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蓮沼執太

音楽家

藪前知子

東京都現代美術館 学芸員

今回のインタビュアーは、CDリリースやソロパフォーマンス、「蓮沼執太フィル/チーム」などチーム編成によるライブ、映画や舞台の音楽制作など幅広い分野で活躍する音楽家の蓮沼執太さん。そんな蓮沼さんがインタビュー相手に指名したのは、東京都現代美術館でキュレーターを務める藪前知子さん。日本を代表するアーティストのひとりである大竹伸朗さんの大規模個展「大竹伸朗 全景 1955-2006」などを担当した藪前さんに、同美術館で作品発表などをした経験も持つ蓮沼さんが聞きたいこととは?

※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。8月24日発売の『STYLESIGHT by FASHION FREAK with QUOTATION』VOL.4の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

3. 自分の役割をどのように考えていますか?

藪前知子 

表現については、まだ萌芽であったり、主流ではなくオルタナティブなものに興味があるのですが、それをいかに社会とつないでいくかという時に、美術館の役割を忘れるわけにはいかないと思ってます。

Q. 僕は蓮沼執太フィルでオーケストラを組む上で、好きなものがバラバラな人たちをあえて集めて、雑味のある強さを提示していきたいという思いがあります。その人たちが持っている技術や経験を自分の器の乗せることで、また違う表現や味につながるということがあるんじゃないかなと。それは、展覧会をキュレーションしたり、収蔵品の中から新しい切り口や見せ方を考えていくこととも通じるところがあるような気がしています。

藪前:5年前くらいから収蔵品や常設展の担当をしているのですが、ちょうどその時期から美術館も若い世代の作品を積極的に収集するようになったんですね。それまでは個展をした作家や、アニュアルなど展覧会でつながりのできた作家の作品を購入していたのですが、いまは、収蔵からいきなり関係が始まるような、先端の表現も収蔵していこうという方針になっています。先端を追いかけつつ、同時にそれを美術館の中に収めて歴史化していくということには矛盾もあると思うんです。それをよく表しているのが「現代美術館」という言葉ですね。「美術館」というお宝収蔵庫のようなところで「現代」とは何かを見せるわけですから。でも、そうした最新の動向と、既存の収蔵作品を同じ空間の中で見せていくことで、現代の感性や切り口で過去の作品を再解釈したり、蘇らせる方法というのは常に考えていますね。

MOTコレクション 特集展示 岡﨑乾二郎」展示風景(2009)  Photo:木奥惠三  

Q.東京都現代美術館は、収蔵品展にエッジがあるというのも好きな理由のひとつなんです。収蔵展示のファンも確実にいますよね。

藪前:ただひとつの作品を収蔵して終わりではなく、過去、その後の展開までも踏まえてアーカイブを作っていくべきだと考えています。最近毎回企画している「特集展示」では、新収蔵品に併せて、その作家の総体を紹介することをねらいにしています。それをきっかけに、作家やその周辺にいた人たちと息の長い関係を築いていかなくてはと。また日本の美術館の場合は、若い世代や巨匠の発表の機会はあっても、40~50代の中堅の人たちの表現がなかなか見られない状況があります。「特集展示」では、そうした、ブレイクのその後の展開を追っていくこともできると思っています。

Q.藪前さんの中には強い使命感のようなものがありそうですね。

藪前:そうかもしれませんね。私は、インスティテューションに所属する人間だということは常に自覚していると思います。表現については、まだ萌芽であったり、主流ではなくオルタナティブなものに興味があるのですが、それをいかに社会とつないでいくかという時に、美術館の役割を忘れるわけにはいかないと思ってます。目先の流行に乗るのではなく、持続的にそうした表現の成熟を追っていく責任があるのではないかということです。<続く>

インフォメーション

藪前知子さんは現在、シンガポール国立大学美術館で2013年1月19日-4月21日に開催される国際交流基金との共催展「Omnilogue: Your Voice is Mine」を準備中。 蓮沼執太フィル初のツアー『蓮沼執太フィル|シーシーウー・セカンド・ツアー』が開催。9月8日京都printz、9日愛知芸術文化センター、10日東京リキッドルームの3公演が予定されている。また、2013年2月にはアサヒ・アートスクエアで個展を開催予定。

もっと知りたい人は…

  • 蓮沼執太 

    蓮沼執太

    音楽家

    1983年東京生まれ。「蓮沼執太フィル/チーム」を組織し、国内外のコンサート公演、展示作品の発表、舞台作品を制作する。エッセイなどの文章寄稿も多数。映画、展覧会、CF音楽、舞台芸術、ファッションとあらゆるジャンルとのコラボレーションを展開する。また自ら企画・構成をおこなう音楽祭「ミュージック・トゥデイ」を主催。主な展覧会に「have a go at flying from music part3」(東京都現代美術館|ブルームバーグ・パヴィリオン)、舞台作品「TIME|タイム」(神奈川芸術劇場)、最新アルバムに4枚組CD「CC OO|シーシーウー」(HEADZ/UNKNOWNMIX)がある。

  • 藪前知子 

    藪前知子

    東京都現代美術館 学芸員

    1974年東京生まれ。主な担当企画に「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006)、MOTコレクション「夏の遊び場 特集展示 伊藤存+金氏徹平」「特集展示 岡﨑乾二郎」(ともに2009)、「Plastic Memories - いまを照らす方法」、「入口はこちら なにがみえる?」(ともに2010)、「特集展示 石田尚志」(2011)など。共著に『クラシック・モダン 1930年代日本の美術』(2004/せりか書房)など。『美術手帖』ほかで現代美術についての寄稿多数。