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井口皓太

クリエイティブディレクター
映像作家

小川勝章

作庭家

今回カンバセーションズに登場する井口皓太さんは、デザインオフィス「tymote」の代表を務めるアートディレクター。この秋に、京都を拠点とするクリエイティブエージェンシー「世界」を新たに立ち上げるなど、精力的な活動を続ける井口さんがインタビューするのは、京都の無鄰菴平安神宮円山公園などを作庭し、近代日本庭園の先駆者と言われた七代小川治兵衞をはじめ、江戸時代より数々の名庭園を手がけてきた「造園植治」の小川勝章さん。講演やワークショップなどを通して、庭園文化の発信にも力を入れている小川さんに、庭造りの真髄について伺ってきました。

3. 庭には何を伝えることができますか?

小川勝章 

見た目のお庭はもちろんですが、その向こうにある見えない思いや、言葉になっていない情報も伝えたいんです。

Q.普段自分が作っているものは、一度完成してしまうとそこから形が変わることはなく、それがもったいないと思うことがあるんです。もしお庭のようにその人の気分やタイミングによって見えるものが変わっていくようなものが作れたら、それは人の心に一生残るものになるのかもしれないなと。

小川:七代小川治兵衞が最も精魂を注いだ個人のお庭があって、そちらをいま私がお預かりしているんですね。人様の庭にも関わらず、子供の頃はそこでサワガニなんかを取っていた僕にとっても凄く大事なお庭で、自分を包み込んでくれるような存在だったんです。大学を卒業してからは色んなお庭に行くようになりましたが、いまでもこのお庭は僕の人生の教科書みたいなものなんです。特にきらびやかなわけでもなく、パッと見ただけではよくわからないお庭なんですね。でも、逆に目を引くようなアトラクションがある庭というのは最初に見て良いと思うけど、再訪しない場合も少なくない。一方でこのお庭にいると、ある日突然「この石がこっちを向いているから、この先にあれが見えるのか」というようなことをいきなり教えられることがあるんです。ある意味自分を試されているようなお庭で、毎日発見がある。だからこそ何度でも行きたいと思うんですね。自分の心持ちや天候などによって、同じものがまったく違って見えてくるんです。

Q.それが生きている自然の素材を使ってものを作ることの強みのような気がします。

小川:特に私たちは自然をイメージしたお庭というものを作風にしているのですが、そもそもお庭というのは人工の産物で、本来は造形物の固まりなんです。自然と言いつつもどこかの山を削ったりしていて、それらをトラックで少し移動させているだけとも言える(笑)。でも、そこには自然への憧れというものがあって、その象徴化された姿がお庭だと思うんですね。こんな自然、あんな自然、あなたに送る自然というものを作っているのですが、そのなかで私たちは手を加えれば加えるほど自然に見えてくるお庭というものを目指しているんです。そういう意味で岩倉実相院さまのような枯山水の庭を作ることは実は少ないんです。枯山水というのは、自然というところよりも、日本の大事な見立ての発想を凝縮したお庭なんですね。

Q.見立てという話は僕らの仕事にも凄くつながるところだと思います。僕らは、一枚の画面の中で色んな見立てをしながら、自分たちがイメージする宇宙や作品の世界を見せつけようとしているんですね。実際に庭をテーマにしたCG映像を作ったこともあるんですよ。

小川:凄くウキウキしてきますね。庭を題材にもっと色々作ってくださいよ(笑)。私はいま京都精華大学で、ちょっとした空間を学生さんたちと一緒に作っているんですね。彼らは、私が聴いてきた音楽とは全然違うものを聴き、全然違う人を尊敬してきた人たちで、そうした感覚をお庭にすることができたら、私たちが知らないようなものができるかもしれないと思うんです。私はどんなものでもお庭になると思っていて、例えば海外に行けば海外にしかない素材があるだろうし、極端な話、無機質なものを使ってもお庭を造ることは表現として可能だと考えています。私たちは、見た目のお庭はもちろんですが、その向こうにある見えない思いや、言葉になっていない情報も伝えたいんです。むしろ見えないもの方が大切で、それを見える側の人間からいかに伝えていけるか。そのための表現というのは色々あるだろうし、そこには凄く興味があるんです。<続く>

もっと知りたい人は…

  • 井口皓太 

    井口皓太

    クリエイティブディレクター
    映像作家

    1984年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科在学中に株式会社TYMOTEを創立。以後グラフィックデザインを軸に、様々なビジュアルコミュニケーションを行っている。自身は映像作家として活動。近作として『Kanji City Kyoto』、HaKU MV 『everything but the love』、SOUR MV 『Life is Music』など。

  • 小川勝章 

    小川勝章

    作庭家

    1973年生まれ。幼少期の多くを庭園にて過ごす。1989年高校入学時に父である11代小川治兵衞に師事。思春期の多くを庭園掃除にて過ごす。96年立命館大学法学部を卒業し、造園植治入社。新たにご縁をいただく庭園や、歴代及び当代の手掛けた庭園において、作庭・修景・維持を続ける。近年は7代小川治兵衞が最も精魂を注いだある庭園において、次代へと繋がる作庭・修景・維持に取組む。また、講演やワークショップにおいて、庭園に重ねられた思いの伝達に努めている。1級造園施工管理技士、京都精華大学非常勤講師(名城大学特別非常勤講師等を歴任)、「京都市DO YOU KYOTO? 大使」。