キゴシくんはどう?

キゴシ:YCAMの10周年(2013年)の時の「とくいの銀行」というイベントで、美術家の深澤(孝史)さんと知り合って、そこから美術が楽しくなって、YCAMとの関わりも深くなったって感じですかね。YouTubeに動画を上げる方法を教えてくれたのも深澤さんでした。

菅沼 聖
いまやりたいことは何ですか?

みんなの学校生活というのはどうですか? リキはメチャクチャ勉強できるんでしょ?

リキ:成績は上の方だけど、授業ではノートを取ってなかったりするから、そんなに頭良さそうには見えんと思う。

カワムラ:僕はその辺にいるただの影の薄い子かな。

そうなの? 電子工作とかの授業はなさそうだよね。

カワムラ:ないですね。理科の先生はハンダゴテとかを持ってるけど、理科クラブとかがないのがつらいです。だから、YCAMとか、ボランティアの講師の人が教えてくれる発明クラブとかに行っています。

キゴシくんはどうですか?

キゴシ:学校ではいつも大はしゃぎで、昨日もプリントとか面倒くさいなーって言ったら先生に怒られて、20分くらい追放されたけど、その10分後には大笑いしていました。凄くうるさいんですよ、学校では。

学校ではカメラを回したりすることはできないでしょ?

キゴシ:できないし、学校を映してもあまり面白くない。でも、カメラ片手に遊びに行くと凄く楽しい。いつか実写版ドラマを撮りたいから、それは学校でやっても楽しそうだけど、普段の様子を撮っても、単に学校だなってくらいしか思わないから、あまり面白くないな。

次の質問いくね。いまみんながやりたいことは何ですか?

リキ:学校に生き物をもっと増やしたい。だって動物がいる方が賑やかやない。幼稚園の時は鳥がいたけど、小学校は魚くらいで、ウサギもいないんよ。だからYCAMに動物ふれあいコーナーをつくって、ここで働きたい!

じゃあ、動物を入れる時はリキを呼ぼうかな(笑)。

リキ:動物アレルギーとかも徹底的に調べるよ。まず図書館で本を借りて、家に帰って読んで、わからんことはパソコンで調べる。インターネットをやり過ぎると依存症になるから嫌やけん。それをノートにまとめて計画を立てて、必要なものとか、やる順序とかを書き出すんよ。それで、動物コーナーができたら、動物園つくりましたって動画をアップして。

キゴシ:じゃあ俺が動画やるわ。

この3人で色んなことができそうだね。カワムラくんがやりたいことは?

カワムラ:ここで働くためにはどうすればいいかを考える。スタッフの安藤さんは僕にとって凄く良いお手本で頼りにしているので、できれば安藤さんみたいになりたい。YCAMで働いて、この3人で何かやりたいな。

キゴシ:僕はYCAMを使ってオリジナル動画をつくりたい。YCAMの紹介動画とかドキュメンタリー動画とか、YCAMの人たちが出演するドラマとか、何でもいいからここで動画をつくってみたい!

菅沼 聖
大人と子どもの違いは分かりますか?

みんな自分がやりたいことに対して強い思いがあるんだね。じゃあ、それぞれがやりたいことは、自分以外だと誰のためになりそうかな?

リキ:小学3年生以下の子どもたち。4年生以上になると、カードとかゲームをするようになって、動物とか興味なくなるやん。動物と触れ合えることがどれだけ大きいかってことを、もっと知ってもらいたい。動物と触れ合っていると悲しい時でも気分が上がったりするし、僕も低学年の時に動物園に行って、この世には人間以外にも色んな動物がいるんだなぁて思ったからね。

カワムラ:僕は、子どもだけでも大人みたいなことができるってことを大人たちに証明したい。大人は、子どもは無力だと思っているように感じるから。

リキ:大人は子どもを見下しているような気がする。でも、俺らだけでも地球破滅させるくらいできるんよ!

そうなのか(笑)。キゴシくんはどう?

キゴシ:世界中のYouTubeユーザーです。子どもでもこういうことができるんだってことを発信したい。

そもそも子どもと大人って何が違うのかな?

リキ:僕はまだ10年しか生きてないけど、大人は30年とか生きているから、知識はあるんよ。でも、こっちだってある程度の知識で色々できるんだってことを大人にわからせたい。

例えば、僕はウズラのことに関してはリキよりも全然知識がないんだよね。じゃあ、大人であるってことは一体どういうことなんだろう?

キゴシ:好奇心や表現力がなくなってきたら大人!

