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橋詰 宗

デザイナー

江村幸紀

レコードレーベル・オーナー
エム・レコード

カンバセーションズには2度目の登場となるデザイナーの橋詰 宗さん。前回インタビューした銀座のバー「ロックフィッシュ」の店主・間口一就さんから一転、今回彼がインタビュー相手として指名したのは、大阪を拠点に活動するレコードレーベル「エム・レコード」のオーナー、江村幸紀さん。ジャンルを問わず、自らの琴線に触れる古今東西の音楽を世界に向けて発信し、コアな音楽ファンの心を掴んで離さない江村さんのこだわりに、橋詰さんが迫ります。
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4. 国内の音楽事情はどうですか?

江村幸紀 

こんな小さい国がある意味世界をリードしているといっても過言ではない状況になっています。

Q.1年前にタイに行ってきたのですが、最近はタイの音楽なども日本で手に入れやすい状況になっていて、前から興味を持っていたんですね。そんな中で「Zudrangma Records」というバンコクのレコード屋に行き、お店の人と長話をさせてもらいました。タイには、エム・レコードさんも過去にリリースしている「モーラム」という伝統音楽があって、とても面白いですよね。

江村:凄く独特でファンキーな民謡なんですよね。ただ、もともとタイはレコードが流通していた時代が短いから、”埋蔵量”自体が少ないんですよ。「Zudrangma Records」のナット君は、もともとイギリスに留学していて、DJをしていたんですが、レア・グルーヴのような感覚で、自分の国の古い音源を掘り返していくようになったらしいんです。モーラム全盛期の60〜70年代前後の関係者で亡くなってしまっている人も多く、ここ数年はモーラムの音源のアーカイブ化を必死でやっているそうです。

Q.最近はアフリカ諸国のレコードの発掘が進んでいたり、一方でロシアの戦前戦後のクラシック音楽を収集している人なんかもいるんですが、集める人それぞれの好みが見えて面白いですよね。そういえば、タイのバンコクでは最近タケノコのようにビルが乱立しているように、急速な近代化の流れのなかで、どうしてもみんな新しいものに向かってしまうらしいんですね。「Zudrangma Records」の店長も、レコードから、CD、ダウンロードへと流れていくなかで、古いものを残すことの難しさについて話していました。

江村:昔の日本も似たようなところがあって、音楽スタジオなどにしても、デジタル技術が入ってきた時期に、アナログ機材を一気に捨ててしまったんですね。気がつくと、レコードがプレスできる工場が国内で1ヶ所だけになってしまったり、当時の良いアナログ機材などもなくなってしまっている。大量消費時代に入って、新しいものにしか目が向かなくなるという状況は、かつて我々も経験していることなんですよね。ただ、実はいま日本は音楽ソフトの販売量がアメリカを抜いて世界ナンバーワンになっているらしくて、こんな小さい国がある意味世界をリードしているといっても過言ではない状況になっています。我々日本人には車を買い揃えるような趣味は合わなそうだし、レコードを集めるというくらいが、趣味としてちょうど良いサイズなのかもしれないですね。

大野松雄「鳥獣戯楽」(エム・レコード)

Q.音響デザイナーの大野松雄さんが世界の民謡と万博のテーマ曲を動物の声のみで表現した70年代の音源『鳥獣戯楽』を再発するなど、国内の個性的な作品もリリースしていますが、日本の音楽についてはどう捉えていますか?

江村:日本でも好きなアーティストはたくさんいますが、先に話したようにうちのレーベルのカラーやヴィジョンに適う人はそんなにいないんですよね。本当は新録ももっとやりたいのですが、いまは子どももいるのでなかなかライブなどにも出ていけないので、あまり新しい出会いというものがないんですよ。<続く>

インフォメーション

日本が世界に誇るポストパンク・バンド、サボテンの作品が2枚組LPとして、エム・レコードより6月発売予定。その他にも、ブレンダ・レイのNaffi Sandwich名義のコレクション、フィニス・アフリカエの12インチ、ノー・ライト・ターンをはじめ、年内にさまざまな作品のリリースが予定されている。詳細はエム・レコードのWebサイトにて。
6月11日発売の雑誌「アイデア」にて、16ページにわたる橋詰 宗さんの特集「デザインあの手この手ー橋詰宗とその実践」が掲載予定。

もっと知りたい人は…

  • 橋詰 宗 

    橋詰 宗

    デザイナー

    1978年広島県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA) コミュニケーションアート&デザイン修士課程修了。さまざまな領域のアートディレクション、ブックデ ザイン、ウェブデザイン等を手掛ける一方、『D♥Y』『HUMAN PRACTICE』『何に着目すべきか?』『紙と束見本』『(   )も(   )も(   )も 展』など実践と着目点をコンセプトにしたワークショップ、スクールや展覧会ディレクションを手がける。

  • 江村幸紀 

    江村幸紀

    レコードレーベル・オーナー
    エム・レコード

    1970年生まれ。98年にエム・レコードを立ち上げて以来、大阪を拠点にレコードレーベルを運営。「聴いて、見て、読んで楽しむというエンターテイメントをひとつのソフトに封じ込める」ことを掲げ、作品の制作を続けている。