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有馬トモユキ

グラフィックデザイナー

長谷敏司

小説家

今回カンバセーションズに初登場するのは、グラフィックデザイナーとして、広告からアニメ、ゲーム、音楽関連のデザインまで幅広く活動している有馬トモユキさん。その有馬さんがインタビューするのは、『円環少女』『あなたのための物語』『BEATLESS』などの作品で知られ、今年に入り、ゲーム「メタルギアソリッド3」のノベライズ作品『メタルギア ソリッド スネークイーター』を上梓した小説家・長谷敏司です。SF小説の装丁なども数多く手がけてきた有馬さんが、長谷敏司さんにいま聞きたいこととは?

3. 小説とプログラミングは似ていますか?

長谷敏司 

プログラマー時代の習慣が残っている気がします。ちゃんと歯車が噛み合っているかを検証しながら、トライアンドエラーを繰り返して修正をかけていくようなところがあります。

Q.もともとはプログラマーの仕事をされていたそうですが、長谷さんの文章自体もプログラムではないですが、書いた通りに正確に稼働している感じがするんです。「こいつは死ぬだろう」と思ったヤツは確実に死んだりしますし(笑)。

長谷:そう言われてみると、たしかにプログラマー時代の習慣が残っている気がします。自分のものの書き方、デザインの仕方として、ちゃんと歯車が噛み合っているかどうかを検証しながら、何度もトライアンドエラーを繰り返して修正をかけていくようなところがあります。何度も寄ったり引いたりしながら検証し、ミクロ/マクロどちらのスケールで見ても面白いものにしたいという意識があるんです。作業工程としては、自分が書いたものをゲラでチェックして、そこに赤字を入れていくことで、最終的に書籍の形になるわけですが、このゲラのチェックが、プログラムの納品前のテストみたいに思えることがあります。テストをしてしっかり動くものじゃないと出してはいけない気がしてしまうんです。

有馬啓太郎さん、長谷敏司さんらが携わった同人誌『玻璃の空』では、有馬さんがデザインを担当した。 横山三英『ゴースト・オブ・ユートピア』 装丁:有馬トモユキ  ©早川書房

Q.長谷さんの文章には周りくどいところがなく、非常にわかりやすいんですよね。僕もデザインをする際に、飾り文字やドロップシャドウなどの処理を極力かけないでシンプルに表現することが多いのですが、長谷さんはより強固にそれを徹底しながらディテールを成形しているイメージがあります。

長谷:検証や修正を重ねながら、行間を埋めていくことでしか自分の作品に確信を持てないだけなんです。そういう意味では、本来の小説の書き方がまだできていないのだと思いますし、余白がないとか、作家の文章芸としては直截過ぎるなどと怒られることもあります(笑)。普通なら書き得ないものを、文章を使ってとらえるということが本来の作家の仕事だろうし、描線を隠すことによって描線を意識させることこそがきっと作家の本道なんです。そういう意味で僕はまだいっぱいいっぱいで書いているところがあって、自分の文章が完成するのは、順当にいけば50代半ばくらいなのかなと考えているところがありますね。

Q.長谷さんの作品には一貫して、未来に対する提案と人間の生死というテーマが同時に入っている気がしています。人の”生き死に”をここまで真っ向に書きながら、しかもそれをエンターテインメントとしして成立させている方は珍しいですよね。

長谷:それは僕自身が病気をしたことをきっかけに作家を始めたということと関係しているのだと思います。何年後かはわかりませんが、人間というのは当然みんな死ぬわけで、僕たちが影響を受けた小説家やデザイナーの多くもすでに死んでいるわけですよね。でも、自分たちと同じようにある時代に暮らしを営んだ人たちが、世界にどうアプローチし、世の中に対してどういうものを残していったのかということは、いまでもその痕跡から伺い知ることができる。当然自分も何かしらの痕跡を残して消えていくわけですが、有限の仕事量の中で、いかに自分なりに面白いと思えるもの、人に読んでもらえるものを出していけるかということを考えながら、日々成功したり、失敗したりしているんです。<続く>

インフォメーション

『あなたのための物語』『BEATLESS』のスピンオフ短篇ほか4篇を収録する長谷さん初の作品集『My Humanity』 がハヤカワ書房JAより2月21日刊行予定。

もっと知りたい人は…

  • 有馬トモユキ 

    有馬トモユキ

    グラフィックデザイナー

    1985年長崎生まれ。複数社を経て、日本デザインセンターにてWeb、UIの領域で従事する傍ら、TATSDESIGN名義でグラフィックデザインを中心に商業コンテンツ作品とそのプロモーションに関する活動を行う。2011年よりクリエイティブグループGEOGRAPHICディレクター。2012年より朗文堂・新宿私塾講師。

  • 長谷敏司 

    長谷敏司

    小説家

    1974年大阪生まれ。関西大学卒業。2001年、第六回角川スニーカー大賞金賞受賞作『戦略拠点32098 楽園』でデビュー。『あなたのための物語』『BEATLESS』が、第30回、第32回SF大賞最終候補となる。ほか『円環少女』シリーズ(全13巻)、『メタルギアソリッド スネークイーター』他の著作がある。