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蓮沼執太

音楽家

藪前知子

東京都現代美術館 学芸員

今回のインタビュアーは、CDリリースやソロパフォーマンス、「蓮沼執太フィル/チーム」などチーム編成によるライブ、映画や舞台の音楽制作など幅広い分野で活躍する音楽家の蓮沼執太さん。そんな蓮沼さんがインタビュー相手に指名したのは、東京都現代美術館でキュレーターを務める藪前知子さん。日本を代表するアーティストのひとりである大竹伸朗さんの大規模個展「大竹伸朗 全景 1955-2006」などを担当した藪前さんに、同美術館で作品発表などをした経験も持つ蓮沼さんが聞きたいこととは?

※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。8月24日発売の『STYLESIGHT by FASHION FREAK with QUOTATION』VOL.4の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

5. 若い世代の感性をどう思いますか?

藪前知子 

共通点を感じるとしたら、予めイメージや到達点を決めるのではなく、素材と自由自在に戯れながら、あるがままに起こっている出来事を定着させていくような態度でしょうか。

Q.僕は今年で29歳になるんですけど、藪前さんがそのくらいの頃は何をしていましたか?

藪前:ちょうど就職と結婚をした頃ですね。そのふたつがほぼ同時だったので、長いモラトリアムから、人生が一気に動き出したような時期だったと思います。それまでは、モンドリアンなど美術史の研究をしていたのですが、まさに象牙の塔の中にいるような感じで、自分の可能性が狭まっていく感覚と、いい年して親に食べさせてもらっていることの葛藤はずっとあったんです。ほとんど休学しちゃって、アパレル会社でアルバイトばかりしてる時期もありましたね。

「MOTコレクション 入口はこちら 何がみえる?」泉太郎展示風景(2011)  Photo:木奥惠三

Q.僕は、同い年の作家の知り合いがまったくいないんですね。そういうこともあって、自分と同じ年だった時に、他の人がどんなことをしていたかということに興味があるんです。

藪前:私は74年生まれなんですけど、蓮沼くんと同じように作家さんで同い年の人が周りにあまりいないんですよ。同い年というだけで原稿の仕事を頼まれたりするくらい珍しいんですね(笑)。バブル世代とコギャル世代に挟まれたおとなしい団塊二世で、就職氷河期だったこともあり、作家という選択肢がなかなか厳しかったということもあるのかもしれません。ここ数年、コマーシャル・ギャラリーの若い世代が続々出てきていますけど、そのタイミングにも乗りきれなかったり。私より2、3歳下から、急にたくさん優秀な作家さんたちが出てきてるんですよね。

蓮沼執太フィル

Q.僕と同世代のアーティストに感じることはありますか?

藪前:共通点を感じるとしたら、予めイメージや到達点を決めるのではなく、素材と自由自在に戯れながら、あるがままに起こっている出来事を定着させていくような態度でしょうか。例えば最近、若い世代のペインターで抽象絵画に取り組む人が再び目立つように思うのも、こうしたことに関係しているかもしれません。複数の素材や個性、時間や空間が作品としてひとつに束ねられる。蓮沼くんのフィルが実現しているものもそれですよね。多文化主義を超えた、次のフェーズを予感させると言ってもいいかもしれません。

Q.そういう感覚はたしかにあるかもしれないですね。藪前さんのような仕事をしていると、自分が歳を重ねていくなかで、常に時代の先端を見極める感覚を保っていくという課題もありそうですね。

藪前:そこは難しい部分ですね。上の世代を見てきた限り、ある時点でレンジを変える人もいるように思います。リサーチを若い人に任せて、そのリストの中から作家を選んでいくようになる。リサーチしなくてはならない範囲は国内外膨大にありますし、それも理解できるのですが、私は、興味のある作家の成熟していく過程を丁寧に追っていきたい思いが現時点では強いです。一方で新しい表現に対しても、シーンの変遷を持続的に見てきた眼じゃないと、見つけられない部分もあると思うんです。いずれにしても、蓮沼くんは60になっても活動していると思うから、見守っていくつもりですよ(笑)。

Q.ぜひ見ていてください(笑)。<インタビュー終わり>

インフォメーション

藪前知子さんは現在、シンガポール国立大学美術館で2013年1月19日-4月21日に開催される国際交流基金との共催展「Omnilogue: Your Voice is Mine」を準備中。 蓮沼執太フィル初のツアー『蓮沼執太フィル|シーシーウー・セカンド・ツアー』が開催。9月8日京都printz、9日愛知芸術文化センター、10日東京リキッドルームの3公演が予定されている。また、2013年2月にはアサヒ・アートスクエアで個展を開催予定。

もっと知りたい人は…

  • 蓮沼執太 

    蓮沼執太

    音楽家

    1983年東京生まれ。「蓮沼執太フィル/チーム」を組織し、国内外のコンサート公演、展示作品の発表、舞台作品を制作する。エッセイなどの文章寄稿も多数。映画、展覧会、CF音楽、舞台芸術、ファッションとあらゆるジャンルとのコラボレーションを展開する。また自ら企画・構成をおこなう音楽祭「ミュージック・トゥデイ」を主催。主な展覧会に「have a go at flying from music part3」(東京都現代美術館|ブルームバーグ・パヴィリオン)、舞台作品「TIME|タイム」(神奈川芸術劇場)、最新アルバムに4枚組CD「CC OO|シーシーウー」(HEADZ/UNKNOWNMIX)がある。

  • 藪前知子 

    藪前知子

    東京都現代美術館 学芸員

    1974年東京生まれ。主な担当企画に「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006)、MOTコレクション「夏の遊び場 特集展示 伊藤存+金氏徹平」「特集展示 岡﨑乾二郎」(ともに2009)、「Plastic Memories - いまを照らす方法」、「入口はこちら なにがみえる?」(ともに2010)、「特集展示 石田尚志」(2011)など。共著に『クラシック・モダン 1930年代日本の美術』(2004/せりか書房)など。『美術手帖』ほかで現代美術についての寄稿多数。