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「問い」をカタチにするインタビューメディア

発想とカタチ

クリエイティブディレクター・松倉早星さんが、
グラフィックデザイナー・三重野 龍さんに聞く、
「デザインと身体表現の関係性」

QONVERSATIONS TRIP KYOTO Day3では、クリエイティブユニットovaqe inc.の代表として、広告や企業のブランディング、メディア運営など多角的な活動を展開している松倉早星さんが、新進気鋭のグラフィックデザイナーとして注目を集めている三重野 龍さんににインタビューを行いました。分野は違えど、ともに京都の大学を卒業し、クリエイティブシーンの一端を担う活動を続けているふたりが、京都で「つくる」ことをテーマに、語り合ってくれました。

松倉早星
大学時代は何をしていましたか?

京都では、最近若いクリエイターの動きがあまり目立たないように感じていたんですが、そんなところに三重野くんをはじめ、最近美大を卒業した世代が出てきた印象があったんです。三重野くんのことは、たまたま見たいくつかの気になるグラフィックがことごとく三重野くんのデザインだということがわかって、どんな人なんだろうと興味を持つようになりました。実際に会ってみると、思いの外ガタイが良いヤツが出てきて、その筋肉何なん?と(笑)。特に京都精華大を最近出た人たちは、三重野くんのようにグラフィックの仕事をしながら、並行して身体表現をやっているような人が多く、個性が爆発しまくっているなと感じていて、在学中に一体何があったんだろうと凄く気になっていたんです。

三重野:大学では普通にグラフィックデザインを学んでいて、課題などをやっていましたが、並行して絵も描いていて、週末に大阪のクラブでライブペインティングをやらせてもらったりもしていましたね。当時は、デザインをやっていこうという意識も特になく、それ以外にも自分で何かつくるということはしてなかったです。デザインをやろうと決めたのは4回生の11月くらいだったんですが、在学中にアニメ監督の本をつくらせてもらう機会があって、それが大きかったのかもしれません。ただ、どちらかと言うと、あの人はカッコ悪いからそうはならないようにしようという感じで、ネガティブな消去法で逃げ続けてきた結果、いまに至っているという感じです。

大学を卒業してから、誰かの下で働こうという考えはなかったんですか?

三重野:なかったというか、現実逃避をしていたところがありましたね(笑)。自分が働いている絵がイメージできないまま、気づいたら4回生の11月になっていたんですが、その頃に先輩から声をかけられ、「AT PAPER」という京都のフリーペーパーのデザインをすることになったんです。その頃はまだ卒業制作をどうするかも決めていなかったので、これを卒制にしようと思い、取り組むようになりました。このフリーペーパーでは、僕たちの周りにいる同世代の作家を目指している人たちの作品を載せたりしているんですが、この辺が自分の活動の軸になるんじゃないかと思うようになりました。また、卒業間際に精華大の本館のサインデザインを依頼されて、その仕事をしている間に気づいたら卒業をしていたような感じで、もう(デザインを)やるしかないんかなと(笑)。

天然やなぁ(笑)。いま僕は大学でも教えていますが、デザインにしても建築にしても、クリエイターの卵たちがみんな関西を出て行ってしまうというのが、大学や地方自治体の悩みになっているんですよね。でも、京都にはクリエイターをとどまらせるほどの仕事も仕組みもないというのが現状で、何とかならないかなと思っているんですが、三重野くんが京都で活動しようと思った理由は何かあるんですか?

三重野:これといった理由があるわけではなく、単にこれまで京都にいたからというのが大きいです(笑)。ただ、自分が仲良くしていた人たちが就職をせずにバンドをやったり作品をつくっていたりしていて、同年代で面白い人たちが周りに多いと感じていたし、ここにいたら面白くなるんじゃないかというのはありました。また、そういう若い人たちが対等に仕事をできるようなグラフィックデザイナーというのもあまりいないような気がしたし、京都には、精華や造形など美大がいくつかあって、自然とつながっていくところもあるから、結構やることはあるやろうなと。東京には中学まで住んでいて、特に憧れというのもなかったし、デザイナーもすでにたくさんいるだろうと(笑)。

松倉早星
なぜ身体表現をするのですか?

