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「問い」をカタチにするインタビューメディア

問いから学ぶ

カンバセーションズ第一期インタビュアーたちが語る、 「各プロジェクトの進捗と、カンバセーションズの可能性」

カンバセーションズ第一期インタビュアーたちが語る、
「各プロジェクトの進捗と、カンバセーションズの可能性」

2018年6月、カンバセーションズは、「問い」をカタチにするインタビューメディアとして生まれ変わりました。そこから早1年と数ヶ月、リニューアル時からカンバセーションズに参加してくれている第一期インタビュアーの3人は、いよいよ各自のプロジェクトをカタチにする時期が迫ってきています。そこで今回は、「ゆっくり おいしい ねむたいな」代表の熊野森人さん、CINRA代表の杉浦太一さん、そして、メディアアーティストの市原えつこさんの3人に、それぞれのプロジェクトの進捗を報告してもらうとともに、カンバセーションズに参加した1年間について振り返っていただきました。

カンバセーションズ
プロジェクトの進捗はいかがですか?

まずは、御三方のプロジェクトの進捗についてお話し頂けますか?

杉浦:以前に市原さんにもご協力頂き、マイナビさんと一緒に大学1、2年生を対象にした講座の企画、運営を行ったというお話をしましたが、その後さまざまな高校の先生などにヒアリングを続け、教育事業の概要やコンセプトはだいぶ固まってきました。まだお話できないことも多いのですが、端的に言うと、ティーンエイジャーたちが凄い大人たちに自分の世界を広げてもらうような学びのプログラムを提供していく予定です。実は再び市原さんにもご協力頂き、いままさにプロトタイプをつくっている段階で、正式なローンチは来年2月くらいになりそうです。

CINRA代表の杉浦太一さん。

市原:先日、テストユーザー向けのプログラムに参加したのですが、とても緊張しました(笑)。10代の人たちが、人生を変えてくれるような大人たちと出会える教育系のサービスというのは聞いたことがないので、いまからとても楽しみです。

杉浦:受験には役立たないかもしれないけど、人生には役立つ経験を、が合言葉です(笑)。

熊野:あえて「文科省不認可」みたいな枕詞があってもいいかもしれないですね(笑)。

市原さんはいかがですか?

市原:11月9、10日に「仮想通貨奉納祭」という祭りを開催することが決まり、おかげさまでクラウドファンディングも目標金額を達成できました。すでに作品の仕様などはだいたい固まり、現在は渋谷にある100 BANCHという施設に入居し、制作を進めています。紆余曲折あったのですが、結局カンバセーションズで最初にインタビューした和田さんとの話の中で出てきたサーバー神輿というアイデアを実現させることになりました。搭載したサーバーに、世界中からデジタル通貨が着金するという神輿を背負い、祭りの会場を練り歩きます。

メディアアーティストの市原えつこさん。

熊野:場合によっては、祭り中に神様がハックされる可能性もあるわけですね(笑)。

市原:デジタル通貨の他にも、民俗学からバイアアートまでこれまでのインタビューで伺ってきた内容やご縁がかなり作品に反映されることになりそうです。あと、研究者の方に協力してもらいながら、ロボットの天狗や神楽などもつくる予定です。言っている意味がわからないと思いますが(笑)。

杉浦:めちゃくちゃ巻き込んでいますね。

市原:さらに多くの人を巻き込んでいきたいので、オープンコールで祭りの出展者の募集もしています。他にもやりたいことが多すぎて、若干破綻しそうな香りが漂ってきております…。

熊野さんはカレーをつくっているんですよね。

熊野:そうなんです。幸せの数値化に向けてインタビューを続けていくうちに、すでに多くの方々が幸せの指標というものについて考えている中で、まずは幸せを数値化するという考え方や研究の成果を広める媒介をつくってみるのも良いのではと思ったんです。

ゆっくり おいしい ねむたいな代表の熊野森人さん。

市原:なぜ、カレーだったのですか?

