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萩原俊矢

ウェブデザイナー

須藤健一

国立民族学博物館 館長
文化人類学者

今回インタビュアーを務めてくれるのは、「カンバセーションズ」のサイトデザインを手がけるcookedのメンバーであり、普段はフリーランスのWebデザイナー/プログラマーとして活動している萩原俊矢さん。単独では初めてのカンバセーションズ参加となる萩原さんが、”いま話を聞きたい人”として挙げてくれたのは、大阪・国立民族学博物館(通称:みんぱく)の館長で、文化人類学者の須藤健一さん。インターネット時代における新たなリアリティの在り方に着目する「インターネット・リアリティ研究会(ICC)」にも名を連ねる萩原さんが、独自の視点で文化人類学/民族学の核心に迫ります。

インタビューを終えて

萩原俊矢 

これからも民族学的なアプローチに学び、そしてインターネットとともに歩んでいきたいと思うインタビューになりました。

「僕が高校生の頃、Flashというソフトウエアが流行し、多くのサイトがFlashによってダイナミックに動くものになりました。しかし、それから数年が経ち、iOSやHTML5、jQueryといった『まったく新しい』技術が登場することで、Flashは下火になり、多くの人がたくさんの時間を費やして生まれた創作物は、ほとんどアーカイブされることもなく見かける機会は減っていきました。簡単に作って公開できるFlashですが、閲覧にプラグインが必要だったり、サーバーと連携するような複雑なコンテンツも多かったため、それらを残すには依存環境をまるごとを保存する必要がありました。そのため名作といわれた多くの作品はすでに見られなくなっています。
これはFlashに限らず、多くのデジタル作品に言えることで、大体の作品はOSのアップデートとともに動かなくなってしまう可能性を含んでいます。
僕は国立民族学博物館を訪れて、色々な衝撃を受けたのですが、そのひとつに各国の”言語”や”パン”などが展示されていたことがあります。もちろんすべてのパンを展示するわけにはいかないので、ヨーロッパの地域ごとに特色のあるパンがレプリカにされ、解説とともに展示されるのを見て、形式が曖昧なある”状況”を展示することのへの工夫に驚いたことを覚えています。
見られることを前提とした絵画以上に、パンや言語というのは抽象的で固定しにくものだと思います。このことがインターネットやデジタル作品のような『複雑で依存関係の強い状況や情報をまとめる』ことのヒントになるのではと考えるきっかけになりました。今回のインタビューで須藤館長が『みんぱくは博物館ではなく、情報を展示するという点では博情館とも言える』と仰っていたのが印象に残りました。
2004年に始まったとされるweb2.0から10年が経とうとしている今日のインターネットには、アニメーションのキャラクターや既存のコンテンツを別の作品へと作り変える、生産者とも消費者とも分類しがたい表現者がたくさん存在しています。
誰もが日常的に行っているつぶやきやシェア、短い動画、自分撮りを共有すること、そういう生産と消費の連鎖によって人々はコミュニケーションする時代になりました。
このようにすべてがフラットになってしまうネット上で、『どこまで』を『誰』の作品と考えるかは難しいですが、そういう複雑な状態を切り取り、保存することについて考えることは、ネット時代にデザインや編集に関わる者の大きなテーマだと思っています。
スマートフォンの普及により、この生産と消費のサイクルはさらに高文脈化して、それをすべて網羅してまとめることはさらに難しくなっていくでしょう。そういう時に民族学的な視点や高度な編集の力は大切になると感じています。
街で人々がぶつかりそうになりながらスマホを片手に歩き、知らないひとから『いいね!』されたり、LINEの既読を気にするように、色んな場面で僕たちの感覚がインターネットによって変化し始めています。端から見れば画面に向かって突っ立っているように見えても、画面の向こうにはたくさんの人たちがいる社会がある。これは土地土地の持つ文化ではないものの『ソーシャル』という実際の場所に依拠しない地域性なのではないかと感じています。
技術の強く依存し、複雑に繋がり合った環境の中でも私たちはやっぱり何かを作って、同時にそれを消費しながら生きています。館長とのお話のなかで、オセアニアのような島の人たちは携帯電話などの『外から来たものをすべて受け入れて迎合するということは絶対にしない』というお話を聞いて、自分とメディアの関係を客観視せず、盲目的な私たちのいまを描く意味でもみんぱくは機能していると感じました。
今回、須藤館長にお話を伺うことができて、改めて民族学や文化人類学という分野の方々の持つ広く深い知識とそれらを展示やまとめる編集の技術、そして文化を残すことへの意識の強さを感じることができました。これからも民族学的なアプローチに学び、そしてインターネットとともに歩んでいきたいと思うインタビューになりました。
取材に同行してくださったQonversation原田さん、そして、お時間を作ってくださった須藤館長に感謝します。」

インフォメーション

12月3日まで「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館 Attic Museum」展が国立民族学博物館 特別展示館にて、11月26日まで「台湾平埔族の歴史と文化」展が本館 企画展示場Aにて開催中。

もっと知りたい人は…

  • 萩原俊矢 

    萩原俊矢

    ウェブデザイナー

    1984年生まれ。ウェブデザイナー。2012年、セミトランスペアレント・デザインを経てセミ・セリフを設立。ウェブデザイン、ネットアートの分野を中心に幅広く活動し、同時にデザインと編集の集団クックトゥや、flapper3としても活動している。CBCNETエディター。IDPW正式会員として第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。

  • 須藤健一 

    須藤健一

    国立民族学博物館 館長
    文化人類学者

    新潟県佐渡市生まれ。埼玉大学教養学部卒業、75年9月に東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中退、文学博士。国立民族学博物館助手、助教授を経て、93年4月から神戸大学国際文化学部教授、同大学院国際文化学研究科教授、附属図書館長等を歴任。09年4月から国立民族学博物館館長。アジア・オセアニア地域を対象に社会人類学を専攻。主著書に『母系社会の構造』(紀伊國屋書店)、『オセアニアの人類学』(風響社)など。