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CINRA代表・杉浦太一さんが聞きたい「第三の教育の場のつくり方」

CINRA代表・杉浦太一さんが「第三の教育の場のつくり方」について聞きたい理由

カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」や、アジアを中心とした多言語クリエイティブシティガイド「HereNow」などの自社メディアを運営し、さらに企業や行政のオウンドメディア制作やインバウンド施策なども手がけているCINRA。その代表を務める杉浦太一さんは、創業時からグローバルな教育サービスの提供を将来の目標に掲げていたと言います。アートや音楽、映画などのカルチャーや旅などこれまでにCINRAが関わってきた領域からすると、教育というのは少し意外な感じもしますが、その背景には「良い変化を提供する」という創業以来掲げてきた同社の理念があるようです。今回の企画ではCINRA代表の杉浦さんが、さまざまな領域のスペシャリストたちへのインタビューを通して、来るべき新事業のヒントとなり得る事例や考え方を探っていきます。

杉浦さんが代表を務めるCINRAはどんな会社ですか?

杉浦:CINRAは僕が学生時代に周りの友人らとスタートした活動で、大学卒業と同時に会社にしました。「幸せのきっかけを、多くの人に届ける」をミッションに掲げ、「CINRA.NET」や「HereNow」などの自社メディアや、求人サイト、オンラインショップの運営、カルチャーイベントの開催などとともに、官公庁や企業のコーポレートサイトやオウンドメディアなどの制作などを手がけています。

新たに始めようとしている教育関連のサービスについては、以前から構想していたのですか?

杉浦:創業した頃から、「世界中に学校をつくる」ということを将来の目標に定めていました。CINRAのさまざまな事業の根底にあるのは、人に何かしらの良い変化を提供したいという思いなんです。そのための手段として、アートや音楽などのカルチャーや旅などにフォーカスし、メディアやイベント、広告などの形で発信してきましたが、最も原始的に「変化」を提供できるのはやはり「教育」であり、いつか挑戦したいと思っていました。最近力を入れている「旅」に関連する事業も、将来世界中に学校をつくるのであれば、まずは自分たちが海外に出て、色々な人たちとつながっていく必要があるという考えから始まったものなのですが、特にこの1年くらいは、これまで以上に直接的に「教育」という出口につながる動きを意識するようになりました。

旬のカルチャーニュースを配信する「CINRA.NET」。

具体的には、どんなサービスにしていきたいと考えていますか?

杉浦:想定している対象は中高生なのですが、そこでまず思い浮かぶのは学校教育ですよね。これらは国が定めた学習指導要領に則って施される教育であり、かなり厳しい労働環境に置かれている先生方の中で、社会との接点を積極的に持たれている人は決して多くありません。また、学習塾も教育の場のひとつですが、これはほとんどの場合、偏差値を上げるための場ですよね。一方で、遅かれ早かれ人工知能が人間の知能を上回ると言われる時代です。そうなった時に必要なのは、必ずしも偏差値だけではないはず。僕がつくってみたいのは、そうした未来において人間に必要な知恵を獲得できるような第三の教育の場をつくることです。いまで言うと、リベラルアーツや情操教育などに近いのかもしれません。

なぜ中高生を対象にするのですか?

杉浦:これは自分の体験に基づくところも大きいのですが、僕は幸せなことに、中高生の頃のさまざまな出会いがきっかけで、色々なことを教えてもらうことができたんです。もしこの頃の出会いがなかったら、人生は全く違うものになっていたと思うし、客観的に考えても、小学生というのはまだ人格形成がままならない時期ですし、逆に大学までいってしまうと就職などキャリアの話になりがちです。中学・高校というのは、人生において最もゆらぎがある時期で、その時に得るものというのは人生に大きな変化を及ぼす可能性が高いと思うんです。これまでであれば、親戚の集まりなどで年上のいとこに「これ、最高だぞ」と勧められた音楽が、その後の人生に大きな影響を及ぼすようなことも多かったのかもしれませんが、家族をはじめとしたコミュニティがどんどん失われつつある時代に、偏差値など数値化されるものではない何かを育んでいける機会、子どもたちが大人との交流を通して何かを盗んでいける場をつくりたいと考えています。

具体的なサービスの形については、何かしらイメージがあるのですか?

