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蓮沼執太

音楽家

藪前知子

東京都現代美術館 学芸員

今回のインタビュアーは、CDリリースやソロパフォーマンス、「蓮沼執太フィル/チーム」などチーム編成によるライブ、映画や舞台の音楽制作など幅広い分野で活躍する音楽家の蓮沼執太さん。そんな蓮沼さんがインタビュー相手に指名したのは、東京都現代美術館でキュレーターを務める藪前知子さん。日本を代表するアーティストのひとりである大竹伸朗さんの大規模個展「大竹伸朗 全景 1955-2006」などを担当した藪前さんに、同美術館で作品発表などをした経験も持つ蓮沼さんが聞きたいこととは?

※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。8月24日発売の『STYLESIGHT by FASHION FREAK with QUOTATION』VOL.4の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

2. どんなアーティストに惹かれるのですか?

藪前知子 

良い作家さんって、人を動かす力がスゴく強いと思うんですね。知らず知らずのうちに、多くの人がその人のために自然に動いていってしまうような吸引力がある。

Q.藪前さんは美術館で学芸員の仕事をしているのに、僕みたいな人のコンサートにもいらっしゃいますよね。それが珍しいというか、そういう感性やアンテナの張り方は面白いし、スゴく気になるところなんですよね。

藪前:私が主に見ているシーンは現代美術ですが、蓮沼くんの音楽にしても新しい世代の演劇にしても、それぞれの表現手段のあり方を批評する視点があって、地続きで同じ態度を共有しているように感じているし、区別なく見ているところがありますよ。蓮沼くんの活動は、音楽を聞く喜びや楽しみを凝縮して与えてくれる一方で、音楽を素材に、作品内部の自律した時間であるとか、共同体のモデルであるとか、重要なテーマをいくつも含んでいる。それはアートも他のジャンルも共有している問題ですよね。

「大竹伸朗 全景 1955-2006」展示風景(2006) Photo:平野晋子

Q.もともと藪前さんは音楽もよく聴いていたんですか?

藪前:昔パンクバンドをやっていたんですよ。でも、雑食だったのでクラシック音楽もしっかり聴いたし、蓮沼君が昔聴いていたというヒップホップも。ブッタブランドとかも聴いていたし、90年代のはじめくらいには(山塚)アイさんがラップやったり、ジャンルがもっとゴチャゴチャしている面白い時期がありましたよね。

「大竹伸朗 全景 1955-2006」展示風景(2006) Photo:平野晋子

Q.まさかここでブッダブランドの話が出るとは(笑)。こういう話を学芸員仲間とすることはあるんですか?

藪前:私の周りだけかもしれませんが、デヴィッド・ボウイファンがやたら多いかも(笑)。デヴィッド・ボウイはもちろん、トニー・アウスラーをアートワークに起用したり、現代美術の推進者的存在ですが、ブライアン・フェリーあたりとポップアートの繋がりから入っていった人も多いのかもしれないですね。ただ、音楽と自分がいま携わっている現代美術が乖離している状況というのは感じますね。私の学芸員としての原体験は、大竹伸朗さんの回顧展のキュレーションなのですが、大竹さんはその問題をずっと考えてきた人ですね。この展覧会の時に大竹さんは「これは50年後のパンクのための展覧会だ」と言われていて。

Q. …カッコ良すぎますね。そんな言葉なかなか出てこないですよ。

藪前:私自身もこの展覧会の精神を今後に伝えていかないとダメだって言われましたね。音楽に限らず、独自の領域を作っているのにジャンルのはざまで居心地悪くしている、これからの世代の表現者たちをつないでいく仕事ができるはずだろうって。良い作家さんって、人を動かす力がスゴく強いと思うんですね。知らず知らずのうちに、多くの人がその人のために自然に動いていってしまうような吸引力がある。ただ、ぶつかることもあります。作家さんはどこまでも自己を拡張していく人たちですが、キュレーションは、それを箱の中に落とし込む作業でもありますので…。でも、その箱が揺るがされるくらいでないと面白くないですし、どんな経緯があっても、表現する人たちへの尊敬の念は変わらないです。 <続く>

インフォメーション

藪前知子さんは現在、シンガポール国立大学美術館で2013年1月19日-4月21日に開催される国際交流基金との共催展「Omnilogue: Your Voice is Mine」を準備中。 蓮沼執太フィル初のツアー『蓮沼執太フィル|シーシーウー・セカンド・ツアー』が開催。9月8日京都printz、9日愛知芸術文化センター、10日東京リキッドルームの3公演が予定されている。また、2013年2月にはアサヒ・アートスクエアで個展を開催予定。

もっと知りたい人は…

  • 蓮沼執太 

    蓮沼執太

    音楽家

    1983年東京生まれ。「蓮沼執太フィル/チーム」を組織し、国内外のコンサート公演、展示作品の発表、舞台作品を制作する。エッセイなどの文章寄稿も多数。映画、展覧会、CF音楽、舞台芸術、ファッションとあらゆるジャンルとのコラボレーションを展開する。また自ら企画・構成をおこなう音楽祭「ミュージック・トゥデイ」を主催。主な展覧会に「have a go at flying from music part3」(東京都現代美術館|ブルームバーグ・パヴィリオン)、舞台作品「TIME|タイム」(神奈川芸術劇場)、最新アルバムに4枚組CD「CC OO|シーシーウー」(HEADZ/UNKNOWNMIX)がある。

  • 藪前知子 

    藪前知子

    東京都現代美術館 学芸員

    1974年東京生まれ。主な担当企画に「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006)、MOTコレクション「夏の遊び場 特集展示 伊藤存+金氏徹平」「特集展示 岡﨑乾二郎」(ともに2009)、「Plastic Memories - いまを照らす方法」、「入口はこちら なにがみえる?」(ともに2010)、「特集展示 石田尚志」(2011)など。共著に『クラシック・モダン 1930年代日本の美術』(2004/せりか書房)など。『美術手帖』ほかで現代美術についての寄稿多数。