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有馬トモユキ

グラフィックデザイナー

長谷敏司

小説家

今回カンバセーションズに初登場するのは、グラフィックデザイナーとして、広告からアニメ、ゲーム、音楽関連のデザインまで幅広く活動している有馬トモユキさん。その有馬さんがインタビューするのは、『円環少女』『あなたのための物語』『BEATLESS』などの作品で知られ、今年に入り、ゲーム「メタルギアソリッド3」のノベライズ作品『メタルギア ソリッド スネークイーター』を上梓した小説家・長谷敏司です。SF小説の装丁なども数多く手がけてきた有馬さんが、長谷敏司さんにいま聞きたいこととは?

5. 新しいモチベーションって何ですか?

長谷敏司 

モチベーションというのは、現在その文化に参加している人たちが育てていかないといけない。その枝葉の伸びている方向が時代の状況と合っているのかは大切だし、何がしかのアプローチをしていく必要があると思うんです。

Q.先日、「ハヤカワSFコンテスト」の選考で残った4作品を読んだのですが、すべてとても面白くて、改めてこの分野はいいなと羨ましく感じました(笑)。

長谷:大切なことは、その業界や場が持っているモチベーションがいかに更新されていくかということだと思うんです。だいたいのものは古くなっていくし、ずっと同じ切り口が通用するということはない。だから、モチベーションというのは、いま現在その文化に参加している人たちが大切に育てていかないといけないもので、その枝葉の伸びている方向が時代の状況と合っているのかはとても大切だし、そこに対して何がしかのアプローチをしていく必要があると思うんです。いまSFを書いたら面白がってくれる人がいるのは、作家や読者、その他関わって下さっている方々によって作っていくことができたSFのモチベーションというものがあるからだと思うんです。そこにモチベーションが立ち上がることで需要が生まれ、産業として仕事が活性化し、コミュニティが作られ、循環していく。そのエコシステムの中で何をしていけるのかということが、自分の仕事を支える大きな柱のひとつになっています。

菅浩江『誰に見しょとて』装丁:有馬トモユキ  ©早川書房

Q.以前にiPhoneでFlashが使えないということがわかった時に、Web業界では思考停止になった人などがいたり、さまざまな反応がありました。でも、そこで自分たちが寄り添っていた基盤が脆弱だったことに気づき、自分がやりたいことを他の場所で活かせるんじゃないかと考えた人たちは良い方向に進んでいったような気がします。これもおそらくモチベーションが更新されたということですよね。

長谷:そう思います。Webクリエイターのモチベーションというものを分解・再編集した時に、Flashというものはあまり関係がなかったということですよね。画面の中で何かを動かしたり、編集したりすることで驚きを与えたり、Webページやネットワークの中でいかにエモーションを作って、動員を生んでいくということが、Webクリエイターが育てたモチベーションで、それがiPhoneなどの新しいプラットフォームや状況に対して還元されていったのだと思います。

Q.僕はいまデザイナーとして、広告から書籍の装丁、ゲームやアニメ関連のデザインまでをやっているのですが、一方で特定のジャンルのデザインしかやらないデザイナーというのもいます。僕個人としては、デザインというフィルターを通してできることは非常に多岐にわたると考えていて、デザイナーがアプリケーション設計からアニメの設定までを考えるような状況が当たり前になってほしいんです。長谷さんの活動や今日のお話を聞いていると、きっと小説家という仕事にも同じようなことが言えるのだろうなと感じました。

長谷:SFにはイマジネーションが求められますが、本来イマジネーションというのはメディアを問わないものであるはずですよね。何か新しいものを読みたい、イマジネーションがほしいということがよく言われますが、それは結局のところ小説特有のものではない。そうであるなら、イマジネーションが求められる場所に自ら出向いて仕事をするということが、おそらくいまらしいあり方なんじゃないかと思うんです。要は、自分が想像したものを、どの窓口に、どんな形で、いかにデザインして出していくかということなんですが、より広義にそれを考えていくと、小説だけではなく、ブックデザインから販売、プロモーションまで、作品がお客さんの手元に届くあらゆる部分にイマジネーションが求められるのかもしれない。新しいもの、面白いものはないかと聞かれた時に、いくらでも小説家自らが出て行って、ここに面白いものがあるよ、新しいイマジネーションがあるよということを自信を持って伝えられる状態にしておきたいし、そう期待してもらえる仕事をしていきたいと思っています。<インタビュー終わり>

インフォメーション

『あなたのための物語』『BEATLESS』のスピンオフ短篇ほか4篇を収録する長谷さん初の作品集『My Humanity』 がハヤカワ書房JAより2月21日刊行予定。

もっと知りたい人は…

  • 有馬トモユキ 

    有馬トモユキ

    グラフィックデザイナー

    1985年長崎生まれ。複数社を経て、日本デザインセンターにてWeb、UIの領域で従事する傍ら、TATSDESIGN名義でグラフィックデザインを中心に商業コンテンツ作品とそのプロモーションに関する活動を行う。2011年よりクリエイティブグループGEOGRAPHICディレクター。2012年より朗文堂・新宿私塾講師。

  • 長谷敏司 

    長谷敏司

    小説家

    1974年大阪生まれ。関西大学卒業。2001年、第六回角川スニーカー大賞金賞受賞作『戦略拠点32098 楽園』でデビュー。『あなたのための物語』『BEATLESS』が、第30回、第32回SF大賞最終候補となる。ほか『円環少女』シリーズ(全13巻)、『メタルギアソリッド スネークイーター』他の著作がある。