熊野:カレーには、食べると幸せになるという俗説があること、スパイスに薬としての効能があること、そして、うちの左近というスタッフが大のカレー好きだったことが理由です(笑)。半年以上かけてようやく試作が完成したので、今後は色々な人たちにモニタリングをして、このカレーを食べると幸せになるということを何かしらの形で検証した上で、来年には商品化したいと思っています。最近海外では、遺伝子情報をもとにパーソナライズされたミールキットを宅配するサービスが人気なのですが、将来的には漢方の処方箋のように、あなたの幸せに良いカレーというものが提供できないかなと。

杉浦:ストレスや睡眠不足などその人の状態に合わせて、小袋に分かれたスパイスを調合できたりすると良さそうですね。

市原:まさにパーソナライズカレー! ちなみに、11月の奇祭には飲食出店も可能なので、良かったらぜひ!

熊野:ありがとうございます。後で詳しい条件を聞かせてください(笑)。

いよいよ11月9日・10日の開催が迫ってきた市原さんの「仮想通貨奉納祭」。

カンバセーションズ
これまでを振り返ってみてどうですか?

プロジェクトの実現に向けてまだ道半ばの段階ではありますが、ここまでカンバセーションズに参加してみていかがでしたか?

市原:それぞれのインタビューから得られたことも多いですが、同じタイミングでインタビューをスタートした同期の存在がとても大きかったなと思います。特に今回の作品制作は明確な期日があったわけでもないので、誰かがお尻を叩いてくれなければ永遠に進まない恐れもありました(笑)。それぞれまったく異なるプロジェクトとはいえ、熊野さん、杉浦さんの進捗を横目で見たり、実際に絡ませてもらったりする中で、自分も進めていかなければと思わされるというありがたい効能がありました。

杉浦:カンバセーションズは「やるやる詐欺防止メディア」ですよね(笑)。記事が公開されることによって後戻りできなくなるし、それ以上に、記事を通して事業化に向けたプロセスや自分たちが考えていることをオープンにできたことが非常に良かったと感じています。最近は巷でイノベーションという言葉をよく聞きますが、本当に大切なのはアイデアそのものではなく、実際に形にしていくこと。そのプロセスをオープンにしていくカンバセーションズというのは、まさにオープンイノベーションを地で行くようなものだなと。

熊野:市原さんのような個人にしても、CINRAさんのような企業にしても、プロセスを公開していくというのは、新しいPRの形としても面白いですよね。通常、企業の新事業の構想などは内密にされることがほとんどで、それは自社の利権を守るためには当然だと思われていましたが、このご時世、そうした内と外の境界のようなものはどんどん溶け出しているんでしょうね。僕らとしても、「ゆっくり おいしい ねむたいな」という新会社の活動をこのような形で継続的に発信できていることは非常にありがたく、許されるならずっと続けたい思いです(笑)。

熊野さん率いる「ゆっくり おいしい ねむたいな」が開発中の食べると幸せになるカレー。

市原:アーティストというのは、常に新作をつくっていく必要があるのですが、次回作に向けて動いていること自体を発信する機会はそんなにありません。そういう意味で、カンバセーションズでのインタビューの機会はとてもありがたかったですし、作品が形になっていない段階から情報を出していくことで、色々な縁を引き寄せやすいという発見もありました。今回の奇祭に関しても、まだ形になっていないにもかかわらず、すでに巡回が決まっていたりするんです(笑)。

杉浦:僕らも採用面接の時に、カンバセーションズの記事を見てくれた人から教育事業について質問されることがありました。メディアの会社の社長が、いきなり教育事業を始めるというわけのわからないことを言い始めたら社員も不安になると思うのですが(笑)、カンバセーションズの記事を通して自分が考えていることや取り組もうとしていることへの理解が深まったところは少なからずあったし、社内に向けたインナーコミュニケーションとして機能したことも大きかったですね。

熊野:個人的には、第一期メンバーにアーティストの市原さんがいたことも良かったと感じています。市原さんはクラウドファンディングで資金集めをされましたが、ファンや応援者を増やして、商品やサービスの価値を高めていくという考え方は、今後企業においても大切になってくるはずです。また、杉浦さんの教育事業にも言えることですが、強い問題意識と投資の精神がなければ成立しないようなプロジェクトを実現させるために、それぞれが答えを探していくというプロセスを共有できていることは大きな刺激になっています。

カンバセーションズ
インタビューの魅力は何ですか?

