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井口皓太

クリエイティブディレクター
映像作家

小川勝章

作庭家

今回カンバセーションズに登場する井口皓太さんは、デザインオフィス「tymote」の代表を務めるアートディレクター。この秋に、京都を拠点とするクリエイティブエージェンシー「世界」を新たに立ち上げるなど、精力的な活動を続ける井口さんがインタビューするのは、京都の無鄰菴平安神宮円山公園などを作庭し、近代日本庭園の先駆者と言われた七代小川治兵衞をはじめ、江戸時代より数々の名庭園を手がけてきた「造園植治」の小川勝章さん。講演やワークショップなどを通して、庭園文化の発信にも力を入れている小川さんに、庭造りの真髄について伺ってきました。

5. どんな庭造りが理想ですか?

小川勝章 

「良いお庭だったね」「きれいだったわね」で終わってしまうのではなく、もう一度会いたい、来たいと感じてもらえるお庭であってほしいと思っています。

Q.小川さんにとって良い庭とはどんなものですか?

小川:人にしても、庭にしても、「良い人だったね」「良かったね」という感想だけだと、その次にまた会うことはほとんどないんですよね。でも、その相手が本当に気になる存在であれば、なんとかしてもう一度会う方法や時期をうかがいますよね。その後もう一度会えたら凄くうれしいし、さらにもう一回会いたいと思う。毎日合う人、週に1回会う人、年に1回会う人など、好きな相手にもそれぞれの距離感があって、もしかしたら忘れた頃にまた会うご縁の人もいるかもしれない。どんな距離感であったとしても、「良いお庭だったね」「きれいだったわね」で終わってしまうのではなく、もう一度会いたい、来たいと感じてもらえるお庭であってほしいと思っています。例えば、冬の時期というのは寒いし、木も落葉していて殺風景だし、お庭なんか行きたくないという人も多いと思いますが、実は冬に見るお庭はとても大事なんです。艶やかさやきらびやかさが削ぎ落とされ、お庭の骨格だけが見える時にこそ、人となりが一番分かるんです。そこでダメだと思われたらそれまでのお庭だろうし、もう一回季節を変えて来てみようと思ってもらえたとしたら、それはある意味魅力あるお庭なのかもしれないなと。

ショットバー「The door,」

Q.お施主さんとのやり取りで大切にしていることはありますか?

小川:私たちはお施主さんにまず好きになってもらって、私たちもお施主さんのことを好きになってからじゃないと仕事ができないんですね。お施主さんとどんなお庭を造るかお話をする時でも、どんな木や石が好きかなど素材のことを聞くのではなく、どんな音楽や食べ物が好きで、休みの日には何をしているのかを聞くんですね。このお庭でこういう音楽を聴いてくれたらいいなとか、休日に本を片手にコーヒーが飲んでくれたらいいなということを考えたいんです。お施主さんがどんな営みをされているかというところが鍵で、それがわかってからじゃないと造れないのでどうしても時間がかかってしまうんです(笑)。

Q.個人のお庭などでは守らなくてはいけないことも多そうですね。

小川:お庭というのはまさに守秘義務の塊なんですよ。例えば、ひとつの庭を解説する時に、この庭には何百本の木があって、この石はどこそこの山から持ってきて云々ということが書かれていることもありますよね。でも、ピカソの絵にどんな絵具が使われて、この筆はいくらだったかとかそんな説明はないじゃないですか。それよりも大切なのはそこに込められた思いですよね。色んな家に大なり小なり庭があるなかで、それぞれのお庭のことを本当に伝えようとすると、そこにある思いやその背景から説明しないといけないんですが、プライバシーについて言えないことも多い。でも、「ここまでしかお話はできないけど、実はこの庭にはこういう思いがあって、だからここから見るとちょっと良く見えてきませんか?」というようなことを伝えていきたいなと思っているんです。<インタビュー終わり>

もっと知りたい人は…

  • 井口皓太 

    井口皓太

    クリエイティブディレクター
    映像作家

    1984年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科在学中に株式会社TYMOTEを創立。以後グラフィックデザインを軸に、様々なビジュアルコミュニケーションを行っている。自身は映像作家として活動。近作として『Kanji City Kyoto』、HaKU MV 『everything but the love』、SOUR MV 『Life is Music』など。

  • 小川勝章 

    小川勝章

    作庭家

    1973年生まれ。幼少期の多くを庭園にて過ごす。1989年高校入学時に父である11代小川治兵衞に師事。思春期の多くを庭園掃除にて過ごす。96年立命館大学法学部を卒業し、造園植治入社。新たにご縁をいただく庭園や、歴代及び当代の手掛けた庭園において、作庭・修景・維持を続ける。近年は7代小川治兵衞が最も精魂を注いだある庭園において、次代へと繋がる作庭・修景・維持に取組む。また、講演やワークショップにおいて、庭園に重ねられた思いの伝達に努めている。1級造園施工管理技士、京都精華大学非常勤講師(名城大学特別非常勤講師等を歴任)、「京都市DO YOU KYOTO? 大使」。