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萩原俊矢

ウェブデザイナー

須藤健一

国立民族学博物館 館長
文化人類学者

今回インタビュアーを務めてくれるのは、「カンバセーションズ」のサイトデザインを手がけるcookedのメンバーであり、普段はフリーランスのWebデザイナー/プログラマーとして活動している萩原俊矢さん。単独では初めてのカンバセーションズ参加となる萩原さんが、”いま話を聞きたい人”として挙げてくれたのは、大阪・国立民族学博物館(通称:みんぱく)の館長で、文化人類学者の須藤健一さん。インターネット時代における新たなリアリティの在り方に着目する「インターネット・リアリティ研究会(ICC)」にも名を連ねる萩原さんが、独自の視点で文化人類学/民族学の核心に迫ります。

5. 文化人類学の醍醐味は何ですか?

須藤健一 

一人ひとりの人間がいて、彼らが織り成す社会や、それを支える土地や神々があって、それらがひとつのコスモスを形成している。その全体像をどのように直感で知り得るかというのが醍醐味なんです。

Q.美術の世界では、メディアアートやビデオアート、プログラムで作動するPC上の作品など、形には残らないデジタル作品を収蔵し始めていますが、今後「みんぱく」で情報自体を展示物として収集するということがあるのか興味があります。例えば、象徴的なテレビ番組やインターネット上のコンテンツを集めるということを考えたり、研究されている方もいるのですか?

須藤:そういうことについて研究している先生は、専門ではないですが何人かはいます。ただ、それらを「みんぱく」でコレクションにするということまではまだ考えていないですね。音楽のLPやCDというのはあるけれど、いまはまだそこまでです。

みんぱくゼミナール 第427回「カザフの死者儀礼―日常から展望するイスラーム」 13年12月21日 13:30~15:00 みんぱくゼミナール 第428回「熱狂エチオジャズ!!!」 14年1月18日 13:30~15:00

Q.例えば、数枚の画像をループさせたGIFアニメーションという画像形式があるのですが、アメリカ大統領選でオバマを風刺するGIFアニメーションが話題になったり、最近は「GIFる」という言葉(GIFという動詞)が流行していたりするんですね。風刺画という昔からあるものが、GIFという現代の形式でリバイバルされる状況を見ていると、インターネットからも民族学が生まれるんじゃないないかと感じるんです。また、その土地固有の建築を提唱する「ヴァナキュラー建築」という考え方になぞらえ、「ヴァナキュラーウェブ」と呼んで素人が作った各地のWebサイトを収集している人なんかもアーティストの中にはいるのですが、民族学ではそういった動きというのはないのですか?

須藤:私の知っている範囲ではないですね。やはり文化人類学の基本であるフィールドワークは、まず身体を現地に持って行って、相手と対話や議論をしながら、向こうの社会の全体性をいかに理解して表現するかということで、ある意味オールドファッションなことしかやっていないんです。ただ、若い文化人類学者には新しい人も出てきていると思うし、なぜ人は「GIFる」のかとか、インターネットにはまっていくのかという人間の活動を研究する人は今後もっと出てくると思います。

Q.僕たちは、インターネット時代におけるリアリティというものを研究をしているのですが、そこで大切になってくるのは「みんぱく」にあるような蓄積された知識や編集力、フィールドワークの力というもので、それが今後のインターネットにもつながっていく気がしているんです。そういう意味でも今日は凄く勉強になるお話が聞けました。

須藤:文化人類学では、全体性をどう捉えるかということを一番の問題にするんですね。ある社会に対して自分が持っているイメージをもとに、現地でコミュニケーションを取りながら調査をしていくなかで得られたものがひとつの全体像になっていく。でも、結局会話やコミュニケーションというのは、相手が言っていることを自分の都合の良いように聞くことで成立していて、そこには意味の多様性があります。人間というのは10人いれば10人みんな違うわけで、それをこうだと決めつけてしまうしかないところがあって、そこで働くのは直感でしかないんです。一人ひとりの人間がいて、彼らが織り成す社会や、それを支える土地や神々があって、それらがひとつのコスモスを形成している。その全体像をどのように直感で知り得るかというのが、フィールドワークの醍醐味なんです。<インタビュー終わり>

インフォメーション

12月3日まで「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館 Attic Museum」展が国立民族学博物館 特別展示館にて、11月26日まで「台湾平埔族の歴史と文化」展が本館 企画展示場Aにて開催中。

もっと知りたい人は…

  • 萩原俊矢 

    萩原俊矢

    ウェブデザイナー

    1984年生まれ。ウェブデザイナー。2012年、セミトランスペアレント・デザインを経てセミ・セリフを設立。ウェブデザイン、ネットアートの分野を中心に幅広く活動し、同時にデザインと編集の集団クックトゥや、flapper3としても活動している。CBCNETエディター。IDPW正式会員として第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。

  • 須藤健一 

    須藤健一

    国立民族学博物館 館長
    文化人類学者

    新潟県佐渡市生まれ。埼玉大学教養学部卒業、75年9月に東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中退、文学博士。国立民族学博物館助手、助教授を経て、93年4月から神戸大学国際文化学部教授、同大学院国際文化学研究科教授、附属図書館長等を歴任。09年4月から国立民族学博物館館長。アジア・オセアニア地域を対象に社会人類学を専攻。主著書に『母系社会の構造』(紀伊國屋書店)、『オセアニアの人類学』(風響社)など。