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「問い」をカタチにするインタビューメディア

暮らしの更新

アーティスト/アートディレクター・えぐちりかさんが、
ミュージシャン・Charaさんに聞く、
「子どもへの愛について」

今回でカンバセーションズには3回目の登場となるアートディレクターのえぐちりかさん。前回の写真家・蜷川実花さんへのインタビューからすでに約2年が経ち、昨年には2人目のお子さんを無事出産されたえぐちさんが、今回インタビューするのは、日本を代表する女性ミュージシャンであり、2児の母でもあるCharaさん。先日発売されたCharaさんの2年半ぶりとなるニューアルバム『Secret Garden』のジャケットデザインをえぐちさんが手がけるなど、仕事でも関わりを持つおふたりが、ものづくりのことや、子育てのことなどについてさまざまなお話をしてくれました。

えぐちりか
アルバムはどうやってつくるのですか?

Charaさんから最初にアルバムのお話をして頂いた時に、今回は子宮がテーマだということを聞いてとても興味深かったのですが、毎回アルバムのテーマというのはどうやって決めているのですか?

Chara:曲をつくっていくうちに自分が気になっているものが集まってきて、だんだんテーマが明確になってくるという感じかな。たぶんデザイナーにもそういうこと、あるでしょ? ただ、私の場合はクライアントがいるわけではないから、自分の内側にある個性的なもの、「Chara」というものを純度を高くして出すということが仕事。言ってみれば、毎回テーマは「自分」なので、自分が心で感じたものを伝えようと心がけてる。

今回は約2年半ぶりの新作ですが、その間にストックされた色々なものがアルバムになっていくのですか?

Chara:アルバムをいつ出すかというのは、最初から決めているわけじゃないんだけど、最近気に入っているものと、昔からある自分らしいものが色々混ざっていく中で、アルバムというものができていく感じ。例えば、どんなご家庭でも、家族の写真を撮ってアルバムをつくったりするでしょ。割とそれに近い感覚で、ある程度この曲を入れたいというものがあった上で、自分も含めそれを聴く人が楽しめるように演出をしていく。家族アルバムにしても、このページをめくったらこの写真があってとかみんな考えると思うんだけど、そういう誰もがやっている作業に結構近いのかもしれない。

Charaさんには、まず自分の人生というものがあって、そこに歌が寄り添っているような印象があります。日々の出来事の中から歌が生まれているような気がするんですが、今回のアルバムにも、ここ2,3年のCharaさんの気分というのが色濃く出ているんですか?

Chara:ここ2,3年というよりは、これまで生きてきた分かもしれない。その中でも特に深く掘って出てきたものというのは、やっぱり最近のものが多いのかもしれないけど。多分デザイナーもそうだと思うけど、日々色々なことを感じたり、周りの人から影響を受けたり、これまでに先輩たちが残してきた作品に感動したり、「凄い!」と感じることって色々あるでしょ。私にもこれまで生きてきた中で、周りの人たちとの関係から生じた色んな出来事や事件というのがあって、そういうものが作品になっているんだと思う。特に私の場合は、昔から「愛」というものが凄そうだと漠然と思っていて、でも、それが何なのかよくわからないから余計に興味が湧いて、ラブソングばかり歌ってきたんです(笑)。

えぐちりか
子どもが生まれて表現は変わりましたか?

私は16歳の時にCharaさんの『Baby Baby Baby xxx』を聴いていたんですが、本当に大好きなアルバムで、北海道から上京してきた時にも持ってきて聴いていました。

Chara:このアルバムはちょうど私が子どもを産んですぐに出した最初のベスト盤。この中に入っている『Tiny Tiny Tiny』という曲は、新しい家族ができた時に歌った娘の歌で、この頃から「私」ではなく「私たち」と歌うようになった。懐かしいね(笑)。この時は出産後1ヶ月くらい休んで、その後すぐにトラックダウンか何かでスタジオに入ってたな。ちょうど子どもを産んだ前後3,4年が凄く忙しかった時期だったんだけど、当時はまだ若かったし、なんとかなるって思ってた(笑)。

Chara「Secret Garden」

ちょうど出産された頃から、より多くのファンの人たちにCharaさんの歌が広がっていきましたよね。Charaさんは子どもが生まれたことで何か変わったことはありましたか?