杉浦:まだ明確なイメージはありません。例えば、これまでにCINRAが築いてきた国内外のネットワークを活かして、さまざまな国のクリエイターなどに講師になってもらい、今後を生き抜くための知恵を獲得する機会を中高生に提供できないか、というようなことを漠然と考えています。

アジアを中心とした世界のクリエイティブシティガイド「HERE NOW」。

今回のインタビューでは、どんな分野の人たちに話を聞いてみたいですか?

杉浦:まずは、偏差値偏重型ではない第三の教育の現場の最新事例を色々知りたいので、そうした場で実践をされている人たちのお話を伺ってみたいです。また、世界中に学校をつくるということを掲げているからには、教育に関する世界の状況をよく知っている人や、すでに教育関連の事業をグローバルに展開されている企業の人たちとはぜひお話ししてみたいですね。これだけ海外を自由に行き来できる時代になり、今後は言語の壁などもますます低くなっていくことを考えると、国境という概念は限りなく希薄になるはずで、その中でこれからの教育がどう変わっていくのかということにもとても興味があります。一方で、これまでの日本の歴史や文化的土壌の中で、教育というものがどのように位置づけられきたのか、それを踏まえてこれからの日本の教育には何が求められるのか、ということも気になっているテーマです。

教育以外の領域についてはいかがですか?

杉浦:いくつかあるのですが、まず脳科学の分野の方にお話を聞いてみたいです。中高生くらいの年代がどんな脳の状態にあり、何に影響を受けやすいのか、教育や授業のフォーマットとしてどんなものがあると効果的なのかということなどを伺ってみたいと思っています。あと、最近はEdtechという言葉もあるくらいですし、やはりテクノロジー領域からの観点も欠かせないと考えています。これまでのEdtechの文脈は、いかに既存の教育をハックするか、コストを下げてみんなが学べる環境をつくるかというような、どちらかと言うとインフラ寄りの考え方が強かった気がしますが、知性を磨く場をつくっていく上でどのようなテクノロジーの活用法があるのかというところを掘り下げてみたいですね。

興味がある分野として、哲学や宗教なども挙げて頂いていますね。

杉浦:先日母校で、中学3年生を相手に講演をする機会があったのですが、その時に、一流大学一流企業に進むというかつてであれば良しとされていた価値観が、いまの若い世代にはほとんど信じられていないということを強く感じました。要は、幸せとキャリアの相関関係が低くなっているんですよね。人が豊かに生きるためにはどんな教育があると良いのか、どうすれば大人になった時に幸せに感じられるのかというのは非常に大事なことで、そこは哲学の領域になってくるのかなと。また、宗教というのもやはり人間の欲望や幸福とずっと向き合ってきたものだと思うのでずっと関心があって。教育が生きる上での価値基準をつくっていくプロセスだとしたら、欲望はその真ん中にあるコントローラーのようなもので、それとどう付き合うのかというのは教育を考える上で重要なテーマなのかなと。ホントに幅広すぎて、どうなっていくのか自分でも見当がついてません(笑)。

インタビューしてみたい人たちが多岐に広がっていてとても興味深いですが、みなさんに共通して聞いてみたいことなどはありますか?

杉浦:人によって聞けない方もいると思いますが、ご自身のお子さんが中高生になった時、どんな教育があったらいいかという話は伺ってみたいですね。自分にも子供がいるのですが、実は自分たちがやろうとしているサービスと、自分の子供のことをまだちゃんと結び付けられていないんです(笑)。

教育事業の起ち上げは、どのくらいの時期をイメージしているのですか?

杉浦:2020年頃からスタートし、2022年くらいにはある程度の形にしたいと考えています。いまはまだ学力を上げるための教育が主流ですが、今後数年でAIなどがますます進化し、人間がこれ以上学力をつけなくてもいいんじゃないかという流れになった時に、いよいよこれまで数値化できていなかった能力というものが必要とされてくると思うんです。そうなった時のひとつのアンサーになるようなサービスが提供できればと考えています。