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蓮沼執太

音楽家

藪前知子

東京都現代美術館 学芸員

今回のインタビュアーは、CDリリースやソロパフォーマンス、「蓮沼執太フィル/チーム」などチーム編成によるライブ、映画や舞台の音楽制作など幅広い分野で活躍する音楽家の蓮沼執太さん。そんな蓮沼さんがインタビュー相手に指名したのは、東京都現代美術館でキュレーターを務める藪前知子さん。日本を代表するアーティストのひとりである大竹伸朗さんの大規模個展「大竹伸朗 全景 1955-2006」などを担当した藪前さんに、同美術館で作品発表などをした経験も持つ蓮沼さんが聞きたいこととは?

※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。8月24日発売の『STYLESIGHT by FASHION FREAK with QUOTATION』VOL.4の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

4. 子どもにアートは必要ですか?

藪前知子 

母としては、現代美術に深くハマってほしくないという思いも実はあるかもしれません。

Q.いま藪前さんは産休中で、ふたりのお子さんがいらっしゃいますが、アートに興味を持っていますか?

藪前:いまのところ、あんまり持っていないですね。一度上の子と一緒に、テニスコーツ荒井良二さんのライブペイントに行って、最前列で見ていたんですが、荒井さんに一緒に描こうと誘われて…、親はもちろん狂喜しているんですが、本人は、自分にしか分からない形体を荒井さんの絵の上にグチャグチャっとした後、植野(隆司)さんのギターをグルグル回して遊んで帰ってきました(笑)。母としては、現代美術に深くハマってほしくないという思いも実はあるかもしれません。表現って、世界と自分の間にある違和感から生みだされてくるものだと思うんです。子どもには肉体的にも精神的にも世界にピッタリとハマった一生を送ってもらえたらな、なんて。でも、すでにテンポが独特な子なので、こっち側に来てしまうかもしれないですけどね(笑)。あとは、現代美術のひとつの形として、視覚や聴覚など、感覚を拡張させるものがあると思うのですが、子どもにそうした異常な経験がどこまで必要か、考えるところもありますね。感覚がスレて、何でもフラットに見えてしまうようになるんじゃないか、とか。

「大竹伸朗 全景 1955-2006」展示風景(2006)  Photo:平野晋子

Q.僕も子ども向けのワークショップをする機会があるんですが、なかなか難しいですよね。

藪前:そうですよね。「子どもらしさ」といっても無数にありますからね。たとえば、息子やお友達を見ていても、3歳くらいまでは意外にも、子どもたちは結構規範や規則に忠実なんです、世の中にあふれているルールを学んでいく過程なんだと思いますが、例えば「空は青」と一度決めてしまうと、それ以外のものを受け入れられなくなったりする。でも、4歳くらいになると、雲の形が動物に見えるとか、いわゆる「子どもらしい自由な発想」も出てきます。一方で、絵の場合で言うと、3歳まで描いていたような奔放な線ではなく、太陽を丸に放射線で描くとか、型にハマった表現も出てくる。「自由な感性」なんて適当に考えてると対応できないものがありますよね。勤めている美術館でも子ども向けのワークショップはよくやっているんですが、担当者は2日間のワークショップの準備に膨大な時間をかけています。子どもにとって、たった一度の出会いが計り知れない影響を及ぼすこともありますし、ごまかすということができないんだと思います。

Q.藪前さんは、お子さんを連れてそういうワークショップには行かないんですか?

藪前:上の子は4歳なのですが、未就学児のワークショップというのはまだ少なくて、泉太郎さんのものなど面白い経験をしたこともありますが、これからですね。いまは子どもたちに色んなことを体験させられる教室や施設がありますが、どうなのかなぁと思うものも多いですね。例えば人気のものでは、ヒップホップダンスとか。カウンターカルチャーというのは自分で発見してもらわないと。親がお金出して与えるものではないですよね(笑)。

Q.普通は親が反対するものですよね(笑)。

藪前:そうですよね。でも、内心では「そっちの方向いいぞ」みたいな感じですね(笑)。<続く>

インフォメーション

藪前知子さんは現在、シンガポール国立大学美術館で2013年1月19日-4月21日に開催される国際交流基金との共催展「Omnilogue: Your Voice is Mine」を準備中。 蓮沼執太フィル初のツアー『蓮沼執太フィル|シーシーウー・セカンド・ツアー』が開催。9月8日京都printz、9日愛知芸術文化センター、10日東京リキッドルームの3公演が予定されている。また、2013年2月にはアサヒ・アートスクエアで個展を開催予定。

もっと知りたい人は…

  • 蓮沼執太 

    蓮沼執太

    音楽家

    1983年東京生まれ。「蓮沼執太フィル/チーム」を組織し、国内外のコンサート公演、展示作品の発表、舞台作品を制作する。エッセイなどの文章寄稿も多数。映画、展覧会、CF音楽、舞台芸術、ファッションとあらゆるジャンルとのコラボレーションを展開する。また自ら企画・構成をおこなう音楽祭「ミュージック・トゥデイ」を主催。主な展覧会に「have a go at flying from music part3」(東京都現代美術館|ブルームバーグ・パヴィリオン)、舞台作品「TIME|タイム」(神奈川芸術劇場)、最新アルバムに4枚組CD「CC OO|シーシーウー」(HEADZ/UNKNOWNMIX)がある。

  • 藪前知子 

    藪前知子

    東京都現代美術館 学芸員

    1974年東京生まれ。主な担当企画に「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006)、MOTコレクション「夏の遊び場 特集展示 伊藤存+金氏徹平」「特集展示 岡﨑乾二郎」(ともに2009)、「Plastic Memories - いまを照らす方法」、「入口はこちら なにがみえる?」(ともに2010)、「特集展示 石田尚志」(2011)など。共著に『クラシック・モダン 1930年代日本の美術』(2004/せりか書房)など。『美術手帖』ほかで現代美術についての寄稿多数。