Chara:子どもが生まれてからは、いずれこの子が私の仕事を見るようになるんだろうなと思うようになって、責任を感じるようになったかな。一度出した言葉はもう引っ込められないと思ったり。どうせなら子どもから「ママかっこ良いね」と言われたいし、友達から「お前の母ちゃんこうなんだよな」とか言われていじめられないようにって(笑)。それは冗談だとしても、やっぱり本気でやっている姿を見せたいじゃない。若い頃は、ミステリアスになりたいと考えていたところもあったけど、その頃は未熟な部分がたくさんあった。でも、出産したことで責任感が出てきて、凄く変わったと思う。

私は一人目を出産した後、子供に出会ったことの衝撃が大きくて、表現手法がガラっと変わった時期があったのですが、Charaさんは自分の表現についても何か変化はありましたか?

Chara:子どもって簡単な言葉とか、響きが面白い言葉から覚えていくでしょ。その辺にある日常のシンプルな言葉に深さを感じたり、凄く伝わるんだなと思うようになって、あえてそれまで拾っていなかった言葉を使って、かっこ良いものをつくるということにやりがいを感じるようになったかな。

すごくわかります。私も子供の笑顔の強さに衝撃を受けてしまって。ストレートな表現で、人の心に深く突き刺さるようなことができないかを模索するようになりました。

えぐちりか
子育てで大切にしていたことは何ですか?

以前に、娘のSUMIREさんに撮影のフィッティングをお願いしたことがあったんですけど、一人でフラッとやって来たんですね(笑)。そこで色々着てもらったんですけど、フィッティングをしていても、自分はこうじゃなきゃイヤというのがまったくないんですよね。でも、「どれがいいと思いますか?」って聞くとすぐに答えてくれて、そこで彼女が選ぶものに間違いがない。自分の役割というものを理解していて、男の子みたいに凄くサッパリした性格で女性から見てもかっこ良いなと感じました。Charaさんは、子どもを育てる時にどんなことを大切にしていましたか?

Chara:色々あったよ。彼女の名前である「菫(すみれ)」の花言葉は「誠実」なんだけど、優しく誠実な子に育ってほしいとは思ってた。あと、やっぱり芸能人の子どもだと、知らない人に勝手に写真を撮られたりとか、色々迷惑をかけることがあるかもしれないじゃない。特に小さい頃は、そういう面での安全は守りたいと思っていたんだけど、一方でなるべく地域になじみたいという思いもあった。芸能人の子どもだからっていうことで集まってくるような子じゃなくて、もっと普通のお友達と、小学生なら小学生、中学生なら中学生らしい、いまどきの遊び方ができるといいなって。だから、保育園から小・中学校までは公立に通わせていたし、調子に乗らないようにというのは考えてたかな(笑)。

KOE

本当にSUMIREさんは芸能人の子どもという感じはまったくないですよね。SUMIREさんとCharaさんの撮影を一緒にしていても、Charaさんは自分の仕事が終わったら普通に帰っちゃうし、不思議な親子だなって(笑)。私なら絶対娘の仕事を見ちゃうと思います。SUMIREさんが子どもの頃は、仕事の現場に一緒に連れて行ったりということはされていたんですか?

Chara:音楽の現場とかは大丈夫だったんだけど、映画とかは静かにしないといけないシーンが多いから連れていけなかった。映画は拘束時間も長いから、一時期はシッターさんに任せてばかりで、成長が見られないこともあったけど、でもやっぱりママには一番慣れさせたいじゃない。だから、シッターさんを毎日同じ人にしないようにとか、色々工夫してた(笑)。あと、特に小さい頃は、なるべく自分の仕事はスタジオとか外で全部終わらせるようにしていて、家ではピアノで遊んだりするくらいだったかな。スタジオって、クルクル回るものとか、子どもが好きそうなものが多いんだけど、それをいじられてデータが消えたりするのが怖かったし、仮に消えたとしても怒れないでしょ(笑)。ただ、せっかくママがCharaなのに音楽に触れさせないのももったいないから、子どもの成長に合わせて、スタジオでの曲作りとかに連れて行ったりするようになったかな。

