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萩原俊矢

ウェブデザイナー

須藤健一

国立民族学博物館 館長
文化人類学者

今回インタビュアーを務めてくれるのは、「カンバセーションズ」のサイトデザインを手がけるcookedのメンバーであり、普段はフリーランスのWebデザイナー/プログラマーとして活動している萩原俊矢さん。単独では初めてのカンバセーションズ参加となる萩原さんが、”いま話を聞きたい人”として挙げてくれたのは、大阪・国立民族学博物館(通称:みんぱく)の館長で、文化人類学者の須藤健一さん。インターネット時代における新たなリアリティの在り方に着目する「インターネット・リアリティ研究会(ICC)」にも名を連ねる萩原さんが、独自の視点で文化人類学/民族学の核心に迫ります。

2. 「美」には種類があるのですか?

須藤健一 

何がアートか、何が美しいかということを決めるのは見る人なんです。仮面にしても彫像にしても、どんな民族でも作り得る美というものがあって、そこには博物館と美術館の壁はない。

Q.民族学というのは、昔のものを収集することだと思っていたのですが、改めて「みんぱく」の展示を見ると、2012年に新しく入ったものなども展示されていて、いまこの時代というのも民族学の対象になっているんだと感じました。

須藤:「みんぱく」が74年にできた時に、世界中から当時使われていたものを集めてきたんですね。その時々の生活の中で使われているものを集めるという意識が我々にはあるのですが、皮肉なことに70年代に自分たちが集めたものが現在、現地からはすでになくなっていて、現地に博物館を作るという時に、レプリカを作る資料にしたいという問い合わせがあるんです。先ほど話した島の人たちのように古いものも新しものも両方持っていればいいけど、便利なものだけを残して、古いものは捨ててしまうことが多いですよね。

「みんぱく」の展示風景。 「みんぱく」の展示風景。

Q.「みんぱく」には膨大な量の収蔵品がありますが、どのように集めているのですか?

須藤:うちにいる60人前後の研究者たちが世界各地から集めています。「みんぱく」には現在33万点の収蔵品があるのですが、開館から35年が経つので、平均すると年に1万点収集していることになります。ただ、開館当初は一気に集めましたが、現在は年に数千点程度だと思います。いま「みんぱく」の展示を大改編しているのですが、その中でこういう展示をしたいということを各地域の展示チームが検討しています。モノとして展示する時にどんなものがいいのかを考えながら、その時々で必要なものを集めています。

Q.ちなみに、同じ万博公園内には大阪日本民芸館もありますが、「みんぱく」との違いはどんなところにあるんですか?

須藤:大阪日本民芸館にあるものは、著名な作り手がつくった”お宝”なんです。明確な作家名があり、作品としての価値が評価されているものです。一方で我々は、簡単に言えば誰でも作れるようなものを集めているわけです。ただ、例えばアボリジニが描いた絵で、美術市場で高値が付けられているようなものも収集していて、これらは西洋文化の中にアボリジニが入り込み、自分の存在を示しているという動きを紹介するためのものなんですね。

「みんぱく」の展示風景。 「みんぱく」の展示風景。

Q.アート作品としてはなく、あくまでも文化人類学/民族学的な側面にフォーカスしているということですね。

須藤:現地の人たちがグローバリゼーションにどう反応し、外来のものを受け入れ、利用しているのかを示す大事な例です。これらを通して、アボリジニのアートと、ピカソの作品は同じ美なのかどうかを問いかけるわけです。「美しいもの」「良い音楽のリズム」といったものの背後には人類共通の何かがあるんじゃないかと。我々は原始的で未開なモノを持っている博物館だと言われてきましたが、来年東京の国立新美術館に700点の収蔵品を持って行って展示するんです。これまで美術館というのは西洋の著名な作品を展示する場所で、博物館は美とはおよそ遠いものを展示するというイメージが強かったと思いますが、何がアートか、何が美しいかということを決めるのは見る人なんです。私たちが持っているガラクタと言われているようなものの中には西洋や日本的な美とは比較できない根源的な美というものがあるんです。仮面にしても彫像にしても、どんな民族でも作り得る美というものがあって、そこには博物館と美術館の壁はない。国立新美術館での展示は、自分が美しいと感じるものは何なのかということを個人個人が意識できる良い機会になると思っています。<続く>

インフォメーション

12月3日まで「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館 Attic Museum」展が国立民族学博物館 特別展示館にて、11月26日まで「台湾平埔族の歴史と文化」展が本館 企画展示場Aにて開催中。

もっと知りたい人は…

  • 萩原俊矢 

    萩原俊矢

    ウェブデザイナー

    1984年生まれ。ウェブデザイナー。2012年、セミトランスペアレント・デザインを経てセミ・セリフを設立。ウェブデザイン、ネットアートの分野を中心に幅広く活動し、同時にデザインと編集の集団クックトゥや、flapper3としても活動している。CBCNETエディター。IDPW正式会員として第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。

  • 須藤健一 

    須藤健一

    国立民族学博物館 館長
    文化人類学者

    新潟県佐渡市生まれ。埼玉大学教養学部卒業、75年9月に東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程中退、文学博士。国立民族学博物館助手、助教授を経て、93年4月から神戸大学国際文化学部教授、同大学院国際文化学研究科教授、附属図書館長等を歴任。09年4月から国立民族学博物館館長。アジア・オセアニア地域を対象に社会人類学を専攻。主著書に『母系社会の構造』(紀伊國屋書店)、『オセアニアの人類学』(風響社)など。