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萩原俊矢

ウェブデザイナー

須藤健一

国立民族学博物館 館長
文化人類学者

今回インタビュアーを務めてくれるのは、「カンバセーションズ」のサイトデザインを手がけるcookedのメンバーであり、普段はフリーランスのWebデザイナー/プログラマーとして活動している萩原俊矢さん。単独では初めてのカンバセーションズ参加となる萩原さんが、”いま話を聞きたい人”として挙げてくれたのは、大阪・国立民族学博物館(通称:みんぱく)の館長で、文化人類学者の須藤健一さん。インターネット時代における新たなリアリティの在り方に着目する「インターネット・リアリティ研究会(ICC)」にも名を連ねる萩原さんが、独自の視点で文化人類学/民族学の核心に迫ります。

3. 展示では何を大切にしていますか?

須藤健一 

展示を見た人たちが、想像の中でそれぞれの独創的な美を見出してくれればいい。不定形なものを通して、美の多様性というものを展示できればと考えています。

Q.僕はデザインの仕事をしていて、アートなども好きなんですが、美術館と博物館では展示の方法が決定的に違いますよね。例えば、西洋絵画はゴツイ額縁に入れられるし、現代美術はホワイトキューブでミニマルな展示が一般的です。一方で「みんぱく」にあるものは美術作品ではなく日用品で、それらを展示として成り立たせるための工夫を随所に感じました。

須藤:「みんぱく」で扱っているものには、キャンバスのように定型の形がないので、あるものをそのまま出すしかないんですよね(笑)。それらをガラスケースに入れてしまうのではなく、壊れないものはなるべく触って感じてもらうということを意識しています。先ほども話しましたが、ここにあるものは基本的に誰でも作れるものだったわけで、それはつまり、人が作り出すあらゆるものが展示品になるということです。我々が展示したそれらのものを見た人たちが、想像の中でそれぞれの独創的な美を見出してくれればいい。不定形なものを通して、美の多様性というものを展示できればと考えています。

Q.展示が凄く難しいものや、切り取ることが難しい状況というもの伝えていくための高い編集能力を感じます。展示のアプローチは研究者それぞれが考えているのですか?

須藤:基本的にはそうですね。研究者は、自分や他の人が集めてきたものを見て、ある社会の人々の生活や創造的な営みをどう表現するのかということを考えます。そのために収蔵庫にある33万点の中から何を選ぶかということなんです。そうやって選ばれたものがいま展示されている1万点なんです。例えば、仮面を展示する時には、仮面が持つ共通性を見せるのか、それとも差異を出すのかということを考えていくわけです。さらにそこにどの程度の文字情報を入れていくかなどを詰めていく。そうした考えをもとに、展示業者さんとチームを組んで具体的な形を作っていくんです。

膨大な量の映像資料を閲覧することができる「ビデオテーク」。

Q.ムービーやタッチパネルなど色んなメディアも使われていますよね。

須藤:静止画や動画などをいかに使って紹介していくのかというのは、担当者のセンスによるところが大きいですね。個人的には、あくまでもモノの展示を通して、実物や本物を見る人に五感を働かせてもらうことが大切だと思っているので、あまり動画を使いすぎるのは良くないなと思っています(笑)。どうしても動画だけ見て帰ってしまうことになりがちだし、「ビデオテーク」というコーナーに行けば関連動画は見られるわけですからね。とはいえ、みんな忙しいので、展示を見た後に映像まで見る人はそう多くないし、そうなるとなるべく展示スペースで解説を入れましょうということになる。音楽の展示などにしても、映像を出し過ぎるよりは実際に楽器を叩いてもらう方がいいと思うけど、「こんな大事なもの壊したらどうするんですか」ということになる(笑)。その辺のバランスは難しいですね。<続く>

インフォメーション

12月3日まで「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館 Attic Museum」展が国立民族学博物館 特別展示館にて、11月26日まで「台湾平埔族の歴史と文化」展が本館 企画展示場Aにて開催中。

もっと知りたい人は…

  • 萩原俊矢 

    萩原俊矢

    ウェブデザイナー

    1984年生まれ。ウェブデザイナー。2012年、セミトランスペアレント・デザインを経てセミ・セリフを設立。ウェブデザイン、ネットアートの分野を中心に幅広く活動し、同時にデザインと編集の集団クックトゥや、flapper3としても活動している。CBCNETエディター。IDPW正式会員として第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。

  • 須藤健一 

    須藤健一

    国立民族学博物館 館長
    文化人類学者

    新潟県佐渡市生まれ。埼玉大学教養学部卒業、75年9月に東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中退、文学博士。国立民族学博物館助手、助教授を経て、93年4月から神戸大学国際文化学部教授、同大学院国際文化学研究科教授、附属図書館長等を歴任。09年4月から国立民族学博物館館長。アジア・オセアニア地域を対象に社会人類学を専攻。主著書に『母系社会の構造』(紀伊國屋書店)、『オセアニアの人類学』(風響社)など。