KOE

私が以前にプレゼンした時もSUMIREさんがいらっしゃっていましたね。

Chara:「KOE」の場合は娘も一緒に出るということもあったし、プロのプレゼンの仕方や、ママが普段どんな仕事をしているのかということは見ておいた方がいいのかなと。そういえば、以前に娘もモデルをしている『装苑』で私が表紙の撮影をしている時にSUMIREが見に来ていて、ポージングしながら、「わー、見られているなー」って(笑)。フィッティングなんかは自宅でやることも多いからそれは彼女も見ていると思うけど、現場でポーズをとったりして、Charaっぽく仕事しているのは、あの時に初めて見られたと思う(笑)。

えぐちりか
最近泣いたのはいつですか?

突然ですが、Charaさんが最近泣いたのはいつですか? 私は、結構いっぱいいっぱいになった時などは、一度泣いてスッキリしてから次に行くタイプなんです(笑)。

Chara:結構儀式的に泣くかも(笑)。ある取材の時に、自分のことをあまり理解してくれていないインタビュアーの人が来て、「いや、そうじゃないんです」ってこっちは説明をするんだけど、だんだん涙が出てきちゃって。せっかく取材してくれているし、しっかり話そうとは思うんだけど、なんか一生懸命やってるのにわかってくれていないんだなって、ちょっと悲しくなっちゃったんだと思う。その後はちゃんと取材に対応したんだけど、ここぞという時に、そうやって女々しく泣くことはある(笑)。別にわざと涙を使おうと思ってるわけじゃないんだけど。

私は取材を受けて、子供や家族のことを話そうとすると、なぜか涙が止まらなくなります(笑)。

Chara:普段ちゃんと言葉にしていないようなことだから、いざ話そうとすると、感動して涙が出てきちゃうというのがあるのかもね。でも、別に泣いてもいいんじゃないって思う。私は昔から、泣いても鼻をかみながら話すようなタイプだったかな。レコーディング現場なんかでも、以前はいまよりもコミュニケーションが上手くできなくて、自分がイヤだということを、自分以外の人たちの機嫌を損ねずに伝えることができなかった。ただ、それでも若い頃は気を使っていたつもりだったけど、最近は、リハの時なんかにしても、「もしかしたらキツい言葉が出ちゃうかもしれないけど、あまり気にしないでね」と前もって言うようになった(笑)。これは年の功みたいなもので、ショートカットできるところはするようにしているし、そういう判断力がついてきたんだと思う。

特に若い頃は、自分より年齢や経験が上の人が多いですからね。今回の『Secret Garden』のデザインをしていて面白かったのは、私が複数の案を出した時、息子さんにどれがいいかを聞いて、彼が選択したものにあっさり決められたことです。実は私も、Charaさんにお見せする前日に、数パターンのレイアウトで悩み、自分の夫に見せて意見を聞いたりしていたこともあり、Charaさんと息子さんとのやり取りが、なんだかとても親近感が湧いたというか、微笑ましかったです。自分の方向性を決める大切な選択を、愛する人の一言に委ねてみるということがとてもチャーミングだし、Charaさんらしいなって思いました。

Chara:私、わかりやすいね(笑)。息子に聞くことは凄く多いんだけど、私が彼の年の時に、ここまではっきりした言葉で話せただろうかって思うようなことを結構言ってくれるから、「ふーん」ってなる(笑)。ボブ・マーリーの詩を引用してみたり、なんか言葉がかっこ良いんだよね。彼は英語がちょっとできるから、英語の詩を書こうと思っている時に聞いたりもするんだけど、何かを質問した時に「それはさ、そもそもそういうことじゃないでしょ」って逆に諭されたりもする(笑)。とはいえ、15歳になって肉体的には成長しているけど、やっぱり息子は息子。でも、いつのまにか「ママ」から「母ちゃん」に呼び方が変わったりするから面白いよね。「え、私、母ちゃん? ママじゃないの?」みたいな(笑)。次は「おふくろ」とか呼ばれたりするのかな(笑)。

えぐちりか
どんなおばあちゃんになりたいですか?