プロジェクト実現に向けたリサーチとして、インタビューという手法は有効でしたか?

熊野:取材をした人たちの中には著書を出されている方も多く、基本的な考えや研究成果などは本にまとまっているのですが、自分たちが考えているような漠然としたアイデアや、モヤモヤと悩んでいることに対する答えやヒントというのは、そこには転がっていないんですよね。その点、カンバセーションズのインタビューでは、ある領域について高い精度で考えている人たちに対して、抽象的な考えや言葉を投げかけ、具体的なフィードバックを得ることができたので、とても貴重な体験になりました。

市原:私の場合は、インタビューがブレストのような形になることが多かったですね(笑)。自分が考えている作品の構想にフィードバックして頂けることは非常にありがたかったですし、対話の場から何かが生まれそうな感覚があって、実際に制作に直結するような収穫が毎回ありました。みなさん忙しい方ばかりなので、普通に声をかけても捕まりにくかったりするのですが、インタビューという大義名分のもと、会いたい人とご縁を結ぶこともでき、熊野さんではないですが、権利があるならずっと続けたいくらいです(笑)。

杉浦:インタビューを名目に入っていけるというのは大きいですよね。CINRAもメディアを運営していますが、今回のように自分たちが始めようとしている事業のことを、自社メディアで発信していくというのはとても難しいんですよね。そういう意味でカンバセーションズで客観的な発信ができたことはありがたかったですし、カンバセーションズの原田さんに、ある意味壁打ち的に自分たちの考えを話させてもらったり、逆に質問をしてもらえたことも大きかった。なかなか社内でこうしたコミュニケーションは成立しにくいですからね。

CINRAとマイナビの共同企画として3月に開催された大学1、2年生向けの教育プログラムの様子。

カンバセーションズ
どんな人がインタビュアーに向いていますか?

カンバセーションズでは、第二期となるインタビュアーの参加も募っていきたいと考えているのですが、どんな人がカンバセーションズに向いていると思いますか?

杉浦:カンバセーションズのリニューアル記念イベントの時に、教育事業の構想についてプレゼンテーションしましたが、僕らがやろうとしていることに共感して頂き、できることがあったら協力すると仰ってくれた方が結構いらっしゃったんですね。「この指とまれ」ではないですが、カンバセーションズは何か新しいことを始める時にサポーターを募ることができるプラットフォームであり、また、自分たちがやろうとしていることの精度を高めてくれる新規プロジェクト開発ツールでもあると思います。そういう意味では、多くの人が乗っかりやすいような「問い」を抱え、本気でそれを形にしようという気概がある人にとっては、力強いサポーターになると思います。

市原:いつかやろうとは思っているけど、マイルストーンを置いたままで止まってしまっているプロジェクトがある人にとっては、これ以上ないメディアだと思います。また、個人のアーティストというのは後ろ盾が少ない立場なので、メディアというある種オーソライズされた存在に自分の思考プロセスを記録、発信してもらえることは非常に心強かったです。今回東京都の助成金を申請する際にも、カンバセーションズのインタビューがあったことは大きかったですし、アーティストが人、モノ、金を集めるための有効なツールでもあると感じました。

熊野:第一期メンバーはそれぞれ、社会にある既存の仕組みや価値観を少し変えたいという思いを持っている点で共通していたんじゃないかと思っています。未来のスタンダードになるかもしれない新しい価値観を、インタビューを通して探っていくというフレームはカンバセーションズの資産になるものだと思いますし、何かを変えたいという熱量はあるけど、何をすればいいかわからないという個人や組織に参加してほしいですね。そういう人たちと僕ら第一期メンバーがジョインできることもあるかもしれないし、熱量を持った人たちがつながっていけるコミュニティのようなものが醸成されていくと素晴らしいなと思います。