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長谷川踏太

クリエイティブディレクター

田中康夫

小説家

カンバセーションズには2回目の登場となるクリエイティブディレクターの長谷川踏太さん。前回の棋士・渡辺明さんに続き、今回長谷川さんがインタビューするのは、衆議院議員、参議院議員、長野県知事を歴任した作家の田中康夫さん。社会現象となった1981年のデビュー小説『なんとなく、クリスタル』(「もとクリ」)を皮切りに、数多くの著作を発表し、2014年には『33年後のなんとなく、クリスタル』(「いまクリ」)を刊行。各方面から注目を集めた田中さんに、長谷川さんが聞きたいこととは?

3. 「連帯」と「連携」の違いは何ですか?

田中康夫 

「連帯」というのは、拳を振り上げて大文字の「正義」を語る感じ。「連携」は、一人ひとりができることをできる時に、できる場でできる人とできる限り行う、しなやかなネットワークですね。

Q.田中さんの「ユナイテッド・インディビジュアルズ」という考え方に高校生の頃に初めて触れたのですが、これについてもお話を聞かせてください。

田中:僕が長野県知事をしていた頃、隣の自治体が50億円で体育館を作ったから、うちは80億円で文化ホールをつくろうというような話がよくあったんですね。でも、彼らはいざそれができた時に、そこで何をすれば良いのかがわからないわけです。例えば、電気やガスというのは偉大な発明だけど、それらがそのまま置いてあるだけだと人は殺傷されてしまう。要は、それらを使って何を提供できるか、その時に初めてコンテンツになるということです。電気やガスの発明=コンテンツと勘違いしてしまうのは「自立」を求める社会なんですが、僕は「自立」よりも「自律」が大切だと考えています。「連帯を求めて孤立を恐れず」を掲げた全共闘運動は、やがて内ゲバになっていったわけです。望ましいのは、「自律を求めて連携を恐れず」ということなんです。「連帯」というのは、拳を振り上げて大文字の「正義」を語る感じ。「連携」は、一人ひとりができることをできる時に、できる場でできる人とできる限り行う、しなやかなネットワークですね。

Q.「連帯」だと身動きが取りにくくなってしまうところがありますよね。もっとうまい形での「連携」というものが必要になってくるのかもしれません。

田中:「微力だけど無力じゃない」という言葉を、「いまクリ」の中で由利がつぶやいています。考えてみれば僕は、人は判り合えないからこそ会話をするんだと、ずっと本の中で書いてきたのだと思う。恋人であれ夫婦であれ、DNAがつながっている親子であれ、100%同じ意見になることはあり得ないはずなんです。それを可能なんだと思い込んでしまうことが、先ほどお話しした「キッパリ」という言葉につながってしまう。理解し合えないからこそ人は対話をするし、政治や外交も、言葉こそが命なのに問答無用だったり、経済でも、パワーポイントで数字を示せばみんなが理解できるという考え方に、日本のみならず世界が向かいつつあるのかなと。

(左)『日本を』(2006)、(右)『憂国呆談』(1999)

Q.それが、マニュアル至上主義や同調圧力が強まっている現代社会の姿なのかもかもしれないですね。

田中:たしかにね。最近はテレビだけでなく新聞まで、「ここまで言ったら、どこかから文句をつけられるんじゃないか」と、“なんとなくの空気”の中で自主規制をしてしまっているわけですよね。人々が感じていても、なかなか口に出せないことを述べてこそ「メディア」なのに、そこに生息している面々ほど、公務員的な事なかれに陥っているという矛盾ね。それが結果として、「強きを助け、弱きを挫く」という新しい格言を生んでしまっている。まあ、「地位は人を駄目にする」「富すれば鈍する」という格言もあるからね。だからこそ、「微力だけど無力じゃない」と一人ひとりがコミュニティの中で踏ん張る気持ちを持たないと。<続く>

インフォメーション

『33年後のなんとなく、クリスタル』刊行記念&『ソトコト』連載『憂国呆談』25周年記念公開対談 浅田彰×田中康夫「『もとクリ』『いまクリ』から現在の日本、そして未来まで!」が、4月25日に紀伊國屋サザンシアターで開催。また、100枚のAORのアルバムを朝・昼・夕方・夜とシチュエーション別に、100の物語を展開し、参考アルバム・リスト786枚も網羅した1984年刊行の幻の単行本『たまらなく、アーベイン』が、5月下旬に河出書房新社から復刊予定。
田中さんの出演番組文字起こし「いまクリ」書評等一覧オフィシャルサイトで公開中。

もっと知りたい人は…

  • 長谷川踏太 

    長谷川踏太

    クリエイティブディレクター

    1972年東京生まれ。1997年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。その後、ソニー株式会社デザインセンター、ソニーCSLインタラクションラボ勤務などを経て、2000年ロンドンに本拠を置くクリエイティブ集団tomatoに所属。インタラクティブ広告から創作落語まで、そのアウトプットは多岐にわたる。2011年よりワイデン+ケネディ トウキョウのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任。

  • 田中康夫 

    田中康夫

    小説家

    新党日本代表、前参議院議員、前衆議院議員、作家、前長野県知事。1956年東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。大学在学中に書いた『なんとなく、クリスタル』(河出文庫)で昭和55年度(1980年)の文藝賞を受賞。2000年長野県知事に就任。2005年、「新党日本」を立ち上げ代表となる。2007年比例区にて参議院議員当選。2009年兵庫8区(尼崎市)より衆議院議員に当選。『神戸震災日記』(新潮文庫)、『東京ペログリ日記大全集①~⑤』『ナガノ革命638日』(以上扶桑社)、『日本を-ミニマ・ヤポニア』(講談社)、『田中康夫が訊く食の極み』(光文社)、『ニッポン解散 続・憂国呆談』(淺田彰氏との共著)、『田中康夫主義』(以上ダイヤモンド社)など著書多数。tanaka@nippon-dream.com