これまでCharaさんはずっと音楽をつくり続けてきていますが、女性は男性に比べて、結婚や妊娠、出産、子育てなど色んな変化の中で仕事を辞める人も多いですよね。私は昨年2人目が生まれて、久々にまた大変な時期が来たと感じているんですけど、Charaさんにとって特に大変だった時期というのはいつ頃でしたか?

Chara:大変な時期はたくさんあったと思うけど、私はソロで活動しているので、自分がこうしていきたいというものを常に出していかないといけないところがあるのね。そういう意味では、10数年間いた事務所を辞めざる得なくなった時期は大変だったかな。ちょうどそれが旦那とうまくいかなくなってきた時期とも重なって、声があまりよく出なくなっちゃって。でも、その中でも人を信用したいという思いがずっとあったし、声は出ないけど、笑顔を取り戻さないといけないと思って続けていたら、元気が出てきた。最近思うことは、強がっていた昔に比べて、いまは強くなれたのかなって。笑えない時でも無理して笑っていたら気持ちがそっちに向かっていくのと同じで、強がっていないといけない時期というのもあると思うけど、いまはそう強がらなくても大丈夫になったと思うし、愛の持久力のようなものがついてきたのかなって思う。

これまでに音楽を辞めたいと思ったりしたことはないんですか?

Chara:もっとやらせてよっていつも思ってる。特に人間の声というのは、無機質な楽器とは違って、筋肉など色んなものによって支えられているから、しばらくやめていた後に、急にまた始めようと思ってできるものではないのね。やっぱりずっと続けていないと良い音はでないし、年齢を重ねていくと老化というものとも向き合わなくてはいけないから、言ってみればヴィンテージの楽器のようなもの。常に手入れをしていないとすぐに使えなくなってしまうことが想像できるし、実際にそうやって歌えなくなった先輩たちも見てきてる。そうならないためにも定期的にライブをしたり、自分で調整していくことが大切なのかなって思ってる。あとは、女性としてはすでに折り返してる実感があるから、ここから先はもっとゆったり楽しみたいという思いもあるかな。

どんな時でも音楽を続けてきたCharaさんの姿勢や愛を真ん中にする生き方、人生の選択がとてもかっこ良いなと思います。Charaさんは、おばあさんになってもずっと音楽を続けていそうですね。

Chara:将来孫ができたら、時々はおばあちゃんのステージに来てくれたらって思う。音楽をやっている時はまともなんだけど、しっかりアジもあるようなおばあちゃんになれたらいいな。うちの子たちもおばあちゃんに相談したりしているんだけど、私がおばあちゃんになってもそういう役割はあるはずだから、その時に、言葉で伝えたり、料理でもてなしたりしつつ、「こんな曲も書いているのよ」って聴かせられたらいいなと思ってる。おばあちゃんになったら膝なんかも悪くなるだろうし(笑)、あと何年生きられるのかもわからないけど、楽器を弾きながらライブをしたりするのもいいし、作曲が好きなので、これからもずっと続けていくのが目標です。<インタビュー終わり>


インタビューを終えて

KOEの仕事の時、ジャケットのオリエンの時、今日のインタビューでお話しした時すべてに共通して感じるのは、話し方や言葉の選び方が面白くて、とにかくチャーミングなこと。聞き心地が良いのに、視点が新鮮なので、いつまでも、もっと深くもっと深くと、一つひとつ掘り下げて聞いてみたくなってしまいます。
唐突な質問の一つひとつに正直に、同じ目線の高さに来て、真摯に答えてくださる姿勢に感動しました。特に印象的だったのは、最近泣いた時のお話。大人になると、ついかっこつけてしまいそうになりますが、泣いてもいいんだ、正直でいいんだって勇気づけられた感じがします。自分の心に正直に、まっすぐ生きるCharaさんの姿に人は惹き付けられてしまうし、きっとそれがいつまでも愛らしく、チャーミングでいられる秘訣なのだろうと思いました。
今日のインタビュー、チャラさんとのアートワークのコラボレーション、どちらも本当にとても楽しかったです。素敵な時間をありがとうございました!