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井口皓太

クリエイティブディレクター
映像作家

小川勝章

作庭家

今回カンバセーションズに登場する井口皓太さんは、デザインオフィス「tymote」の代表を務めるアートディレクター。この秋に、京都を拠点とするクリエイティブエージェンシー「世界」を新たに立ち上げるなど、精力的な活動を続ける井口さんがインタビューするのは、京都の無鄰菴平安神宮円山公園などを作庭し、近代日本庭園の先駆者と言われた七代小川治兵衞をはじめ、江戸時代より数々の名庭園を手がけてきた「造園植治」の小川勝章さん。講演やワークショップなどを通して、庭園文化の発信にも力を入れている小川さんに、庭造りの真髄について伺ってきました。

2. 庭は誰のためにあるのですか?

小川勝章 

何のために庭を手入れするのかというと、人に喜んでもらうためであって、やっぱり人がいないお庭というのは寂しいものなんです。職人仕事がベースになりますが、人の心持ちを察し具現化するサービス業だとも考えています。

Q.その庭がもともと誰のためにあったのか、そして現在の価値は何なのかということを考え直すというお話は凄くよくわかります。僕たちの仕事でも、クライアントをまず意識するということはとても大事だと思っているんですね。ただ、例えば広告業界という誰かが誰かのために作った仕組みなどによって、自分たちが作るものの価値に対する意識が、どこかズレてきているような気がしていたんです。そこで、自分たちで新たな価値を作り直すために「世界」という会社を京都に設立したんです。小川さんもお庭の仕事や、京都市「DO YOU KYOTO?」大使などの活動を通して新しい価値を伝えようとしているような気がします。

小川:なんでも一人よがりになってしまうと良くないと思うんですね。例えば、お庭の仕事にしても、木の剪定をする時に目の前の木一本としか対話しない人がいるんです。もちろん、木を美しくすることは大切なんですが、この木を美しく見せるためには、庭との関係や空間の中でのその木の必要性ということを考えないといけないんです。つまり、木の手入れをする前に、お庭の手入れを考える必要があるんですが、それができる人は意外に少ない。木がいくら立派でも、それによって灯籠が見えなくなってしまったらもったいないですよね。結局、私たちが何のために庭を手入れするのかというと、人に喜んでもらうためであって、やっぱり人がいないお庭というのは寂しいものなんです。職人仕事がベースになりますが、人の心持ちを察し具現化するサービス業だとも考えています。

Q.目の前のものを美しくすることだけに徹していては、作り手として不十分ということなんですね。

小川:それはそれである種のスペシャリストと言えると思います。でも、私としては、お庭は人に見て喜んでもらうためのものであり、そのために木や石があると考えています。お庭というのは難しい顔をして見ないといけないというイメージが強く、敷居が高くなってしまっていて、あまりにも日常と距離が開きすぎてしまっている気がします。「家庭」という言葉が、「家」と「庭」という字でできているように、庭というのはもっと日常に当たり前にあるものなんですね。いまはお金を払って見に行くものになっていますが、そういう非日常の庭も大切な一方で、植木鉢ひとつでも自分の手元に自然を感じることが大事だと思っています。遠ざかってしまった人と庭の距離を縮めたいという思いが自分の中にあるんです。車や時計のように、かつてお庭がステータスだったこともありましたが、いまはもうそういう時代ではありません。一部の方しかお庭が持てないという現実もあるかもしれませんが、ちょっとした心がけや思いを持つだけでお庭は身近な存在となり、現代ならではの向き合い方もできるのはないでしょうか。

岩倉実相院でのワークショップの模様。

Q.小川さんには庭本来の魅力を翻訳して一般の人に伝えるという役割があるんですね。

小川:はい。この実相院さまのお庭は、一般の方たちと一緒に作っているんです。前回のワークショップでは60人くらいの人にお庭を体感して頂くという主旨で、みんなで見様見真似で苔をはったりしていったのですが、お庭にこれだけの人が入るということはないので、とても楽しい光景でした。お庭には普通の人が入ってはいけないと思われがちですが、庭に人が入ることで動きが生まれてくる気がするんです。自分たちで造った庭には愛着も湧くし、苔が枯れないかとみんな気になってしかたないんですね。ともすれば職人のルーティンワークになりかねない仕事も、参加してくれる人たちにとっては思い出になるんです。例えば、小学校の頃にお父さんが入学記念で庭に植えてくれた桜の木を大人になって見ると、当時の記憶が甦りますよね。お庭というのは、時として人生にとって大事なものになる。こうしたオープンなお庭造りというのは今後も模索していきたいと思っています。<続く>

もっと知りたい人は…

  • 井口皓太 

    井口皓太

    クリエイティブディレクター
    映像作家

    1984年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科在学中に株式会社TYMOTEを創立。以後グラフィックデザインを軸に、様々なビジュアルコミュニケーションを行っている。自身は映像作家として活動。近作として『Kanji City Kyoto』、HaKU MV 『everything but the love』、SOUR MV 『Life is Music』など。

  • 小川勝章 

    小川勝章

    作庭家

    1973年生まれ。幼少期の多くを庭園にて過ごす。1989年高校入学時に父である11代小川治兵衞に師事。思春期の多くを庭園掃除にて過ごす。96年立命館大学法学部を卒業し、造園植治入社。新たにご縁をいただく庭園や、歴代及び当代の手掛けた庭園において、作庭・修景・維持を続ける。近年は7代小川治兵衞が最も精魂を注いだある庭園において、次代へと繋がる作庭・修景・維持に取組む。また、講演やワークショップにおいて、庭園に重ねられた思いの伝達に努めている。1級造園施工管理技士、京都精華大学非常勤講師(名城大学特別非常勤講師等を歴任)、「京都市DO YOU KYOTO? 大使」。