僕は好奇心あるよ。

キゴシ:だから、スガさんは大人の中の子ども。そういう人もいる。

リキ:僕は死ぬよりも大人になることが怖い。

カワムラ:いつかはみんな大人になれるけど、大人から子どもに逆戻りすることはできない。子どもの時期にしかできないことがあるんだなって思う。

リキ:体が小さいと色々便利だよ。狭いところにも入れるし。子どもは楽しいよ。

YCAMオリジナルワークショップ「感覚アスレチック」

僕も子どもの心を忘れないという意味では、いつまでも子どもでいたいし、子どもの考え方というのは世の中にとって非常に役立つと思っているんだよね。さっきリキが、子どもの方が知識がないと言ったけど、知識がなくても解決できる問題はあるし、逆に知識だけで解ける問題というのは少ないと思うのね。そこで、最後にみんなの頭を使って、世の中のこととか、山口の身の回りのこととかをどう変えられるのかということを話し合ってみたいと思います。

菅沼 聖
どうすれば「陰口」をなくせますか?

このYCAM知恵袋という掲示板は「地域に潜るアジア」展の時に使ったもので、山口の人たちや展覧会に来た人たちが困っていること、なんとかしてほしいと思っていることを書いてもらったものです。今日はこの中のいくつかの問題について、みんなで考えてほしいんです。まずは、山口市の主婦38歳の方から。「大殿(おおどの)地区にあるたくさんの空き家で何かできないか? 家がとても寂しそうに見えます」。

リキ:空き家は、窓ガラスが割れていたりして結構怖いから、お化け屋敷みたいなのをつくったらいいと思う。それが3つも4つもあって、コースがたくさんあったら楽しい。

カワムラ:ファブラボみたいに自由に何かがつくれる活動の場として、レーザーカッターの家とかをつくる。

リキ:スパイ屋敷みたいにレーザーを張り巡らせて、サングラスをかけてそれに当たらないようにしながら通っていくスパイゲームがやりたい。それで、宝物みたいに景品を用意しておく。例えば、5、6年生の男の子だったら「デュエマ(デュエル・マスターズ)」のカードとかね。ものを手に入れるためには、困難が必要なんよ。

キゴシ:キゴシムービーのショップにして、USBを税込み216円で売る。レンタルは10円くらい。

リキ:100円くらいにしようや。俺は「デュエマ」のカードを売ったりしたい。俺らでホームページつくって、「キゴシのレンタル屋さん」とか、「リキのカード屋さん」とかをやる。俺、メッチャ在庫あるんよ。注文があれば、山口市限定なら届けられるよ。自由度があれば、ほとんど何でもできるんやけど、子どもが通販サイトやっちゃいけんとかがあるかもね。

じゃあ次の質問いきます。11歳の女の子から「陰口が多いのが嫌です」。

リキ:「いじめは犯罪です」っていう動画をつくって、「陰口もいじめだと思われるので犯罪になります」と知らせておいたら、いじめがなくなる可能性もある。

キゴシ:パソコンで、「バカ」とか「アホ」とか悪いキーワードを打つと、「いじめと判断されたため開けません」とか、「あなたは悪いことをしたとみなされたため、1ヶ月このアカウントが使えなくなります」と表示されるようにする。

リキ:そういう言葉を使うと、パソコンにウイルスが侵入するようにするとか。

キゴシ:マイクロソフトのOutlookにそういう機能をぜひ入れて下さいって提案しよう。

リキ:「陰口が多い」っていう文字数の少ない問題だけど、話してる内容は大きいね。小さいことでも、真剣に話したら色んなことが出てくる。

カワムラ:見た感じバイト数が少なくて簡単そうな文章でも、ファイルを開くと実は重要なことが書いてあった、みたいな感じ。

それだけ大事な問題ってことだよね。こういうことは、子どもも大人もみんな考えているから、アイデアもいっぱい出てくるんだね。今日は、みんなのことをよく知れて良かったです。やっぱりみんなと話していて一番考えたことは、子どもと大人って何が違うの? ってこと。みんなもこれから大人と呼ばれる存在になっていくけど、そこでどんな変化があるのか非常に楽しみです。あと、みんながYCAMで働きたいという話も面白かった(笑)。他に、チャレンジしたり、実験ができる場所が少ないということだよね。

リキ:こっちもやりたいことはあるからね。いま、ここ(スタジオB)何もやってないやん。やってない時は、例えばカード屋さんみたいなスペースをつくったりしたいから開放してほしい。

カワムラ:YCAMの電子部品とかを使いまくって作品をつくって展示もしたい。YCAM全体を展示スペースにして、ものづくりの面白さとか大切さを知ってもらえるといいと思う。

リキ:やりたいことはあっても実行できないっていうのが僕らの難点なんよ。先生がいなくても自分たちで調べることはできるけど、機材を揃える人はほしい。場所と機材の確保さえしてくれたら。

大人はそれだけやってくれればいいと(笑)。YCAMの場をつくっていく際には、いま出たようなみんなの意見ももっと取り入れられるといいなと思っています。今日はどうもありがとう。