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有馬トモユキ

グラフィックデザイナー

長谷敏司

小説家

今回カンバセーションズに初登場するのは、グラフィックデザイナーとして、広告からアニメ、ゲーム、音楽関連のデザインまで幅広く活動している有馬トモユキさん。その有馬さんがインタビューするのは、『円環少女』『あなたのための物語』『BEATLESS』などの作品で知られ、今年に入り、ゲーム「メタルギアソリッド3」のノベライズ作品『メタルギア ソリッド スネークイーター』を上梓した小説家・長谷敏司です。SF小説の装丁なども数多く手がけてきた有馬さんが、長谷敏司さんにいま聞きたいこととは?

4. SF業界の現状はどうですか?

長谷敏司 

いま何がしか自分が新しい、面白いと思っているものを出した時に、読み手が受け入れてくれたり、誰かがマネタイズしてくれるという信頼のようなものが、この業界にはあるのかもしれないと。

Q.長谷さんの作品には新しい人間の提案というものが描かれていて、そこにハッとさせられたり、勇気づけられる人も多いと思います。そうした提案性というのは、エンターテインメント作品においても大事な部分だと感じます。

長谷:もちろんSFにも売れる、売れないという話はありますが、それとはまた別の問題として、世界はどうあるか? 人間はこうであるのか? あるいは、そうした大きなものが実はこうなのではないか? といったビジョンの提案がいかにできるかというのがあると思っています。科学や技術は未来に向かって進んでいくものなので、昔はわからなかったことが現在ではわかっていたり、現実感がなかったものに現実味が帯びてきたりするわけですが、あらゆるものが更新されていく状況下で何を提案できるのかというのは自分の仕事における大きな部分です。「本当はたぶんこうなんじゃないか?」と自分の疑問を素直に突き詰めていきながら、いかにして受け手と関わりを持っていけるかが大切ですし、様々な形で提案をしていくものがある限りは、SFというジャンルは生き残っていくんじゃないかなと思っています。

Q.長谷さんがSFに対して興味を持っている人に何か作品を勧めるとしたら、どんなものを挙げますか?

長谷:いまの日本の若い読者に勧めるなら間違いなく小川一水さんですね。SFの必読書となると、いまだに古い作品が出てきてしまうのはしかたのないところでもありますが、自分たちが若かった時代といまの時代の読者というのは、おそらく感性が少しずつ違うと思うんです。とはいえ、僕らが中高生の時に読んできた作品を、いまの読者がどう読むのかというのは想像するのが精密にできるようでできない。そうなると現役の作家を読んでほしいということになるわけですが、例えば少年漫画の世界などを見てもわかるように、どんなジャンルにも本道を進んでくれている人の存在というものがあるんです。そのジャンルにおけるメインストリームとしての面白い部分を支えてくれる人というのがいて、いまおそらく日本のSFの王道として、新しいところを進んでいるのが小川さんだと思っています。

宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』 装丁:有馬トモユキ  ©早川書房

Q.たしかに小川一水さんの作品には、SFのあらゆる要素が入っていますね。そういう部分を担ってくれている人がいるからこそジャンプできるということもありますよね。

長谷:おそらく当事者たちにはそういう意識はないと思いますが、メインストリームで良い仕事をしてくれている存在がいてくれるジャンルは幸せだと思います。観客のみなさんからジャンルに期待できると思ってもらう時、多分SFなら宇宙のような王道の部分に期待を支えてもらっている部分は大きい。ニッチは、誰かがメインストリームで信頼を築いてくれないと先細る。いま何がしか自分が新しい、面白いと思っているものを出した時に、読み手が受け入れてくれたり、誰かがマネタイズしてくれるという信頼のようなものが、この業界にはあるのかもしれないと。そういうマッチングがうまくできていないと、業界は硬直していってしまうんじゃないかと思います。<続く>

インフォメーション

『あなたのための物語』『BEATLESS』のスピンオフ短篇ほか4篇を収録する長谷さん初の作品集『My Humanity』 がハヤカワ書房JAより2月21日刊行予定。

もっと知りたい人は…

  • 有馬トモユキ 

    有馬トモユキ

    グラフィックデザイナー

    1985年長崎生まれ。複数社を経て、日本デザインセンターにてWeb、UIの領域で従事する傍ら、TATSDESIGN名義でグラフィックデザインを中心に商業コンテンツ作品とそのプロモーションに関する活動を行う。2011年よりクリエイティブグループGEOGRAPHICディレクター。2012年より朗文堂・新宿私塾講師。

  • 長谷敏司 

    長谷敏司

    小説家

    1974年大阪生まれ。関西大学卒業。2001年、第六回角川スニーカー大賞金賞受賞作『戦略拠点32098 楽園』でデビュー。『あなたのための物語』『BEATLESS』が、第30回、第32回SF大賞最終候補となる。ほか『円環少女』シリーズ(全13巻)、『メタルギアソリッド スネークイーター』他の著作がある。