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えぐちりか

アーティスト
アートディレクター

蜷川実花

写真家
映画監督

カンバセーションズに2回目の登場となるアーティスト/アートディレクターのえぐちりかさんが、今回インタビューを依頼したのは、フォトグラファー/映画監督として活躍を続ける蜷川実花さん。数々の著名人の写真集や自身の作品集を発表し、さらに沢尻エリカさん主演の映画『ヘルタースケルター』、AKB48のミュージックビデオ「ヘビーローテーション」など、近年では映像分野でもセンセーショナルな作品を世に送り出しています。ますます活動の幅を広げ、多忙を極めるトップクリエイターであり、一児の母でもある蜷川さんに、えぐちさんがさまざまな質問を投げかけます。
※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。3月22日発売の『QUOTATION』VOL.14の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

3. 産後の作品に変化はありましたか?

蜷川実花 

むしろ作品は過激な方向に行って、産後の方がトガっているんですよ。シンプルな話、母というだけでみんなが私に聖なるものを求めてムカつくっていう(笑)。

Q.私は子供を産んだことで表現の幅が広がった感覚があるのですが、実花さんはそういうことはありませんでしたか?

蜷川:よく「お母さんになると作品が丸くなる」と言うけど、自分としてはそうやって角が取れていくことに凄い恐怖があって。でも、息子はやっぱり可愛いし、陽だまりで一緒にお昼寝とかしていると、こんな私でも「こういう生活が一生続いてもいいかも」という思いがよぎって制作欲求が一瞬欠けたりして、それは怖かった。周りの人たちは良かれと思って「顔つきが優しくなった」とか言ってくれるんだけど、こっちからしたら「何言ってんだよ」って(笑)。だから、むしろ作品は過激な方向に行って、産後の方がトガっているんですよ。それはシンプルな話、母というだけでみんなが私に聖なるものを求めてムカつくっていう(笑)。

えぐちりか with BEAMS「KANGALOO COAT」

Q.私はどちらかというと逆で、昔から優しいものとかフワっとしたものが一切作れなくて、広告の仕事なのに常にギリギリの球ばかり投げていたんですね。それが良い時もあれば悪い時もあるみたいな感じだったんです(笑)。でも出産してからは、子どもがただ笑っているのを見ているだけでも異常に温かい気持ちになったりするじゃないですか。その時の感覚を作品にもとり入れてみようと思うようになってから、もうひとつ引き出しができたところがありました。例えば実花さんは、いま子どもを産む前のような作品を作れと言われたら作れますか?

蜷川:作ることはできると思うけど、熱くはなれない。やっぱり強制的に一度ピリオドが打たれていて、そういう意味では子どもを生むというのはやっぱり凄い体験なんですよね。以前は、鮮やかな花を撮ったり、綺麗でみんなが好きそうなものを撮ることに本気で燃えていたし、心底それが素敵だと思ってやっていたけど、いまはそれを携帯で撮るとかちょっと変えないと楽しめなくなっちゃった。もちろん仕事として求められた時はがんばるけど、個人的に作品を撮る時は、綺麗な花とかからは少し離れましたね。

『ヘルタースケルター』 ©2012 "Helter Skelter" Film Partners   Photo by Mika Ninagawa

Q.それまでとは違うアプローチができるようになったり、さらにエッジが出たり、変わり方は人それぞれだと思うけど、やっぱり子どものパワーや与える影響というのは凄いですよね。

蜷川:こんなことをこういう場で話すのは初めてだけど、実は『ヘルタースケルター』を作っている時は、とにかくザマーミロと言えるものを作ろうと思っていて(笑)。誰に対してというわけでもないんだけど、全体的に「ザマーミロ!やってやった!」って言えるものを作るぞというのが実は裏テーマで(笑)。それはなんとなく言えたのかなって。

Q.あの作品は本当に凄いと思います。しかも、あれを子育てしながら取り組んでいたことが同じママとして信じられません。こういう企画に取り組むとなると、全部振り切って「私はこうだ」って言い切れる強い意志がないと、作品に負けちゃうんじゃないかなと。

蜷川:あの時のメインテーマは逃げないことだったんですよ。現場ではいつだって逃げたかったし、一番前でモニターを見ている時も、ふとメイクさんたちみたいに、もうちょっと後ろの位置で見ていたいなと思ったり。だから毎朝、「私は逃げない!」って言って出ていましたね。実際にあの頃は付き合っている人もいなかったから逃げ道はなくて、泣き言も言えない状態だったから戦えたんだと思う。もしあの時恋人がいたら、もっと恋愛寄りの作品になっていたかもしれない。どうしても実生活と映画というのは恥ずかしいほどリンクしちゃうし、この作品は女としての自分へのコンプレックスが元になっていたりして、昔の男に言われたヒドイこととか、嫌な思い出も全部掘り起こして自分と向き合わないといけなかったので、面白かったけど相当しんどかったですね。<続く>

インフォメーション

2冊同時刊行された蜷川実花さんの最新写真集「NINAGAWA MEN 1」「NINAGAWA WOMAN 2」が好評発売中。また、無料カメラアプリ「cameran」と、きゃりーぱみゅぱみゅをモデルに撮影した写真集&ガイドブックアプリ「蜷川TOKYO MAP」が好評リリース中。
えぐちりかさんが、教材、ベビーマットや絵本など毎月届く玩具などのトータルアートディレクションを手がけた3ヶ月から1歳までのベネッセ「こどもチャレンジbaby」が2013年7月より展開予定。

もっと知りたい人は…

  • えぐちりか 

    えぐちりか

    アーティスト
    アートディレクター

    電通にてアートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして国内外で作品を発表。絵本「パンのおうさま」が小学館より発売。2011年フィギュアスケート髙橋大輔選手の衣装を担当するなど、広告、アート、プロダクト、衣装など様々な分野で活動を展開。JAGDA新人賞、ひとつぼ展グランプリ、岡本太郎現代芸術大賞優秀賞、イギリスD&AD金賞、スパイクスアジア金賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、街の本屋が選んだ絵本大賞3位ほか受賞多数。

  • 蜷川実花 

    蜷川実花

    写真家
    映画監督

    木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映像作品も多く手がける。2007年、映画『さくらん』監督。2008年、個展「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回し、合計約18万人を動員。2010年、Rizzoli N.Y.から写真集「MIKA NINAGAWA」を出版、世界各国で話題となる。監督映画『ヘルタースケルター』が2012年7月より全国公開、21億円の興行収入を記録した。