グラフィックデザインをしている傍ら、、MuDAのメンバーに名を連ねたり、contact Gonzo(以下ゴンゾ)に参加したりと身体表現もやっていますよね。三重野くんたちの世代は、グラフィックや写真、ペインティングなどをしながら、身体表現の領域にも足を突っ込んでいる人が多くて面白いと感じているんですけど、これはどういうきっかけで始めたんですか?

三重野:僕の友達がすでに大学の時からゴンゾに入っていて、話は聞いていたんですが、最初はよく意味がわからなかったんですよ。でも、大学を卒業した年に初めてゴンゾのパフォーマンスを見て、なんかわからんけどおもろいなと思ったんです。そのパフォーマンスの後に、ゴンゾのメンバーの人たちと川沿いでサッカーをしたんですが、もしかしたら身体表現もこうやって遊んでいるのとあまり変わらないノリなのかなと感じ、自分も参加させてもらうようになったんです。MuDAに関しては、精華大にオリエンテーションか何かで来ていたことがあったから存在は知っていたし、大学の先輩など近い人たちが関わっていた縁で、1年前からメンバーに加わりました。「kYOTO EXPERIMENT」という舞台芸術祭のフライヤーのデザインなど、舞台やパフォーマンス関係の仕事もさせてもらっていたんですが、いまいちつかみ切れない部分もあったし、一度中に入ってみたらわかることがあるかなという思いもありました。

デザインと身体表現の関係というのは僕も気になっていたテーマなんですが、実際に始めてみて何かわかりましたか?

三重野:そうですね。デザインをしたり、文字をつくる際に、自分がやろうとしていることを身体のことに置き換えてみることで、それを言葉にして理解できそうな感覚がありました。デザインと身体表現の間に、無理矢理共通点を見出そうとする気はないですが、続けているうちに両者はつながっていそうだと感じ始めています。

MuDA

もともとグラフィックデザインというのは完全に手作業だったわけですが、PCが普及したことで誰でも同じように線が引けるようになりましたよね。情報流通がスムーズになり、昨日公開されたデザインが翌日には地球の裏側でコピーされたりする時代の中で、これがカッコ良いというものが画一化しつつあるような気がします。それとともにデザインというものが面白くなくなってきたと感じるようになったし、特に僕が関わっているデジタル領域のデザインには、「トレンド」なんていう言葉が語られ、まるでファッションのようになっているところがある。そんな時代に三重野くんのような人が出てきたことはとても面白いと思うし、三重野くんのデザインは三重野くんという身体を介在しないと生まれ得ないものですよね。この人にしか表現できないニュアンスを持っているクリエイターは個人的にもとても好きなんです。

三重野:デジタルに頼り過ぎてしまうのは危険だなと思っています。僕は、Illustratorを使って線を引くのが苦手で、なかなか自分が思ったようなラインにならないんですね。自分の手ならある程度の線がすぐに引けるし、デジタルツールというのは表現の可能性を制限してしまうものだと思っています。場合にはよりますが、最初に大まかな構図を決めてからは、たくさん手を動かしていくなかで形や線を探していって、そこからさらに作り込んでいくという流れが多いですね。

「ソーシャル・キッチン 三周年パーティ」Design: 三重野 龍

松倉早星
バランス感覚は大切ですか?

三重野くんのグラフィックには、良い意味で違和感があると感じるんですが、特に意図しているわけではなく、自然と出ているものなんですかね?

三重野:違和感を出そうと思っているわけではないですね。例えば、フライヤーなどをデザインする時には、主役となる相手がいるじゃないですか。その人とコラボレートするような気持ちでデザインしているところがあります。また、精華大の授業では、デザインというよりはグラフィック作品をつくるような機会が多くて、そういう環境の影響もあって、いわゆる一般的なグラフィックデザインと比べて違和感を感じるような部分があるのかもしれないですね。

ovaqe inc. logo Design: 三重野龍

三重野くんには、ovaqe inc.のロゴもデザインしてもらったんですが、周りからの評判も凄く良いんですよ。カッコ良過ぎず、かといって可愛い過ぎないニュートラルなものにしたいと伝えたら、ドンピシャの表現で返してくれて、男性からも女性からも反応が良く、素晴らしいなと。

三重野:これはかなりがんばりました(笑)。僕自身とても気に入っているんですが、ニュートラルなバランスというのは意識しているところがありますね。先ほど、自分の手で描くところから始める場合が多いという話をしましたが、一方で作家性みたいなものがデザインに入り過ぎてしまうのはどうかなと思っています。Illustratorでキッチリしたデザインをつくった方が良いケースというのももちろんあるので、その辺はうまく使い分けられたらいいなと。

その辺のバランス感覚や振り幅というのも三重野くんの魅力だと思っているんですが、自分の役割や、表現の住み分けみたいなものはどのくらい意識しているんですか?

三重野:卒業してからも絵を描いたりはしているんですけど、それを本気でやっている人たちも周りにいるので、デザイナーという肩書きを明確に出して、わかりやすく自分の役割をつくろうと思っていた時期はありました。とはいえ、色んな人と話をしていると、そんなにハッキリ分けていく必要もないのかなと思うようになった部分もあります。さっきのゴンゾの話ではないですが、どんな仕事をしていてもサッカーをする時はみんなでサッカーをするわけじゃないですか。何でもやれた方が単純に楽しそうだし、おもろいことが正義みたいなところがありますね(笑)。

南山城芸術祭2014「村の芸術祭」 Design: 三重野龍

松倉早星
どんなデザインをしていきたいですか?

学生の子たちから話を聞いていると、デザイナーでよく名前が挙がるのは、佐藤可士和さんや森本千絵さんなんですね。もちろん凄い人たちではあるけれど、一方で既存の文脈に乗らないような動きももっとあっていいと思うし、個人的にもそこが好きなゾーンだったりする。三重野くんは影響を受けたデザイナーというのはいますか?

三重野:学生の時に見てカッコ良いと思ったのは、立花文穂さんや大原大次郎さんです。たしかに、これから大学を卒業する人たちの選択肢がもっと増えればいいなという思いはありますね。

MuDA

僕が学生だった頃の京都では、違法ギリギリのようなかなりヤバいイベントなどが結構あったんですよ(笑)。もちろん、いまそれをやるべきだということではないけど、もっと面白い表現というものが増えてほしいと思うんですよね。それこそいまはMuDAやゴンゾをはじめパフォーマンスの領域にそれが移ってきている気がするし、最も自由な表現フォームなのかもしれない。

三重野:パフォーマンス表現は柔軟ですからね。今度、大阪の山本能楽堂という能の舞台をお借りして、MuDAのパフォーマンスをやらせてもらう予定なんですけど、僕らは結構激しい動きをするので、建物自体が耐えられるかが不安要素です(笑)。

MuDA

これからもデザインと身体表現は両方やっていくんですか?

三重野:まだわかりませんが、デザインの仕事については、ずっと続けていけるものなのかなと思っています。

今後やってみたいデザインの領域はありますか?

三重野:以前にカフェのデザインをさせてもらった時に看板をつくったのですが、こういう仕事はもっとやっていきたいですね。自分のデザインしたものがちゃんと街に残って風景になっていくのは凄く気持ち良いことだと思いました。

京都は、僕らが学生の時に飲んでいたようなお店もすでになくなっていたりするし、ディープなライブハウスなど表現する場もどんどん限られてきているように感じています。このままだと自分たち自身が退屈になってしまうだろうし、もう一回なんとかしたいなと。その中で、次の世代を盛り上げてくれそうな関西の人たちにどんどん機会を与えて、しっかり結果も出していくということが自分たちの使命だと思っているし、三重野くんとも今後もっと色々仕事をしていきたいですね。今日はありがとうございました。<インタビュー終わり>